2021.10.18

NYのロフト感覚のラフで豊かな大空間

リビングと中庭──2つの吹き抜けから光が差し込む

木造とは思えないダイナミックで
白いキャンバスのような大空間

 
Yさん夫妻が望んだのは、NYのブルックリンやクイーンズの倉庫を彷彿させるラフで経年変化を楽しめるような大空間。木造でありながら6.4mの吹き抜け天井とリビング、中庭に吹き抜けのあるプランを可能にしたのは1棟1棟、構造計算を行い、耐震性に優れたSE構法だからこそ。盛岡市内でデザイン性の高い住宅設計・施工の実績があるフリーダムデザインにとってもチャレンジングな事例となった。
「高天井の大空間やビルトインガレージを望まれており、在来工法では実現できないと判断し、SE構法をおすすめしました」と設計を担当した小池康也社長。2階にもトレッドミルなど総重量が1tを超すマシンを設置したプライベートジムまである。にもかかわず、耐震等級3が可能になっている点も秀逸である。
「盛岡駅からも至近のY邸は、邸宅が並ぶ旧市街にあり、間口が狭く奥行きの長い変形敷地でした。そこでプライバシーを保つために外部には閉じて、中庭に開放したプランを提案しました」と小池社長。中庭を通じて東の朝日が入るキッチン、階段は2カ所に設けて、中庭を中心とした回遊性のある動線を確保。リビングには空間の中心となる薪ストーブ、壁にはベルギーブリックタイルを配し、NYのアパートメントのように100年以上住み継いだような風合いを目指した。その結果、まるで大きなキャンバスのように自由な空間が広がって
いる。「一番うれしかったのは、この家でお互いの趣味を邪魔せず、発揮できたことですね」と奥さま。夫妻はそれぞれNYで生活した経験があり、大学で写真を専攻していた奥さまは、写真集などの蔵書を収納できる開放的な書斎を望んだ。また、Yさんは、アメリカのストリートカルチャーを取り入れたスタイルを好む。以前までのマンション生活では、お互いのテイストが主張し合っていたが、余白のあるこの家では絶妙にミックスされ、オリジナリティあふれる住まいが実現した。
 

スタイリングの妙技で
ラフな中に端正さをミックス

 
新居では、家具をコーディネートする楽しみも増えた。ソファはミノッティ、ダイニングテーブルはリーヴァ、照明はフロスなどイタリアンファニチャーを提案。W.I.C.はセンターテーブルやテレビボードと同様、モルテーニに造作を依頼。都会的で端正な趣の家具やインテリアは、アーティスティックなディスプレーをいっそう際立たせる効果が。「ダイニングに飾っているコカ・コーラの大きな写真は、マンハッタンのストリートで見つけたものなんですよ」とYさん。価格や知名度に捉われず、自分たちが直観的に良いと感じたものを選び、取り入れている。
 

経年変化を楽しめる素材、
デザイン、そして強靭さを追求

 
内装材にも夫妻のこだわりが見られる。床はナラ無垢フローリングにし、壁は漆喰のほか、ブリックタイルも採用。「暮らしていくうち自然につくキズさえも家の一部になっていく、そんな家が理想でした」と奥さま。テレビ側の壁は、本物の積みレンガをスライスした素材にペンキをラフに塗る仕上げ。そのセンスには小池さんも脱帽。この大胆にして贅沢な仕上げは、海外生活が長いYさんならではの発想だった。「ご夫妻とは都内のショールームまでご一緒して、素材や家具選びをしました」小池さん。耐震に優れたSE構法の躯体と、住み手の魅力が共存する邸宅である。
 

取材・文/間庭典子

Y邸

設計施工 フリーダムデザイン 所在地 岩手県盛岡市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 400.29㎡
延床面積 387.14㎡ 構法 木造SE構法

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