2020.10.05

どこにいても緑を感じる、開放的な平屋

見る角度によってがらりと印象が変わるLDK

暗く単調になりかねない
平屋をリズミカルな空間に

 
大自然の中にある愛知県岡崎市のT邸。アメリカの郊外生活が長かったご夫妻は、自然と共に暮らせる平屋が希望だったそう。開放的なLDKであることも条件のひとつだった。背景には里山が広がり、道路の前には小川が。桜や紅葉に囲まれ、季節ごとに絶景が望めるこの上ない立地条件だ。
「周囲の景観をどのように取り込み、LDKと一体化させるかがテーマでした。平屋は伸び伸びとした広がりがあるというメリットもありますが、2階、3階建てに比べると光が入りにくいというデメリットも。そこで敷地に対してスクエアな間取りではなく、凹凸があるようなプランを選びました」とkotoriの設計室長・原茂貴さんは語る。その凹凸に多くの窓を設けることで、平面でも十分な採光ができ、かつ外の景色を切り取れる。単調になりがちな平屋の外観も、吹付、ガルバリウム鋼板、木張とさまざまな仕上げを組み合わせることでリズミカルになった。
ウッドデッキに接したリビングの角はL字型の大開口を採用。対する北東の里山側にも開閉できる大開口を設け、採光と風通しを確保した。「角を太い柱で支えることなく、L字型に開口をつくることは木造では困難なのですが、SE構法ならば可能なのです」と原さん。
 

誠実さで築いた
強い絆のTEAMを結成

 
Tさん夫妻にとってkotoriとの出会いは印象的だった。「資料請求して各メーカーのカタログが郵送で届くなか、原さんは直接届けてくれたのに驚きました」と奥さま。原さんはこれも何かの縁、契約につながらなくてもごあいさつしたかったと語るが、Tさん夫妻はそのときの誠実な対応が心に残ったという。3年後、理想の土地が見つかり相談することに。「難しいと思う要望も、想像を上回るプランで解決してくれて楽しかったです」とTさんは振り返る。木造でも大空間、大開口を実現できるSE構法を知ったのもこのときだった。
「日本家屋の縁側のような、外部と内部をつなぐ空間です」と、大開口を生かし、LDKを囲むようなウッドデッキを設けることを原さんは提案。目の前の道路沿いには小川が流れ、この「縁側」ウッドデッキでは、自然の中での読書や天体観測を楽しめ、夏には蛍もやってくるという。広さがあるので子供たちの遊び場にも最適だ。
サッシ部分が見えないよう窓を木枠で囲むなど、建具も細かく調整。熟練した職人による技が冴える意匠だ。今までに築いてきた信頼関係により阿吽の呼吸となり、このお客さんにはこんな風合いが好まれそう、と職人さんが的確な仕上げを言わずともしてくれるのだそう。こうしてkotoriでは、家づくりのチームが自然に結成される。
 

住み手の視点で考え抜き
自然と寄り添う平屋が完成

 
「『できない』と言わない工務店を目指しています」と原さんが語るkotoriは、住み手の要望、ライフスタイルの傾向だけでなく、好みまでもくみ取る努力を惜しまない。職人を含め、チーム一丸で家づくりをサポートしている。「実際に生活してみると、座ったときに広がる山の風景や、フィラメント電球が描く光と影など、日々発見があります。朝は心地よく目覚め、夜の静寂さに気づかされる家ですね」とTさん。住み手の視点を何よりも大切に設計・施工された家は、自然の厳しさから家族を守り、自然の豊かさを肌で感じる理想的な住まいとなった。
 

取材・文/間庭典子

T邸

設計施工 kotori 所在地 愛知県岡崎市
家族構成 夫婦+子供1人 敷地面積 486.22㎡
延床面積 132.22㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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