2020.07.13

子供の遊び場&バースペース 日常を彩る2つのリビング

一日中光が入るように計算された和モダンの家

各フロアに配したリビングが
生活を豊かに楽しく彩る

 
京都の落ち着いた住宅街に立つN邸の特徴は、1階と2階それぞれにあるリビング。あえて1階ののLDKにはソファを置かず、気分によって居場所を変え、定位置をつくらない暮らし方を選んだ。「開口部が大きく、明るく開放感のある家が理想でした」と住み手のNさん。家の中心にリビングを置き、その上に大きな吹き抜けを設けた。「1階のリビングは、まだ子供が幼いので、家事をしながら子供の遊ぶ様子を見守ることができるプレイグランドにしました」と奥さま。一段低いフロアにリビングを作り、ベンチを収納にするなど、機能性も追求した。玄関、階段側も壁で完全に遮断せず、テレビボードを兼ねたキャビネットや腰壁で緩やかに仕切っている。
2階のリビングは、大人のためのくつろぎの場。高台にあるN邸の中でも一番、眺めがいい場所だ。「夜景が見事だったので、ワインセラーも備えてホームバーにしたんです。設計時はまだ子供がいなかったので」と奥さまは笑う。今はワインを楽しむ余裕がないが、時間を見つけて夜や週末をここでゆっくりと過ごす。「設計の段階でハンモックを付けたいと依頼し、強度が確かな構造部分に金具を取り付けてもらいました」とNさん。晴れた日は京都市内まで見渡せる。
子供がのびのびと遊べる場と大人の時間を過ごせる場。ぞれぞれのフロアのリビングが、日々の生活をより豊かなものにしてくれる。
 

大きな吹き抜けを通じて
ひとつの空間で過ごせる間取り

 
大きな吹き抜けのある1階のLDKと同様、2階も広がりが感じられる開放的な空間だ。山栄ホームのモデルハウスで見た、つり橋のような廊下をヒントにし、2階フロアが吹き抜けに浮かぶような構造にした。寝室に設けた小窓は、1階のリビングとつながっている。「家のどこで過ごしても、お互いの気配を感じられる間取りです」と奥さま。2階のリビングは将来、お子さんが成長したら子供室としてリフォームすることも想定している。小窓で吹き抜けとつながれば、1階にいる家族と交流でき、個室にいても孤立する心配がない。
玄関の扉を全開すると家の奥まで見通せる仕掛けに。「限られた空間をより広く見せる視覚効果を狙っています」と山栄ホームの竹ノ内昭範さん。視界を柱に遮られない、ヌケの良い空間だ。「間取りは敷地の条件に合わせなければならない、と思われがちですが、SE構法なら理想の暮らし方を優先できます。もっと間取りは自由であることを伝えていきたいですね」と竹ノ内さんは語る。
 

日本らしいモチーフを生かして
さりげない和モダンが完成

 
N邸では日本に古くからある職人技が随所にちりばめられ、職人との連携で定評がある山栄ホームならではの提案となった。例えば、造作の建具や格子の意匠、和室の名栗加工のフローリングなど。名栗加工は通常は縁側や柱、床の間などに多用される仕上げだが、床全面に敷くことでモダンな印象を生み出した。そのぬくもりやクラフト感がさりげなく暮らしになじむ。和室には円窓も設けられ、向かいの家の松がちょうどよい借景に。この円窓は外観でも個性を放ち、正方形の花ブロックとユニークな対比を描いている。
各所に配された和のモチーフが小気味良いデザインとなり、床に座って過ごすライフスタイルを支えている。京都の景観になじむN邸は、新しい時代にふさわしい和モダンの家だ。
 

取材・文/間庭典子

N邸

設計施工 山栄ホーム 所在地 京都府
家族構成 夫婦+子供1人 敷地面積 216.82㎡
延床面積 107.65㎡ 構法 木造SE構法

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