2021.02.15

趣味の空間へと続くビンテージカーが主役の家

生活・趣味・仕事──空間や動線を完全に分けるという選択

趣味空間と生活空間を分けた
快適な動線のダブルエントランス

 
「この家を建てたのはこの車のためなんですよ」とKさん。K邸はクラシックカーやビンテージのコレクションが主役の住まい。生活空間と趣味の空間を完全に分割。ガレージ側のエントランスは、2階のホビールームへと続く。ビンテージウエアやスニーカー、雑貨などが並ぶ空間はショールームのようだ。コレクターアイテムも多いため、温度や湿度など保存状態には気を使っている。そのため、結露しやすい打ち放しのコンクリートの壁ではなく、あえてだまし絵のようなビニールクロスにした。メンテナンスしやすく、コストを抑えられるメリットもある。天井は木目調、トイレにはデニム地に見えるクロスを張るなど、各所に遊び心をプラスした。広さに余裕があるガレージで、Kさんは愛車のメンテナンスや、外の芝生を眺めて過ごす。ここでは汚れも気にすることなく、古い看板なども自由に貼れるコルク材をそのままむき出しに。「ゆったりとしたビルトインガレージが条件だったので、木造でありながら十分な広さを確保できるSE構法を提案しました」とアムキットホーム/東産業の伊藤貴哉さん。
対する正面のエントランスは生活空間への動線。LDKと寝室や浴室などはすべて奥さまがコーディネートした。キッチンは白い壁と無垢材を基調として、白のタイルでクリーンに。ラフでメンズライクな2階のホビールームとは全く違う雰囲気だが、それぞれの動線が完全に別になっているので気にならない。「生活空間と趣味空間、仕事場などを分断することで、気持ちも切り替えられます。今後はこういった多機能な住まいが増えるかもしれませんね」と伊藤さんは予測する。
 

床材やドアノブ、スイッチなど
細部にこだわりカスタマイズ

 
ダブルエントランスで2つの異なる雰囲気の空間を区切るという大きなコンセプトが固まった後は、細かな内装を詰めた。「この段階に手間暇をかけ、楽しんでいただく。例えばスイッチや軒の天材に至るまで選択できる箇所はすべてご自身で選んでいただきます」と伊藤さん。可能な限り実物を取り寄せて、色みや風合い、質感などをチェックしてもらい、ショールームには必ず同行しているという。「そのため打ち合わせの回数や時間も増えるのですが、満足度も高まるはずです」との言葉どおりK邸でも細かなこだわりが実現した。
 

「1000の質問」を重ね
100年住み続けたくなる一軒を

 
アムキットホームは水処理施設や給排水設備の設計施工、維持管理を主業務とする東産業の住宅部門。建てることだけでなく、建てた後の維持管理も得意とする。「『100年後も安心して快適に暮らせる住まいづくり』が私たちの理念です」と住宅アドバイザーとしてきめ細やかなサポートを心掛けている伊藤さん。躯体性能は100年を超えても強度を保てるものを、各素材も耐久性を第一に提案している。また持続的にストレスなく暮らせる環境も重視。その土地の気象条件、騒音や近隣からの視線などの周辺環境、生活動線や住み手のライフスタイルなど、あらゆる条件を考慮してストレスフリーな住まいを目指す。
そのためには、お互い時間をかけて聞き込みをするのがモットー。通称『1000の質問』と呼ばれる徹底的なヒアリングや、それに並行した敷地や法的規制の調査や日照条件のシミュレーションも実施。100年住み続けたくなる一軒のために時間を重ねる。
 

取材・文/間庭典子

K邸

設計施工 アムキットホーム/東産業 所在地 三重県四日市市
家族構成 夫婦 敷地面積 447.99㎡
延床面積 190.87㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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