2021.06.07

空中庭園ウッドデッキを囲むLDK

家族だけの時間を過ごせる開放的なウッドデッキ

LDKの延長にある庭、
広いウッドデッキという選択

 
「広々としたウッドデッキを見ながら過ごすほうが心地よくて、この家に暮らすようになってから、テレビをほとんど見なくなりました」とその変化を語る、住み手であり設計者であるSさん。敷地に対してかなりの面積を占める広いウッドデッキはリビングを拡張したような空間だ。入居当時テレビを向いていたソファは位置も90度回転させ、今はテレビ画面ではなくウッドデッキに向けている。「リーン・ロゼのソファは背もたれの部分を自由に置き換えられるので、夜、映画を観るときにはソファベッドのように寝そべっています」とSさん。ウッドデッキからの風が通り抜け、常に新鮮な空気を取り込めるLDKとなった。
Sさんは設計施工を手掛けたicocochi 渋沢テクノ建設の建築士として、多くの住宅を手掛けてきたが、知識と経験豊富ゆえの悩みも。「今までの経験から、自邸を建てるならぜひ取り入れたいというプランが山ほどあって、それを集約していくのが大変でしたね」とSさんは振り返る。今までにも限られた空間をいかに広々と見せるかが、住宅を建てる際の課題だった。S邸では廊下を北側へ極力コンパクトに収め、敷地に対してかなりの面積を占めるウッドデッキを大胆に配置。コンパクトな部分に対し、思い切り広く取りたいスペースは十分に取り、メリハリを出した。広いLDKは、昼は生まれたばかりの双子のお子さんのためのスペースで、夜はちょっとした作業も進められるオフィスなど多機能な場となった。「住宅密集地なので、いかにプライバシーを守りつつ、採光を確保し、庭としての空間をつくりだすかが課題でした。高さ1.8mの外壁でウッドデッキを囲むことで外部からの視界を気にせずに、家族だけで過ごせる空間になりました」とSさん。
 

収納や色調もメリハリ重視
クリーンな空間に変化をもたらす

 
空間を有効に使えているのは、造作家具の効果も大きい。「壁面を利用した書棚には、ギャラリーのような機能をもたせました」とSさん。棚の下に造作したカウンターデスクは、お子さん2人が将来並んで勉強ができるよう、ゆとりをもたせた。収納はW.I.C.に集約し、収納面でも“見せると隠す”のメリハリを大事にしている。
キッチンは栄養士として活躍される奥さまがコーディネート。機能性を考え、パナソニックのLクラスのシステムキッチンに。Sさんは、最初、天板が黒という奥さまの提案に驚いたというが、「白が基調の空間で、キッチンの黒が引き締めてくれて結果オーライでしたね」と笑う。
 

クリーンな空間を快適にする
機能性と温かみのある装飾

 
さらに「この家を設計する際に重視したのはまず気密性。窓を極力、掃き出し窓や引き違い窓にしないで、ドアや縦すべりなど、気密性の高いものを優先しました」とSさん。必要に応じて換気をし、大開口でも室内の温度を快適に保てる機能的な住まいとなった。内装でこだわったのは照明。LDKは間接照明をメインにして、天井は極力ダウンライトが目立たないように。「シンプルで白をベースにしたicocochiのイメージを残しつつ、どこか、ビンテージな雰囲気も似合う空間にしたかった」という。床に粗さのあるオーク材を選び、風合いのある素材の建具を造作している。
機能性とぬくもりを感じる素材や仕上げで、ウッドデッキに面したLDKはさらに居心地のよい場所となった。
 

取材・文/間庭典子

S邸

設計施工 icocochi 渋沢テクノ建設 所在地 群馬県前橋市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 144.59㎡
延床面積 129.66㎡ 構法 木造SE構法

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