2022.01.11

ゆるやかなスキップフロアでつながる端正な住宅

包容感とヌケ── 相反する要素が共存する居場所

落ち着きと洗練を手に入れた
柔らかな光を感じる和モダンな家

研ぎ澄まされたシンプルシックなデザインなのに、なぜか心安らぐ和モダンな空間──。それがF邸の魅力だ。ダイニングに接する和室や直線だけで構成された端正な玄関ホールなど、シャープだが木の素材に包まれ、ほっとくつろげる住まいとなった。
LDKはリビングをテラスと同じ高さに合わせて、ダイニング&キッチンより30cm低くしている。傾斜地による高低差を利用した設計ではあったが、結果、リビングをゆるやかにゾーニングし、こもれるような安心感のある場所にすることに成功した。ダイニングはオーク材、リビングは硬質な大判タイルを選び、視覚的にも差をつけた。リビングとダイニングの間には、大勢が集うプライベートパーティなどでベンチとしても活躍する仕切りも造作している。
天井は板張りのAEP塗装にし、木に包まれているようなぬくもりが感じられる。無垢材のよさを残したダイニングテーブルと調和し、キッチン回りには艶のあるタイルを選ぶことで、重くならないように。「ビンテージのような風合いのこのライトは、3つ連ねて灯したかったんです」と奥さま。タイルや照明が放つきらめきが、落ち着いた空間に華を添えている。
2階はオープンな共有スペースと個室とのメリハリをつけた。寝室や子供室など、各個室の要となるスペースには書棚を設け、家族全員が集えるライブラリーに。仕事や勉強に集中でき、一人で考え事をしたいときにも過ごせるセカンドリビングのような機能を持たせている。軽やかな色みの大きなテーブルは、今までダイニングテーブルとして使っていたものを再活用。シンプルモダンな2階の空間になじむ。
すっきりと暮らす日常を持続させるために、収納計画も万全に。各部屋には個々にクローゼットを設け、書棚やキャビネット、テレビ台なども造作。隠す収納を徹底することで、好きなものを飾る、見せるというプラスするデコレーションを日常で楽しめるようになった。

両サイドから光を受けて
快適で常に明るいLDKが実現

F邸に広がりとヌケを生んでいるのは、リビングの両サイドに設けたテラスからの採光。この中庭の植栽は、内部からの心地よい眺めになるのと同時に、住宅密集地のF邸を近隣の視線から隠し、プライバシーを守る役目も果たす。東西から風が吹き抜け、換気対策も万全だ。
構造上必要だったキャットウォークも東と西の両サイドに配置。2階から太陽の光が注ぎ、LDKは常に明るく、日中は照明がいらないほど。開放感のある心地いい居場所となった。

日常を美しく快適に保ち
子育てを楽しめる空間

「育ち盛りの男の子2人と共に暮らす家なので、キッチンから洗面、浴室へとスムーズに動けるよう1階に水回りをまとめています」と設計を担当したIDA HOMESの髙木 法さんは語る。吹き抜けから家族の気配を感じながら、それぞれの居場所でのびのびと過ごせる、子育て中でもストレスを感じない間取りを心掛けた。造形として美しいだけではなく、日常でも住み手のスタイルが保てる空間を心掛けている。「F邸は居心地がよすぎて、完成後もなにか機会があるたびにお茶を飲みに訪れているんですよ」と笑う髙木さん。プライベートサロンのような心安らぐ邸宅となった。

取材・文/間庭典子

F邸
設計施工 IDA HOMES 所在地 大阪府
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 315.01㎡
延床面積 198.74㎡ 構法 木造SE構法

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