2021.03.01

それぞれの世代が空間をシェアする住まい

各々の居場所を確保できる2階のリビング空間

集う空間とワークスペースで
快適な日常生活を共有

 
「こんな家に住めたらいいなと思って…」と建て主の妹であるOさんが心を奪われたのはMLWELCOME vol.5掲載のS邸。室内外のレンガの壁とL字形のルーフバルコニーが印象的なデザインと間取りを参考にした。「高齢の父が快適に過ごせるよう、ルーフバルコニーを望める間取りにしました」とOさん。80代のお父さまの寝室をLDKに隣接させ、家族と自然に交流できる間取りも安心だ。
O邸はさまざまな世代がそれぞれの時間帯で生活する大人のシェアハウス。建て主であるOさんのお兄さまと、その息子さん夫婦、Oさんと息子、そしてお父さまがこの一棟に住む。寝室は極力コンパクトにまとめ、吹き抜けがあるLDKとルーフバルコニーを一体化し、リビングを拡張。また地下にはオフィス兼プライベートシアターを配した。「海外とやり取りすることが多い職種なので、仕事をする時間帯も異なり、食事をとるタイミングも違うんです」とOさん。そのため2階と3階の階段回りにワーキングスペースを設け、それぞれが作業に集中できる場に。キッチン&ダイニングは機能を最優先し、モダンな割烹のようなデザインを選んだ。パントリーは浴室に通じる動線上に収め、空間を有効に使っている。
O邸は家族で集う場を贅沢に、個々に使う個室やキッチン&ダイニングをシンプルに集約し、メリハリをつけた好例。ダイナミックな吹き抜けの大空間が家の中心として生きている。
 

凜とした美しさを持つ
センターウォールが家の軸

 
この住まいにおいてもう一つの要となっているのが、階段回りの壁面。IDA HOMESの手掛ける邸宅のアイコンともいえるタイル製のセンターウォールだ。玄関を開けるとタイルを重ねた重厚な壁、スチール階段が上下に伸び、視覚的な広がりが建築として美しい。「この玄関は何も飾らなくても、壁と階段そのものがオブジェとして存在感を放つ造りにしました。駅からも近い住宅密集地なので、採光と風通しをもたらす吹き抜けを高い塀で囲み、プライバシーを守っています」とIDA一級建築士事務所の髙木 法さんは語る。その結果、開放感のあるリビングが実現。LDKを囲むような31.79㎡のルーフバルコニーがアウトドアリビングの役割も果たす。外部にもセンターウォールで使用したタイルと同じタイルを積み上げた壁を設け、統一感と奥行きをもたらした。
このアウトドアリビングによって視線のヌケが生まれ、開放感をもたらしている。大人6人が住む邸宅だけに広い駐車場を確保しているが、1階のほとんどを占めるビルトインガレージや大きな吹き抜けは、SE構法だからこそ可能なプランだ。
 

家族構成の変化に合わせて
空間の役割も徐々にシフト

 
多世帯が自由かつ、ゆるやかに交わる新しいライフスタイルの家──。その生活が近い未来、今までと違った生活へとシフトしそうだという。
「来春、兄の息子夫婦の子供が誕生すると4世代がシェアする生活が始まります」とOさん。ルーフバルコニーも数年先には、子供が遊ぶ庭となって活用されるはず。家族全員で子育てをする場としてもO邸は最適。にぎやかな暮らしとなっても、家族それぞれの居場所があり、仕事や休息に、自由に過ごせる大空間が確保されている。大人のシェアハウスは、あらゆる世代が快適に空間を共有する家として進化していく。
 

取材・文/間庭典子

O邸

設計施工 IDA HOMES 所在地 大阪府東大阪市
家族構成 本人+息子夫婦、父、妹+息子 敷地面積 164.43㎡
延床面積 338.67㎡ 構法 木造SE構法+一部鉄筋コンクリート造

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