2023.12.25

緑のなかに立つ高台のガレージハウス

見晴らしがよい立地で緑や風を感じながら、アクティブになれる住まい

 
「高校時代に地学の授業で滋賀県周辺にある断層について学び、将来家を建てるなら可能な限り地震に強い家にしよう、と考えていました」と語る住み手のHさん。当初は結婚を機に購入したマンションに住み続ける予定だったが、所有していたマンションが比較的有利な価格で売却可能なタイミングを迎えたこともあり、奥さまの実家の敷地内に一戸建ての新築プランが浮上。そんな折に雑誌で目に留まったのが、滋賀県を拠点とする楠亀工務店が設計・施工した住まいの事例だった。珪藻土の壁や無垢材の質感を生かした空間、造作家具など、手の込んだ作業を随所に取り入れるスタイルに魅力を感じたHさん。さらに何よりも決め手になったのは、耐震住宅専門としての実績だったという。 
 
 
実際に楠亀工務店へ依頼をし、スタートした家づくり。敷地内の平地に建てるプランもあったが、Hさん夫妻が希望したのは、崖のように切り立った高台に立つ家だった。両側が傾斜している敷地に基礎を築いて施工することは、さまざまな立地での施工実績がある楠亀工務店にとってもチャレンジングな試みだった。
 
 
「崖の上の限られた敷地なので、土地を有効に使うためにも1階をビルトインガレージとし、十分な駐車スペースを確保しました。在来構法の場合、ガレージ内に補強のための柱や壁が必要になりますが、SE構法なら9mの間口の大空間も可能なのです」と社長の楠亀輝雄さん。ガレージの屋上部分を比較的重量負担の軽いルーフバルコニーとすることで、キャンプが好きなHさんが望んだ開放的なアウトドアリビングも実現した。余裕のあるガレージが得られたことで、もともとランドクルーザーに乗っていたが、街中での小回りが利くMINIも同時に所有することにしたそう。また、キャンプ用品や車のメンテナンス用品などを収納する納戸もガレージ内に設置し、Hさんのカーライフは格段に豊かになった。
 
 
ガレージの上部、住まいの内部に設けられたアウトドアリビングからは周囲の全方向を見渡せる。恵まれた眺望や風通しのよさは、この立地条件だからこそ得られたメリットだった。しかし南側には同じ目線レベルに集合住宅があること、さらにルーフバルコニーの屋根が日差しを遮断してLDKまで光が届かない季節もあることから、ご両親が暮らしている母屋のある北側を開くプランが採用された。このアウトドアリビングには簡単な調理ができるキッチンカウンター、ハンモックや遊具を吊るすフックなども設置。もともとキャンプが趣味だったHさん一家だが、この家に住むようになってから日常でもアウトドアライフを楽しめるようになった。
 
 
さらに奥さまが望んだのは暮らしのメインステージを2階に集約させ、階段移動が極力少なくて済む間取りだったそう。そこで楠亀工務店は1階に車庫と収納スペース、そして将来使う子供室を配し、2階は家族で過ごすスペースや浴室などの水回りをまとめるというプランを提案した。玄関やLDKには壁面収納を造作し、十分な収納スペースを設け、空間を有効に生かすよう配慮された。造作家具や建具の設計施工でも定評のある楠亀工務店。他にも造作でプロジェクターやスピーカーをリビングの上部に組み込んでホームシアターとして楽しめるようにしたり、壁面収納の一角にダーツ台を設置するなど各所にユニークな仕掛けも施されている。「自宅での日常がこんなに変わるなんて!」とHさんも驚きと喜びを隠せない。そんな柔軟性の高い家づくりで、Hさん一家は唯一無二の遊び場を得た。

取材・文/:間庭典子

H邸
設計施工 楠亀工務店 所在地 滋賀県大津市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 338.67㎡
延床面積 178.86㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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