2021.04.26

京の町並みになじむモダンな邸宅

シャープな黒のスチールが全体を引き締める

L字形の敷地を生かす
東西、南北に抜けた間取り

 
N邸のロケーションは京都市内の東山区。窓から京都タワーが望め、すぐ近くには幹線道路も通っている便利な立地だ。神社仏閣にも囲まれ、風情ある街並みも残されている。そのため奇抜すぎたり、機能だけを優先した邸宅はこの地にはそぐわない。また日本庭園のある実家と隣接しており、風景になじむ外観は絶対条件であった。「この邸宅のコンセプトは『City Cave』です。空に抜ける圧倒的な開放感と、外部から守られている安心感と静寂、それが同時に得られる都会の洞窟をイメージしました」と設計を担当したビルド・ワークスの河嶋一志さんは振り返る。
Nさんの要望は、車を3台収納できるビルトインガレージとカーテン不要なオープンなリビング。そこでL字形の敷地を生かし、東西に寝室や水回りなど、生活に必要な機能を収め、南北の伸びた側にガレージとリビングを大胆に配した。南側を車からの動線とし、北側の路地からとの両方から玄関にアクセスできるプランである。「道路からの目線に対しては遮断し、室内からは外の様子が程よく見えるように、横ルーバーの間隔を計算しています」と河嶋さん。室内と外部の間をルーフバルコニーでつなぐことにより、リビングをより伸びやかに、外部からはより気配を消す視覚効果を狙った。また、1階の和室や3階の寝室など、東西に続く棟の南側はご実家の日本庭園に面しているため、借景も楽しめる。
 

シンプルモダンなインテリアは
階段や収納を造作し、カスタムメイド

 
格子が印象的な和モダンな外観に対し、内部は硬質で都会的なデザインを目指した。白い壁と黒のスチールを基調に、LDKの床はセラミックタイルを採用。天井や壁面収納にウォールナット材を選び、シャープさのなかに木のぬくもりをプラスした。グレーのタイル同様、光触媒の塗装壁も汚れにくく、メンテナンスが楽だという。大きな吹き抜けのあるリビングなので、シーリングファンで常に新鮮な空気が回るように心掛けるなど、機能面でも快適さを追求している。
南側の大開口は窓枠が目立ちすぎぬよう、壁を少し内側に出す、天井の位置を調節するなど1㎜単位で調整して、ノイズのない空間に仕上げた。また空調を上部の収納に収めて格子のルーバーでカバー、キャットウォークの高さを調整し、リビング全体を1本のラインで取り囲むように見せるなど、必要な機能を違和感なく見せる工夫も施されている。リビングの階段はプレートを壁に埋め込むことで強度を保ちつつ、シンプルを極めたデザインを実現。このような端正で美しい空間をかなえるためには、確かな設計施工技術が不可欠。ビルド・ワークスは自社施工であるがゆえに、細やかなカスタムオーダーや微調整も可能となる。
 

クオリティの高いCG資料で
お互いの理想イメージを共有

 
また、ビルド・ワークスでは写真と錯覚してしまうほど写実的なCGを打ち合わせのたびに制作している。出来上がりのイメージをより確実に共有しながら、具体的な素材選び、サイズ調整を進めるためだという。室内に置く家具の配置を検討しつつ作画するため、実際に暮らしたときの眺めとほぼ同じとなる。窓から見える風景なども事前に把握することができるため、設計者が思い描いたイメージをブレなく皆で共有できる。住み手に寄り添う工務店ならではのきめ細やかな対応によって、満足度の高い邸宅が生まれるのだ。
 

取材・文/間庭典子

N邸

設計施工 ビルド・ワークス 所在地 京都府京都市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 231.95㎡
延床面積 338.55㎡ 構法 木造SE構法

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