2025.08.18

コンサバトリーが連なる陽だまりのリビング

家族も、ペットも、植物たちも笑顔になる、朗らかな空間

家族4人と犬2匹、猫3匹とインコ1羽が暮らすH邸は、みんなが楽しめる空間が各所に設けられた住まいだ。家づくりを進めたのはちょうどコロナ禍の最中。家族全員が在宅し、それぞれの時間を過ごしていても快適で、趣味に集中できるような、2層に連なったリビングがあるプランを採用。
 
 
天井高5m以上の吹抜けの存在によって、開放感は抜群にいい。さらに空や庭に大きく2面に開くL字型の大開口を設けたことで、横の広がりと縦の広がりを感じられるようになった。「SE構法を採用した結果ですね。柱はあるものの、LDKのなかの構造壁は階段の内壁にある1カ所のみなので、約30畳という規格外の大空間がかないました」とじょぶの企画設計室の橋本知佳さん。
 
 
通常であれば南東側をリビングとするのが定石だが、H邸では道路に面した北東側にLDKを配置。「南東側は隣家と高低差があったため、室内が見えてしまう可能性がありました。そこで、敷地が道路面に対して高台になっている北東側をリビングとし、ハイサイドライトを設けて、プライバシーが守られるLDKを実現したのです」と橋本さんは語る。
 
 
1階は陽だまりのリビング。犬や猫たちがうたた寝し、家族が自然に集まる。リビングからウッドデッキ、そのまま庭へと行き来できるフラットにつながる空間構成。冬はペレットストーブを囲んで過ごす場に。2階のセカンドリビングは子供たちが遊び、それぞれ趣味に熱中できる「余白」。多趣味なご家族だけに、蔵書やDVD、ゲームなどの所有も多いが、2階のリビング周辺に収納をまとめ、カフェにもライブラリーにもホームシアターにもなる遊び場とした。放課後は子供たちが友だちを連れてきてにぎやかだ。「1階と2階でそれぞれ過ごしながらも子供たちの気配が伝わり、安心です」と奥さま。ふたつのリビングは心地よく共鳴している。
 
 
ユニークなのは植物を楽しむコンサバトリーだ。「当初は2階のリビングをスタジオにしてヨガのクラスを開くことを計画していたのですが、在宅期間中に本格的に学んだフラワーアレンジメントを教えてほしいという声が多く、サロンを開くことになりました」と奥さま。花を扱うのなら当初予定していた2階よりも水回りに近い1階のほうが便利。花材を上に運ぶのは重労働であるため、1階のリビングに手を加えることにしたそう。開閉可能なガラスの間仕切りを設け、床には水に強いタイルを張ってゾーニング。外側からコンサバトリー内部を見通せ、LDKを彩る背景にもなっている。
 
 
無垢材と漆喰の風合いがナチュラルな家のさまざまな場所に好きな小物をディスプレイ。「階段に設けたニッチを活用した飾り棚もお気に入り」と奥さま。白の壁に見せる収納が映える。床材も場所に合わせてセレクト。人通りが多い1階は傷がつきにくいオークを、2階のセカンドリビングは肌触りのよい杉の無垢材を選択。トーンはそろえて家全体が調和するようにした。本棚が隠し扉になった書斎や、ボルダリングの壁を伝ってアクセスできる子供部屋の寝室など、あっと驚くからくりも各所に。「訪れる人を喜ばせよう、自分たちも楽しもう」という住み手の思いが、訪れた人も笑顔にする楽しさにあふれた住まいをつくり上げている。
 
 
取材・文/間庭典子

H邸
設計施工 じょぶ 所在地 奈良県生駒市
家族構成 夫婦+子供2人+犬2匹+猫3匹+インコ1羽 敷地面積 347.16㎡
延床面積 168.83㎡ 構法 木造SE構法

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