2020.02.03

木とスチールと青で彩るLA風トリコロールの家

インディゴブルーに包まれたエントランス

ブルー、白、木目の3色で
内装外装のイメージを統一

 
東大阪市の閑静な住宅地にあるH邸。敷地は元々駐車場で約64坪あり、西向きではあるものの、南側に隣接する公共施設とは約8m離れているため、建物の奥行き7間(12.7m)はゆうに南からの陽光が得られ、冬でも十分に直射日光を取り込むことが可能。自然エネルギーを利用するパッシブデザインの住宅を造るには、最適の敷地だった。建物は南面の間口をより大きくして、日照を効率的に取り込める形状とし、逆に西側には開口部は設けず、壁にしてシャープな外観に。
「西側2階の外観正面は窓を1つにすることで、ハンサムな顔つきを強調しました。また、LAスタイルを希望する住み手のために、インディゴブルーのガルバリウム鋼板、白のリシン吹付け、木製サイディングのトリコロールカラーにして、素材感も引き立てました」と設計を担当したタイコーアーキテクトの山村恭代さん。西面はフレームをおこし、自転車の駐輪スペースとした。
ブルーをポイントにした3色は、室内でも各所に取り入れた。「インテリアデザインの情報はインスタグラムから収集しました」と奥さま。「#LAのカフェ」「#サーフスタイル」など気になるハッシュタグで検索し、世界中の実例を集めた。実際に住んでいたり、営業している店舗が多いことから、機能面でも学ぶことが多かったそう。キッチンカウンター側面のマガジンラックや玄関の飾り棚もその一例。吹き抜けに面したフリースペースにも、LAのビーチサイドにありそうなタイヤ型ブランコを設置した。
 

SE構法による吹き抜けが
家に明るさと暖かさをもたらす

 
「壁や柱に邪魔されない、1階にある21畳のLDKは、10畳の吹き抜けを介して2階のフリースペースとつながっています。SE構法ならではの大空間です」と山村さん。この吹き抜けがあるからこそ、南面の光をたくさん取り込むことが可能に。「夏は暑がりなのに冬は寒がりで、全室に床暖房を付けたいと思っていたぐらい。リビングと2階がつながるこの大空間にたった1台のエアコンでは不安で、『本当に寒くないですか?』と何度も確認しました」とHさん。実際、住んでみると室内がひと続きなので浴室前の脱衣所まで快適。家が暖かいと冬がこんなに楽なのかと驚いたそう。「念のために寝室にエアコンを付けましたが、結局一度もスイッチを入れずにひと冬過ごしました」とHさんは笑う。大きな吹き抜けが室内の温度を一定に保つ機能もサポートしている。
 

LDKのもう一つの主役は
開放的なリビングの階段

 
リビングから2階のフリースペースへと伸びた美しい鉄骨階段をデザインしたのは、実はHさんご本人。おじいさまの代から鉄工職人として、これまでもタイコーアーキテクトの物件を多く手掛けてきた。「現場でのお客さまへの対応、耐震や断熱に妥協を許さない家造りを見てきて、家を建てるならタイコーアーキテクトさんだと決めていました。画像で見て素敵な家と、実際に住んで暮らしやすい家は違うと思うんです。手触りなど五感で心地よさを感じる家を目指しました」とHさん。スチール製の手すりは、手で触れる部分はぬくもりを感じる木材でカバーしている。
冬は多くの光と熱を取り込み、夏場は南面の屋根が庇の役目を果たして涼しく快適に。スタイリッシュなだけではない、自然の力を最大限に生かした省エネでパッシブな家が生まれた。
 

取材・文/間庭典子

H邸

設計施工 タイコーアーキテクト 所在地 大阪府東大阪市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 212.38m²
延床面積 119.46m² 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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