2020.06.29

大空間をゾーニングするリズミカルなスキップフロア

大開口から差し込む光が美しい陰影を描く

6層構造のスキップフロア
どこからでも見渡せるLDK

 
H邸の玄関に入ると正面に広がるのはLDKの大空間。リビングの上は約2.7×5mの大きな吹き抜けになっており、南東向きの大きな窓からの光が部屋全体を包み込む。「吹き抜けを生かしたのびのびとしたLDKを中心にしたプランで、1階を贅沢に使うためにバスルームやランドリーエリアなどの水回りを2階にまとめました」とicocochi渋沢テクノ建設の佐藤真幸さん。
ロフト階まで続いていくスケルトンの階段と、吹き抜けをぐるっと囲むような廊下の黒いスチールの手すりが、白く明るい空間を引き締める。室内のどこからも家の中心であるLDKが眺められる構造になっている点も、この家の特徴のひとつ。階段を上がるとき、子供室に通じる廊下を渡るときなど、あらゆる場面、あらゆるアングルから家族が集うリビングを見渡せて目にも楽しい。H邸はロフト付きの2階建てではあるが、階段下の読書コーナーを一番下の層とすると、家の中は6つもの層で構成されている。
空間の合理的な使い方も見事だ。「通常は収納スペースにすることが多いロフト階ですが、あえて寝室に。バスルームの上に位置する最上層の小上がりにベッドを置きました」と奥さま。そのため大きなW.I.C.のスペースが確保でき、子供室との距離も生まれるなど、スキップフロアならではのゾーニングで心地よい空間を手に入れた。
 

理想的な大開口に隠された
さまざまな工夫と利点

 
南東と北東にはそれぞれ大きな開口があり、LDKには柔らかい自然光が降り注ぐ。H邸が立つのは9路線が乗り入れるターミナル駅、高崎駅からほど近い街の中心部。集合住宅も多く、近隣の住宅と密接している。「北東は月極の駐車場に面しているため、車や人の行き来を考え、2階から上だけを開口にしました」と佐藤さん。室内からは空しか見えず、視線も気にならない設計に。また、壁一面の大開口は窓を4つ組み合わせて、ひとつの大きな窓のような印象に仕上げている。
「開口は多く見えますが、外部から侵入可能な窓や扉は少なく、警備会社のセキュリティー指数も一番危険の少ない数値だったんですよ」とHさん。開放感とセキュリティーという相反する条件を、見事両立することに成功した。
 

住み替えた経験を元に
家族にとっての快適さを追求

 
実はこの家、Hさん一家にとっては4軒目の住居。Hさんの勤務地に近い品川の高層マンションや郊外の集合住宅などを経て、群馬県高崎市に新築することにした。「それぞれの住まいには、快適な点と解決できない難点がありました。広いルーフバルコニーに心引かれることもありましたが、実際に住むと意外と活用しないものでしたね」とHさんは笑う。そんな経験を元にしたこの住宅は、いわばハイブリッド。自分たちにとってなくてはならない要素だけを抽出した。
また、「Yチェア」や「マレンコ」などの名作家具も、長く愛用してきたもの。「手持ちの家具に調和するデザイン、間取りを心掛けました」と佐藤さん。床や窓枠は家具と相性の良いチェリー材を採用し、ダイニングテーブルに合わせて収納を兼ねたベンチを造作するなど、ライフスタイルをベースにした機能、デザインなので無駄がない。「帰宅後、すぐに手を洗う習慣があるので、玄関ホールに洗面ボウルも設置しました」と奥さま。毎日の暮らしを支え、可能性を広げてくれる住まいが、工務店と造る注文住宅なら可能なのだ。
 

取材・文/間庭典子

H邸

設計施工 icocochi渋沢テクノ建設 所在地 群馬県高崎市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 138.01㎡
延床面積 100.26㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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