2021.11.30

空間をスマートに生かしたコンパクトハウス

限られた敷地を心地よい空間に感じさせる広がり

青空も星空も望める
バルコニーに大きく開くLDK

駅前の住宅地にありながら開放的なLDKが心地よいM邸は、1階が49.77㎡、2階が61.27㎡。敷地面積に恵まれている長野県では、比較的コンパクトな住宅といえるだろうが、それを全く感じさせない広がりを感じられるのが魅力だ。
暮らしているのはまだ若い30代の夫婦。日当たりのいい2階をゆったりとしたLDKとし、その東と南に面したバルコニーをアウトドアリビングとして過ごせるよう17.39㎡と広めに。近隣の視線を遮断するため、バルコニーの壁は2.4mと高めに設定。白壁がレフ板のように室内に光を反射させ、冬でも温かみのある光が室内に注ぐ。南側の大開口からは空や雲、そして山々が望め、清々しい。ダイニングのある東側の壁一面には収納力のあるキャビネットを造作。ダイニングテーブルやソファなど必要な家具だけを置き、隠す収納を徹底することで、よりすっきりとした生活空間となっている。

清潔感のある白い壁に映える
アートやオブジェをアクセントに

すっきりとした空間になったことで、白壁を自由に生かせるようになった。余白に飾ったアートやオブジェはすべて奥さまのセンスで選び、コーディネート。単調になりかねないミニマムなLDKを魅力的に仕上げている。
階段奥のLDKのデッドスペースにはデスクを設け、書斎に。また、脱衣所、ランドリーはゆったりとスペースをとってドレッサーとしても活用し、空間の使い方に無駄がない。「浴室から直接バルコニーに抜けられる動線になっているので、湯上がりには星空を見ながら涼んだりします」とMさん。日常が豊かになる住まいとなった。1階は寝室と、将来を見越して子供室としても使える予備室を。近隣の住宅の植栽など、季節の移ろいを感じる借景を切り取れる窓を設けた。各所に窓があり、風が抜けて換気がしやすい。帰宅時の手洗いが習慣になるよう玄関近くに洗面台を設けたのも今の時代ならでは。清潔感のある白い壁を生かした収納スペースも充実。就寝時を静かに過ごしたい1階は、機能性を優先している。

人生設計そのものを相談したい
住み手に寄り添う工務店

間口が狭く、敷地が限られているため、玄関前は2台駐車が可能なビルトインガレージに。この空間はアプローチのような役目も果たし、公道と玄関との距離も保っている。大きくせり出したキャンティ構造(片持ち屋根形状)のビルトインガレージだが、SE構法により耐震等級3を確保できた。
長野県全域でSE構法の実績があるMstyle houseは住み手に寄り添う工務店。時には土地探し、融資などメンタル面も含めサポートするという。「家づくりのもやっとした不安、悩みを気軽に相談できるよう、今年から個別の相談窓口も開設しました」とM邸を設計した代表取締役の酒井良子さん。自らも子育て中であり、家事の担い手だからこその視点で、効率のいい生活動線や収納計画を提案する。「重視しているのは後からでは調整できない耐震や断熱などの家の性能です。自然のエネルギーを効率よく生かせるパッシブな家づくりと、住み手がどのような生活を理想とするかをヒアリングして、プラスαのアイデアを出すようにしています」。太陽の光を味方にし、空間をスマートに生かしたM邸は、まさにそれらをかなえた機能的な住まいだ。
 
取材・文/間庭典子

M邸
設計施工 Mstyle house 所在地 長野県須坂市
家族構成 夫婦 敷地面積 118.67㎡
延床面積 111.04㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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