2019.04.15

インダストリアルなスタイルで作る吹き抜けのある住宅

インダストリアルなスタイルで作る吹き抜けのある住宅

クールな空間を可能にする秀逸な収納計画

「コンセプトは『男前な家』です」と語るのは、住み手のHさん。ダークなウォールナットの木の床に黒やグレーを利かせた辛口なカラーリング、機能的で無駄のないインダストリアル系のインテリア、そして勾配屋根に吹き抜けが印象的なH邸。配線はすべてカバーし、エアコンも目立たないように工夫して設置している。
余計なものは目立たないようにし、収まるべきところに収めるという手法は、煩雑になりがちなキッチンのエリアでも成功している。マットな黒のタイルを敷き、同じく黒いタイルを壁面の一部に使用。インダストリアルなデザインの照明もクールな印象だ。こうして見た目にも使い勝手もよい“男前”なキッチンが完成した。
「炊飯器やトースターなどの調理器具も、壁面のキャビネットに収まるよう、すべてサイズを測りました」と奥さま。何を置くか、どう使うかを事前にチェックすることで、過不足のない完璧な収納計画が可能になった。キッチン以外にも、窓の前に置いたベンチの下をすべて収納にするなど、家全体の収納スペースを充実させ、キャビネットやシェルフなどの置き家具はほとんど不要に。「新しく購入した家具といえば、床のウォールナット材と素材を合わせたダイニングテーブルとソファぐらい」とHさん。パントリーや奥の廊下の書棚など隠れた収納も多く、テレビもサイズに合わせて壁をくりぬいて収め、壁面の凹凸をなくした。緻密な計算を重ね、生活感を表に出さないすっきりとした空間となった。
 

大迫力の勾配天井と宙に浮くような階段

この家全体を包み込んでいるのが大きな勾配の屋根だ。5mの天井高を確保するために、構造部分が見えるところまでLDKの軒下を上げた。片持ちの壁面階段にすることで、空間を軽やかにし、より自由に大きく使えるようにした。
LDKに面した大開口の外には見事な借景が広がる。住宅地ではあるが近隣の山々が見え、角度によっては緑だけが目に入るように設計されている。窓からの風景をいつでも楽しめるよう、開口側にはカフェのようなスタディコーナーを置き、長いベンチを設置。
LDKの空間を大きくとった分、各個室はコンパクトにして、2階は子供室、Hさんの個室などを配した。LDKの奥の和室は寝室を兼ねている。

2棟を連結し互いを見守るL字型の二世帯住宅

H邸の最大の特徴が、2棟を連結させたL字型二世帯住宅であること。別棟にはご両親とご主人の弟さんが住む。玄関は対極に位置するが、廊下にある扉でつながっており、子供たちも自由に行き来できる。お互いの気配がわかるようなレイアウトでありつつ、プライバシーを守れるプランだ。
製造業に携わるHさんは夜勤も多く、ライフワークとして空手の指導員をしており、休日も多忙。ご自身が不在の時でも家族がお互いに見守れるようにとL字型の間取りを選択した。
「ご両親の世帯の床はナチュラルなカバザクラ材。ウォールナットの子世帯とは空間の印象でも区別できるようにしました」と設計を担当したkotoriの原 茂貴さんは解説。親世帯はコンパクトな平屋造りにして暮らしやすさも重視した。
休日の午後は家族全員でテラスに出て、バーベキューを楽しむ。連結した2棟は、家族がいい距離感で暮らせる新しい二世帯住宅の形となった。

取材・文/間庭典子

H邸

設計施工 kotori 所在地 愛知県岡崎市
家族構成 夫婦+子供2人+両親+弟 延床面積 184.31㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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