2019.09.30

ゲストをもてなすために非日常を美しく演出

 
 

非日常を彩る空間は、日々の暮らしも快適に!

敷地を有効に利用し賢くラグジュアリーを演出

横浜市内にあるT邸はゲストをもてなすための家。住宅密集地の中、約100㎡という限られた敷地を有効に使い、非日常感が漂う演出を施している。玄関ホールはゆったりとゲストを迎えられるよう贅を尽くした空間に。1階から屋上まで貫通したシースルーの鉄骨階段は幅に余裕を持たせ、踏み板には最高級のブラックウォールナットを採用。窓や踊り場をギャラリーのような設えにし、階段もまたゲストをもてなす場とした。
2階のLDKは、ワンフロアにワンルームで最大の空間を確保。LDKに動きを出す装置として、バイオエタノールで発火する暖炉「エコスマートファイヤー」を設置し、キッチンとリビングを緩やかに仕切った。もう一つの仕掛けがリビング前のバルコニー。南側の開口部の外に庭を作り、プライバシーを守るために屏風のような壁でカバーしつつ、光や風、自然を感じられるようにした。
「LDKに配した庭はリビングに開放感を与えるだけでなく、3階でも外部との緩衝空間として機能しています」と語るのは設計を担当したkadono design NODEの角野 渉さん。「1階を駐車場を兼ねた大きな倉庫、2階をワンルームのLDKにするなど、下層に気積の大きなスペースがあり、構造的に不利な空間構成です。木造の在来工法では心配でしたが、SE構法にすることで、長期的にも安心できる構造となりました」と振り返る。 
 

技術や匠の技を盛り込み理想の家造りを体感

この家の住み手は、施工を手掛けた志馬建設のTさん。志馬建設ではモルタル吹付工を主軸とし、コンクリート建造物の補修や補強など土木をメインとしてきたが、数年前から住宅事業も展開。工務店として住み手の気持ちを深く理解したいと思うようになったのだという。「ならば実際に自分で体験してみようと、理想の家を建てることにしました。実験みたいなものですね」とTさんは笑う。自然を感じる庭が欲しい、週末は屋上で仲間と集いたい、と夢が膨らんだ。
モデルルームとして公開する予定もあったので、狭小住宅でもスタイリッシュに住めるお手本にできればと考えたという。リビングとキッチンの仕切りや水回りに、耐水性・耐熱性・弾力性に優れたモールテックスを取り入れた。「配色や左官技術によって表情ががらりと変わるので、場所に合わせて異なる仕上げにしました」とTさん。屋上は金属防水「スカイプロムナード」で強化し、防水破損を気にすることなくパーティーやバーベキューを楽しめる仕様に。何を使ってどんなことができるかを表現した家となった。
 

洗練を極めた結果安らぎにつながると実感

「デザインのためと思っていた間接照明は、目に優しい光だと気づきましたし、『エコスマートファイヤー』の炎は眺めているだけで安らげます」とTさんが言うように、生活してみて知ることも多かった。デザイン優先に見えるヴァーナー・パントンのシャンデリアも、実は軽量で手入れがしやすく実用的だ。「家事が負担にならない動線とメンテナンスが楽な施工を心掛けました」とTさん。汚れが目立たないグレーのタイルを使うなど、今なら主婦の気持ちにも寄り添えると胸を張る。洗練が暮らしやすさにもつながるのだと自信を持って提案できるようになったそう。「家が快適で外出する機会が減りました」。スタイリッシュなデザインに囲まれた住まいは、ライフスタイルそのものも変えた。
 

取材・文/間庭典子

T邸

設計 kadono design NODE 施工 志馬建設/BASE+
所在地 神奈川県横浜市 家族構成 1人
延床面積 197. 55㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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