2020.03.02

視覚効果が広がりを生む都会の邸宅

機能的でエレガントなキッチン&ダイニング

高低差や変形地を生かし
唯一無二のLDKが完成

 
Y邸のテーマは「デメリットをメリットに」。東京都港区の緑豊かな高級住宅地だが、高低差2.5mの傾斜地かつ変形地ということで、どんな家が建つかは未知数だった。「『本当にこの土地に家を建てるんですよね?』と思わず念押ししたほどです」と設計担当のテラジマアーキテクツの深澤彰司さんは笑いながら振り返る。他社に相談してほぼ諦めかけていた住み手のYさんだが、深澤さんに提案されたプランを見て、こんな家に住めるならと土地の購入に踏み切った。その結果手に入れたのは、唯一無二の広がりを感じられる家。不利な条件を逆手にとり、耐震等級3を確保しつつも、ダイニングキッチンとリビングが斜めにつながる大空間を実現した。
公道に面した入り口は地下階をRC造にしてゆったりとした駐車場に。車を2台停めてもまだ余裕がある広さなので、通常はネットを張って野球少年であるお子さんのトレーニングスペースとしても活用している。1階から3階は木造SE構法を採用。エントランス正面には坪庭を配し、自然光を取り入れた。1階には寝室や浴室、3階には子供部屋を配し、2階を広々としたLDKにした。
 

各空間を斜めにつなぎ
天窓や外部空間から採光

 
ワンフロア全体を使ったLDKは、パズルのピースを組み合わせるように各空間を斜めにつないでいる。そのため、どこから見ても奥行きを感じられるという思わぬ視覚効果が。階段に面したダイニングは吹き抜けにし、高さにも変化をつけた。デメリットをメリットに変換したのは、坪庭やバルコニーなどの外部空間だ。バルコニーはアウトドアリビングとして活用できるよう、シンクも設置した。リビングからバルコニーを見渡すとちょうど近隣の住宅が隠れ、近くの学校の校庭が借景となり、木々の緑が広がる。
また、建蔽率や斜線制限で建物上部を斜めにしなくてはならないダイニング西側には、高窓を4つ連ねた。消去法で選択したこの開口が、採光と眺めに思わぬ功を奏した。食卓を囲みながらも近隣の目が気にならず、いつでも青空が仰げるのだ。LDKからは収納やトイレへのドアが見えないなど、生活感を出さないよう配慮し、ゲストを招くのにふさわしい場とすることも心掛けた。
 

デザイン性をさらに高める
選び抜かれた素材

 
「あらゆるショールームに実際に足を運んでいただき、実物の質感を確認しながら、納得のいく素材を自身の感性で選んでいただいています。Yさんの行動力、審美眼にははっとさせられました」と深澤さん。また、イメージの共有を重要視しているため、初回はテラジマアーキテクツの担当設計士が住み手の家を訪問して打ち合わせをする。現状を瞬時にリサーチできるからだ。そしてレストランやホテル、ファッションやアートなど、住宅以外のビジュアルも含めた、理想とするイメージのコラージュ制作をすべての住み手に依頼。住み手が憧れる暮らしのイメージをベースにしながら、実際の生活に必要な収納や設備、間取りなど、具体的な設計プランを練っていく。
「私たちに負担がかからないよう、知らぬ間に願望をくみ取ってくれて、ストレスフリーでした。不可能を可能にする、NOのない家造りだったと思います」と奥さま。土地の個性やY夫妻のセンスを引き出す工務店の手腕により、上質な暮らしを支える家が完成した。
 

取材・文/間庭典子

Y邸

設計施工 テラジマアーキテクツ 所在地 東京都港区
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 143.87m²
延床面積 245.96m² 構法 木造SE構法+RC造

この家を建てた工務店

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