2019.04.01

コンサバトリーを携えた三角屋根の美しい平屋

コンサバトリーを携えた三角屋根の美しい平屋

街の風景に溶け込むどこか古くて新しい家

三角屋根に丸い窓、緑に囲まれたG邸。訪れた誰もが一見、新築とは信じないだろう。さらに家の中に入ると驚く。玄関からは室内の奥までを見渡せる平屋で、ヴィンテージの家具で囲まれ、インダストリアルデザインの重厚なライトが並んでいる。わずか4年前に建てられた住宅だが、この地にずっと立つ洋館のような風格がある。
「大きなことを言えばヴォーリズの家です」と住み手のGさんはコンセプトを語る。ヴォーリズとは、多くの教会や学校を設計したアメリカ人建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズのこと。実はメンタームで有名な近江兄弟社の創立者の一人としての顔も持つ。今も彼が設計した教会や住宅は歴史ある近江八幡市の街並みになじみ、地元の人々に愛されている。瓦など日本家屋の要素を取り入れた和モダン、住む人の立場にたった実用性。さらには日差しの角度や風の流れといった自然エネルギーを考慮したパッシブデザインなど、今の建築にも通じる特徴を持っている。
「近隣と密接した住宅地なので、壁面にはほとんど窓がありません」と設計を担当したエーティーエム建築の佐藤鉄平さん。ロフトのある平屋で、LDKや寝室の採光は主に天窓からとり、裏庭側にはコンサバトリーを設けた。「8寸勾配のとんがり屋根のため、天窓からでも直射日光が避けられ、夏でも暑くなりません」。必要なエネルギーだけを取り込めるように緻密な計算をしたという。

強い構造や断熱材により快適な環境作りに成功

以前から大きなバナナの鉢があったのですが、冬には枯れてしまうので、部屋の中に置きたかったんです。コンサバトリーは日当たりがよくて、つい昼寝してしまいます」と奥さま。コンサバトリーが内と外を緩やかにつなげ、日差しを取り入れて蓄熱利用もできる。
さらには断熱材にセルロースファイバーを使用。これは研究熱心な奥さまの提案だ。「家を建てるにあたって、まず図書館の建築関係の本を読み尽くしました。そこでたどり着いたのが、SE構法とセルロースファイバーだったんです」
みんなが快適に暮らせる我が家にするために欠かせない構法や建材がこの2つだと確信。耐震性を確保しながらの 8.5m×6mの柱なしの大空間と、底冷えがする近江の冬も快適に過ごせる住環境を手に入れたのだ。

ヴィンテージや輸入家具に囲まれ、懐かしくて新しい空間が完成

G邸のもうひとつの特徴が、どこか懐かしい雰囲気を演出するヴィンテージや輸入家具。海外生活が長い奥さまは、サイズ感にも慣れた輸入家具を希望。キッチンカウンターをはじめ、ベッドやライトなど、大きなコンテナ1個分のインテリアを、アメリカのRH(Restoration Hardware)に自身でオーダーして輸入した。玄関以外の部屋に取り付けた扉はすべてヴィンテージ。寝室の扉には以前のお宅で使っていたものを取り付け、味わい深い漆喰の壁は家族全員で塗った。事前に何をどう取り付けるかを決め、これらが収まるようにとエーティーエム建築に設計を依頼した。
「インチ寸法のリストや英語の説明書が送られてきたときはどうしようと思いましたが、設計施工一丸となって夢をかなえるのが私たちの使命」と佐藤さん。照明は電機関連の職につくGさん自らが取り付けた。Gさん夫妻の情熱と工務店の技により、古くて新しい個性豊かな住宅が生まれた。

取材・文/間庭典子

G邸

設計施工 エーティーエム建築 所在地 滋賀県大津市
家族構成 夫婦+子供1人 延床面積 132.00㎡
構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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