2020.01.06

船上のくつろぎを再現した絶景を楽しむ熱海の別荘

アロハスピリッツを感じる風通しのいいダイニング

3階に石風呂を配した
相模湾の絶景を望むヴィラ

 
水平線まで見渡せる高台からの絶景を誇るH邸は、週末をゆったり過ごすための熱海の別荘。1400m²以上もある広大な敷地にはゴルフの練習もできる芝生が広がり、アプローチには広い車寄せがある。アールが印象的なこの3階建ての邸宅が木造建築だと知ったら、誰もが驚くことだろう。中でも眺望がすばらしい最上階にある温泉風呂は画期的だ。
「3階建てですし、重量のある石風呂やこれだけの大空間を考えていたので、鉄筋造や鉄骨造にする案も出ましたが、癒やしの別荘にはやはり木造の持つ柔らかさやしなやかさが必要。そこで強度に優れた重量木骨のSE構法を提案しました」と梅原建設の梅原智之さんは語る。SE構法は構造躯体に強度が一定の集成材の柱を使用するため、一棟一棟の構造計算が可能。また、柱と梁を特別な金物を使用して接合するので、断面欠損が少なく耐震性に優れている。
「構造的には1階に広めのガレージや車寄せがあ り、3階に見晴らしの良い石造りの温泉風呂があるのがポイントです」と梅原さん。構造計算により、強度はもちろん、必要最小限の耐力壁や柱だけで大空間をつくることがかない、在来の木造ではありえなかった圧巻のLDKが完成。SE構法を最大限に生かし、木造住宅の不可能を可能にした。
 

大海原へ繰り出すような
LDKのデッキと大開口

 
「眺望が開けたリビングの窓際にあるのは、実際に船で使われていた真鍮の丸窓と舵です」と海を愛する住み手のHさん。豪華クルーズ船で航海するような、ゆったりとした気分が味わえるスタイリングだ。週末だけの休息でも、海外のリゾートでリフレッシュするような非日常な空間がコンセプトだった。天井高や開口を最大限にするなど、伸び伸びとしたスケールにし、デッキやサンルームなど、内部であり外部でもある居場所を多く設けている。ガラス屋根と丸い壁に覆われたサンルームには、シンクやバーベキューグリルを設置。ゲストが集まるときに活用できる第二のリビングとなっているという。「サンルームは、もともと広いルーフバルコニーだった場所をより有効に活用するため、竣工後に改築したんです」とHさん。シンク周りには原色のタイルをモザイク状に敷き、変化をつけた。天窓からも柔らかな光が注ぎ、サンルームは室内と外をつなぐ橋渡しのような役目を果たしている。
 

タイルやロートアイアンの
華やかな意匠で彩った空間

 
マテリアルの使い方が面白いのもH邸の魅力で、サンルームだけでなく、キッチンにもインパクトのある赤いモザイクタイルを使用。鮮やかで複雑な色合いのタイルが、木のぬくもりあふれるナチュラルな空間を、住み手の個性が際立つインテリアへと進化させた。ダイニングや浴室にも ステンドグラスを取り入れ、より表情豊かな空間に仕上げている。
また、門や玄関扉だけでなく、室内にロートアイアンを取り入れたのもH邸の特徴。錬鉄の力強く美しいラインが空間をより印象的なものにし、邸宅の中央に位置するらせん階段はこの家の顔の一つに。壁には採光に優れつつ外部からの視界を遮ってくれるガラスブロックを配し、ニッチを設けてギャラリースペースにした。
熱海の温暖な気候に身をゆだね、心身共にくつろげる理想の別荘となった。
 

取材・文/間庭典子

H邸

設計施工 梅原建設 所在地 静岡県熱海市
敷地面積 1427.15m² 延床面積 403.36m²
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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