2020.11.16

陽光が注ぐ、風通しのいいリビング空間

どの空間にいても夫婦二人でくつろぎを共有できるリビング

生活に変化と豊かさを
もたらす独創的な動線

 
N邸の特徴はユニークな動線にある。玄関のドアを開くとシンボルツリーが客人を出迎え、離れのような和室へと続く小路、玄関ホールから外を眺めながらゆったりとLDKへと進む廊下、クローゼットからリビングへ直接抜ける通路の3方向に広がっている。毎日生活するご夫婦にとってはストレスなく、招かれたゲストにとっては視覚的にも楽しめる仕掛け。
吹き抜けのリビング空間は圧巻だ。リビングを中心にキッチン&ダイニング、テラス、2階の回廊へと抜け、2階には全体を見渡せるセカンドリビングを設けている。「どこにいてもお互いの気配を感じられる距離感が心地いいですね」とNさん。キッチン&ダイニングは小上がりのように一段上げることで、違うアングルになり見え方が変化し、伸び伸びとした空間にリズムが生まれた。寝室に続く階段以外にもゲストルームに直接つながる2つめの階段を設置。吹き抜けで遮ることでプライバシーが守られ、お互いにリラックスして過ごせる。「大胆な吹き抜けと回廊の途中に配したセカンドリビングは、構造躯体が頑強なSE構法だからこそ可能になったプランです。SE構法は地震に強いのはもちろんですが、設計に自由度をもたらすのがメリット。プラスアルファの、さらに思いつきのような発想もかなえてくれるんです」と三和建設の担当者たちは口を揃える。
 

最先端の冷暖房システムにより
快適で清潔な環境を保つ

 
この開放的な空間を快適な環境に保つ輻射式パネル型冷暖房の光冷暖。これは2014年に環境大臣賞を受賞した機能性に優れた冷暖システムで、一般家庭に採用されつつある。遠赤外線の輻射・放射熱を床・壁・天井に伝えることにより、室内全体の温度差を軽減し、冬は暖かく、夏は涼しく保つ。風・音がなくフィルターも不要だ。「木造は寒いと感じていたのですが、エアコンは苦手。光冷暖は埃を気にせず、空気を清潔に保てる点に引かれました」とNさんは振り返る。実際に体感し、納得してから決断していただくため、真冬の時期にモデルハウスに再訪してもらった。室内でスリッパを脱ぎ、部屋の隅々まで足裏で直接床に触れてもらい、非接触温度計で床・壁・天井の温度も計測した。光冷暖を各階に2台ずつ設置しているが、パーテーションのようにさりげなくゾーンを区切る効果も。高性能な断熱材をダブル断熱として使用することに加え、熱移動の効果が得られるよう、1階は漆喰仕上げを採用。漆喰は湿気や臭いも吸収し、梅雨時も快適だ。
 

段差とあいまいな「間」が
奥行きと抜けをもたらす

 
離れのように独立した和室は仏間でもある。先祖を祀るその上階で生活するのは控えたいという思いから、この棟は2階を造らず平屋に。主屋の勾配屋根との段差で奥行きが出て、風格を感じる外観となった。「『視線の抜け感』と『空間と空間のあいまいさ』を大切にしました」と設計担当の足立雅哉さん。各所に生まれた程よい「間」はライフスタイルにも変化をもたらしている。パントリーを兼ねた家事室で奥さまがアイロンがけ中も、リビングでくつろぐNさんと会話できる。「孤立することがないので家事が楽しくなりました」と奥さま。逆にNさんはそんな奥さまの姿に接して、積極的に家事に参加するように変化したという。「週末を自宅で過ごすことが多くなりましたね」とNさんは嬉しそうだ。
 

取材・文/間庭典子

N邸

設計施工 三和建設 所在地 兵庫県尼崎市
家族構成 夫婦 敷地面積 186.51㎡
延床面積 151.38㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事

MLWELCOME

MLWELCOMEは『モダンリビング』誌と「重量木骨の家」とのコラボレーションで特別編集されたムック本として2015年10月に発行されました。厳選された木造住宅の実例をウェブサイトでもご覧ください。