2023.06.12

敷地を最大限に生かした都会のコンパクトハウス

さまざまな木の表情が住まいにリズムと個性をもたらす

限られた土地を100%生かす
賢く洗練されたスマートハウス

大阪の中心部なんば駅からも電車で約15分とアクセスも抜群。約107㎡の敷地の延床面積は約102㎡、1階の約50㎡よりも2階は広く、約52㎡。都市部の住宅密集地にあるM邸は、コンパクトな住まいといえる。住み手は30代の若い夫妻と育ち盛りの2人の子供たち。アクティブに動く4人家族が心地よく暮らしつつ、限られた土地を有効に活用するための解決策は、メリハリのある空間を実現させることだった。
例えば、2階部分はフロアのほとんどがLDKのスペース。ここには構造の梁をそのまま見せるなどして天井をできるだけ高くとり、収納を兼ねたロフトを設けている。1階は寝室、子供室などプライベートな居住スペースをコンパクトに配置。その分、玄関まわりはゆったりとプランニングして、圧迫感のない空間づくりを心掛けた。さらにLDKのキッチンとダイニング部分は一直線におさまるように配列。清潔感のある白と無垢材の組み合わせで、カフェ風にコーディネートしている。壁面収納ですっきりした食空間は、ゆとりのあるリビングの実現に貢献。さらにキッチンと浴室の水回りをつなげて、回遊できる快適な家事動線に。部屋干しができるようランドリーは4帖と広めにとった。「毎日の家事は2階ですべて作業できます」と奥さまも満足している。また、東西に接する住宅が3階建てのため、北側を勾配天井の高いほうとし、南側に大きな開口を設けて採光した。
1階で多くの面積を占めているのが玄関まわり。土間スペースをロードバイクを縦に駐車できるスタンドでディスプレイし、動線も広く。外出後の手洗いうがいが習慣になるよう、動線上の壁面には洗面所を設けた。家族もゲストも必ず通り、目にするのが玄関。ここは耐震性に優れたSE構法のメリットを生かし、2階がせり出したオーバーハングを採用。2台分の駐車スペースも確保した。エントランスまわりが豊かだと、ゲストが抱くこの住まいの印象も素敵になる。

コンパクトな空間を彩るのは壁
色やタイルで遊んでおしゃれに

さらにこの家は、部分的に替えた壁の色がアクセントになっている。玄関を開くとスモーキーなグリーンに迎えられたり、子供室も一面をブルーに。洗面台、キッチンなどの水回りは、清潔感のある白で統一しつつ、一部分だけタイルをプラスして風合いを出している。決して奇をてらわず、スタイリッシュに見せるテクニックだ。床の無垢材もLDKは端正なオーク、子供室と寝室はふしが目立つカジュアルな印象のスギだが、寝室を深みのあるトーンにするなど風合いを替えている。

家事の現場を住み手の目線で
理解した、きめ細やかな設計

「家事動線や具体的な収納内容など、奥さまと細かく確認し合い、女性目線で快適で機能的なプランを練っています」とじょぶの企画設計室チーフの志野千尋さんは語る。実はじょぶの設計スタッフはほとんどが女性。技術面だけでなく、現場の進捗情報を滞りなく報告し、住み手と密なコミュニケーションを取りながら、家族のように何でも言い合える関係性を築くのを特長としている。
「ご要望をうのみにするではなく、プロとして暮らしやすい空間づくりを提案しています。またつくり込みすぎず、家具や雑貨で彩ることを楽しめる余白をつくるのも大事ですね」と語る志野さん。土地探しの段階から完成後のメンテナンスまで、じょぶはパートナーとして住み手と常に寄り添う。

取材・文/間庭典子

M邸
設計施工 じょぶ 所在地 大阪府東大阪市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 106.61㎡
延床面積 101.86㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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