陽の光を受け、空につながる開放的な住空間








陽の光を受け、空につながる開放的な住空間
ブラインドもカーテンもつけない外に開かれたLDK空間
「家づくりで大切なのは実際に体感すること」と考えている、M-STYLE HOUSEの代表取締役で設計士の酒井良子さん。そのため、お客さまにはまず、M-STYLE HOUSEが手がけた住宅の見学会に足を運んでもらっているという。実際の住宅に身を置くことで、ご自身の理想の空間にはどれくらいの高さや広さが必要なのかリアルに想像できるからだ。さらにその見学会では、住んでいる方に家づくりの体験談や失敗エピソード、現在の住み心地などを包み隠さずに語ってもらう。「お客さまにも住み手の方にも本音で話してほしいので、その際はスタッフ全員が席を外すこともあります。光熱費の月平均額など具体的なデータも聞くことができますよ」。
今回取材したIさんも、体感することで理想の家を具体的にイメージすることができた一人。「見学会で訪れた家ののびのびとした吹き抜けにひかれました。空につながるような高く大きな開口部と、広いLDKを一番の要望にしました」とIさん。これに対して酒井さんは建物南側を全面開口部にするプランを考え、さらに、その窓にブラインドをつけないことを提案した。「SE構法なら南側を全面開口にすることが可能です。また、Iさんの敷地は親族が経営する会社と同じ敷地内にあって他人の目には触れにくく、隠すために閉ざす必要はありませんでした」。そうしてできあがったLDKは、室内にいてもテラスで過ごしているような気分になる開放感あふれる空間。さらに、玄関ホールとリビングの間を壁で仕切らず、ウッドパネルをついたてのように自立させて、両スペースの天井のつながりが見えるようにした。「天井がひと続きになるだけで、LDKが格段に広く感じられるようになります」と酒井さんは説明する。
子育ての今と未来を快適にするゆとりある間取り
昨年、第二子が誕生し、家族が4人に増えた。そのため玄関ホールは広めに取り、子供たちの自転車やバギーなども置けるように。また、階段の下につくったフリースペースは子供たちの格好の遊び場になっている。「キッチンに立ちながら遊んでいる様子を見守れるので、ベビーベッドを置いて昼寝をさせることもあります。将来は宿題ができるようなコーナーにしたいですね」と奥さま。また、子供室も広めにして、将来、壁で区切ってそれぞれの個室として使えるよう、左右対称の空間にした。壁を立てたり外したりなど、改装がしやすいSE構法の利点を活用する予定だ。
寒暖差のある土地ではより重要になるパッシブデザイン
そしてI 邸には、自然のエネルギーを味方に快適な環境をつくり、室内をより過ごしやすくするパッシブデザインが取り入れられている。「家族の健康を守るためにも、室内は快適でないといけません。長野は、夏は涼しく快適ですが、高地なので冬は厳しいんです。太陽の熱を最大限に生かし、冬でも心地いい設計にしています」と酒井さん。夏の直射日光を遮断し、冬は陽光が差し込むように軒の深さや角度を計算した。「冬はキッチンのあたりまで光が入ります。パッシブデザインの効果で大空間でも冷暖房費などの光熱費はかなり抑えられています」。
陽光は2階の各個室にも差し込み、日中は照明をつける必要がほとんどない。大きな開口部から入る光と風――年間を通して家族みんなが快適に過ごせる、開放的な陽だまりの家が誕生した。
取材・文 間庭 典子
I邸
設計 | M-STYLE HOUSE | 施工 | M-STYLE HOUSE |
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所在地 | 長野県埴科郡 | 家族構成 | 夫婦+子供2人 |
延床面積 | 124.42㎡ | 構造・構法 | SE構法 |