趣味と住空間を自然にリンクさせた平屋
奥に大きなパントリーが続くキッチン。冷蔵庫もパントリー内に置いた。
キッチンやダイニングテーブル、チェアや照明もすべてTIMBER YARDでそろえた。
リビングの天井高は3.6mあり開放感にあふれている。床はオーク。壁に沿ってローボードを造作。ナチュラルな雰囲気のインテリアに合わせモルタルで仕上げた。天然木のウッドデッキが室内からフラットに続き内と外が1つにつながる。
設計担当の梶ヶ谷さんが北欧の建築家、アルヴァ・アアルトのカレ邸をイメージしてデザインしたという片流れの屋根の外観。緩い傾斜のラインが美しい。
ウッドデッキの一角を一段下げ、コンクリートの土間にしてバーベキューコーナーに。下げた部分はベンチとしても使える。
1.海から戻って車を降りたらすぐにシャワーを浴びることができる。そのまま玄関には回らずに浴室へと直行する。/2.庭側に設けた浴室の入口。ウェットスーツを陰干しできるようにバーを付けた。外に続くドアなので施錠できるが鍵はダイヤル式にして、鍵を携帯しなくてもいいようにしている。浴室はランドリースペースに続く。
リビングには煙突が不要なエタノール暖炉を設けた。造作のローボードと一体にしてすっきりと納めている。テレビは置かずにプロジェクターで壁に投映するスタイルにしている。
玄関を挟んでLDKと反対側に設けた子供室。将来は2つの個室にできるが今は広く使っている。
3.ダイニングの後ろにあるご主人の書斎兼トレーニングルーム。吹き抜けにしてロフトを設けた。固定階段で上り下りするようにしているので使い勝手がよい。/4.玄関は砂が落ちたり水で濡れることも考え、土間だけでなく廊下部分もモルタルで仕上げた。スタイリッシュなデザインのフロスのブラケット照明がゲストを迎える。
ウッドデッキは正面に森が広がる位置に配置。部屋のどこからでも緑が眺められ、夜は星空を楽しむ。
浴室の奥には、広いランドリースペースが。洗面カウンターはミーレの洗濯機と乾燥機をビルトインして造作し、すっきりとした空間に仕上げた。ハイサイドライトは大きめにして朝日を取り込む。
3m近いロングタイプのサーフボードも取り回しがしやすいようにゆとりのある玄関ホール。右のドアでゲストルームへ。
どの部屋も庭が近い平屋で豊かな自然を満喫しながら暮らす
青空に映える白い外壁と、緩い勾配で大屋根を葺き下ろした外観が美しいM邸。海と豊かな自然を楽しむサーファーズハウスだ。家族とともにオーストラリアに滞在し、6年間勤務を続けていたMさん。帰国が決まってまず考えたのが、日本での住まいのことだった。出発時は1人だった子供も2人に増えている。都心の勤務先の近くに新たに家を構えるとすれば、コンパクトな家にしかならないのは目に見えていた。自然に恵まれた土地で伸び伸びと暮らしたいと考え「勤務先まで特急で1時間以内ならOK」と候補エリアを広げた。間もなく千葉県に、海が近く山も連なる理想的な街を見つけ、試しに1年間、アパートを借りて住んだ。その結論は、あらゆる点で「この街はいい!」というもの。そして本格的に土地探しを始めた。
建築の依頼先は、趣味のサーフィン仲間が実際に建てて「とてもよかったよ」と教えてくれたTIMBER YARDに決めていた。土地探しも手伝ってもらったが、なかなか条件に合うものが見つからない。しかしある日、奥さまが暑い夏の日差しのなかを歩いて探し当てた候補地が素晴らしかった。駅に近く、しかも海までも2㎞ほどの距離。広さも十分で、すぐ西側には優しい表情の山もあり、豊かな自然に囲まれている。
早速、土地を手に入れたMさんとTIMBER YARDの本格的な家づくりがスタートした。夫妻の希望はゆとりのあるLDKを中心とした平屋であること。海から戻ったときのために外でシャワーを浴びて浴室に直行できること。広いパントリーが続くキッチンや、友人を招いてバーベキューパーティが楽しめることなども諦めたくない条件だった。
設計を担当したTIMBER YARDの梶ヶ谷智之さんは、ウッドデッキをL字型に囲むシンプルで開放感あふれる平屋を計画。耐震に優れ、多くの梁や柱で補強する必要がないため設計の自由度も高まるSE構法の特徴を最大限に生かしてリビング・ダイニングは天井高3.6m、奥行き8.6mの大空間とした。また、庭の建物寄りの一角に要望だったアウトドアのシャワーを設け、浴室に直行できる動線を用意。浴室の入口が庭側に設けられることになるが、格子の壁を立ちあげてさりげなく隠してプライバシーも確保、その内側にはウェットスーツなどが陰干しできるようにした。さらにウッドデッキの一角をコンクリートの土間にしてバーベキューを楽しむテラスにしている。「テラスはウッドデッキでリビングやダイニングとつながるので室内からの距離が近く、大勢で集まっても室内外のいろいろな場所に分かれながら一体となって楽しんでいただけます」と梶ヶ谷さん。
他方、TIMBER YARDのインテリアコーディネーター西田七海さんが設計と並行して、家具や照明の提案を進めていった。TIMBER YARDは北欧の著名なブランドの家具や照明、テキスタイル、さらにミーレの住宅設備機器を代理店として扱っており、インテリアの提案も同時に行うのが特徴だ。M邸でも「長く使えるシンプルで上質なものに囲まれて暮らす」という夫妻のライフスタイルに合わせ、白とグレーに明るい木の色を合わせた北欧テイストのインテリアを提案し、家具も一緒に選んでいった。
「外観も間取りも内装も、すべてとても気に入っています。何げない毎日の生活そのものが楽しい」とMさん夫妻。伸びやかな空間でライフスタイルの可能性も広がる、理想の平屋になった。
取材・文/酒井 新
M邸
設計施工 | TIMBER YARD | 所在地 | 千葉県長生郡 |
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家族構成 | 夫婦+子供2人 | 敷地面積 | 493.02㎡ |
延床面積 | 131.76㎡ | 構法 | 木造SE構法 |