2023.01.10

猫と人とが共に暮らし、 それぞれの世界を築く空間

猫といっしょに遊び、くつろぐキャットフレンドリーなLDK

人間と猫の領域、オンとオフを
明確に分けることで快適に

京都市のM邸は猫と人間がリラックスして暮らせるストレスフリーな住宅。猫と人間、お互いの存在が気にならないように、3つのフロアは完全に住み分けられている。1階は人間のためのフロア。浴槽やランドリー、Mさん夫妻のワードローブがすべて収まるクローゼット、オフィスを設けた。「1階には猫は入れないので、衣服に毛がつく心配もありません」とMさん。仕事場とプライベートな空間を区別する意味もあり、オフィスは玄関脇に位置する土間続きに。宅急便も受け取れて、玄関を通さずに来客との打ち合わせも行える。室内でありながら「離れ」のような距離感があり、それぞれが集中して活動できるスペース。グラフィックデザイナーとして活躍する奥さまと、横に並んで作業することも多いそう。
2階は猫と住み手が共存するリラックス空間。LDKや寝室、サンルームなどがある。「タイコーアーキテクトのショールームで見たサンルームが印象的で、そのイメージのまま設計していただきました」と奥さま。自然光の中で過ごせるサンルームは、ヨガやトレーニングをするプライベートジムとしても活用。もちろん猫たちにとっても格好の遊び場だ。「外の風景を見渡せる窓際にはキャットステップやキャットウォークを設けて猫たちが自由に歩き回れるようにしました」と奥さま。
3階は猫たちのための空間に。床も猫たちが歩きやすく、傷がつきにくい素材に変えた。「実は2階に住む猫と相性の悪い猫がいて、喧嘩をしてしまうので、それぞれの空間で生活できるようにしているんです」と奥さま。2階と3階の吹き抜けの間はガラスの板で仕切っており、光は通るが、お互い行き来できないよう工夫されている。吹き抜けに面した3階のフリースペースには、LDKを見渡せるカウンターデスクを造作した。

奥行きのある敷地を生かしつつ
吹抜けで広がりと明るさを確保

約37坪の敷地は間口約5.2m、奥行き23mのいわゆるウナギの寝床、典型的な京都の町家だ。柱や壁で遮らず、東西の端まで見渡せるよう心掛けるなど、奥行きのある土地をうまく生かした間取りになっている。伝統的な町家では坪庭を設けてそこから採光することが多いが、M邸では2階のリビングを吹抜けにし、3階南側に窓を設けることで、リビングやサンルームに太陽の光を取り込んだ。「視線が上下にも抜けることで、奥行きだけでなく、広がりも感じられるのびやかな空間になりました」とタイコーアーキテクトで設計担当の前田 良さんは語る。視界を遮るような家具を置かず、壁面収納を充実させたことも成功の秘訣。直線のラインが強調され、より奥行きを感じる視覚効果も発揮。「LDKのライン状に設けたダウンライトなど、照明によってさらに上質な雰囲気を生み出しています」と前田さん。

素材や照明、趣味のスペースで
さらなるオリジナリティを

モノトーンでまとめたシンプルモダンな空間は、壁面の素材感や照明、そして機能でオリジナリティをプラスしている。猫たちのための抜け道やプレイコーナーもユニークだが、寝室の裏にもあっと驚く仕掛けが。「漫画喫茶のこもった空間が好きで、壁面を書棚にして好きなコミックを並べ、自宅でもそんな気分で過ごせるコーナーにしてみたんです」とMさん。自分だけの居心地の良さを追求した結果、猫たちと住み手が、それぞれの世界で気ままに過ごせる空間となった。

取材・文/間庭典子

M邸
設計施工 タイコーアーキテクト 所在地 京都府京都市
家族構成 夫婦+猫 敷地面積 122.42㎡
延床面積 191.27㎡ 構法 木造SE構法

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