2024.11.11

ライブラリーウォールのある家族全員が安心できる家

家族の誰もが安心でき、自由に暮らせるユニバーサルデザインを追求

大阪府大阪市のM邸は壁面全体を書棚とし、LDKにライブラリーが付属したようなユニークなプラン。玄関とリビング、キッチンダイニング、階段まわりのライブラリーが一体化し、ストレスなく行き来できる空間となっている。
 
 
このように柱や壁などで空間を遮断しないSE構法によるLDKは柔軟性が高く、住み手のニーズに合わせて自由にデザインでき、ユニバーサルデザインにもつながる。M邸では書棚以外にも壁面にカウンターデスクや収納ベンチなどを造作し、階段下のスペースは納戸として活用。必要な収納をまとめ、中央の空間を最大限に設定し、動線部分にも空間的な余裕が生まれた。また、ボードゲームやカードゲームが趣味というMさん一家。熱中するあまり床に座り込んで盛り上がることも多いが、空間がゆったりしているので床座でも心地よい。階段も楽な姿勢で安全に上り下りができるよう緩やかなモジュール設定で、形状はL字型のかね折れ階段を採用した。理由は、まっすぐに続く直階段は空間を有効利用できるが足を踏み外したときに事故になりやすい。また、U字に曲がる折り返し階段は安全性は高いが、大きな荷物を運び込むときには困難だ。結果、安全性が確保され、踊り場ではひと休みもできる。階段下のスペースが有効活用できるのもメリットだ。手すりはキッチンの吊り戸棚の色に合わせ、空間になじむグレージュにし、小さな子供でもつかみやすい3つの格子のあるタイプに。書棚は各棚の奥側の板の高さを手前よりも数ミリ下げてあえて傾斜を付け、本が手前に滑り落ちずに安定するよう仕上げた。このような細やかな配慮は実績と技術力がある工務店との家づくりだからこそ。「収納のための家具はほとんど必要ありませんでした」と奥さまは振り返り、微笑みながら当時を振り返った。
 
 
さらにこの大空間で年間を通して快適に過ごせるのは、高気密高断熱を極めたパッシブデザインによるところが大きい。夏は日差しを遮り、冬は太陽の熱を最大限に取り込む設計で、かつ適切な箇所に適切な量の断熱材を配している。「気密性を高めた設計・施工をすることで家の外と内との環境を分け、外の熱や冷気が内部に入ったり、内部から逃げたりしないパッシブハウスとなります。これから日本に建てる家は、こうした省エネルギー化対策を施すことが必要。これは住まう人が健康に長生きするためのわが社が掲げる取り組みです」とM邸の設計を担当したつむぐ家の一級建築士、松尾知佳さんは語る。つむぐ家では高気密高断熱な家づくりに必要な数値を「HEAT20G2グレード」に設定している。具体的には、住宅内部の最低温度を15℃以上に保ち、冬の暖房負荷を現状より30%以上削減した住宅である。M邸の場合、断熱性能のUA値は0.37W/㎡K、気密性能C値を0.14㎠/㎡と、それらの基準をクリアしている。さらに使用する断熱材には、木の繊維からつくられたセルロースファイバーに統一。毎日の暮らしを営む基本となる家だからこそ、住み手をはじめ地球にも優しい天然素材を使用し、常に触れていてほしいという願いからだ。安心安全なうえ、日々の光熱費などのコストダウンを図るうえでも、綿密な省エネ計算や断熱材の選択は家づくりの大切な基本といえる。
 
 
見える部分だけに限らず、見えない部分も同様に配慮し、住み手の健やかな暮らしを支える家づくり。それこそがすなわち真のユニバーサルデザインであることをM邸は気付かせてくれる。
 
 
取材・文/間庭典子

M邸
設計施工 つむぐ家 所在地 大阪府大阪市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 103.14㎡
延床面積 113.66㎡ 構法 木造SE構法

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