中庭を囲む未来系2世帯住宅




W・U邸
中庭を囲む
未来系2世帯住宅
自由自在に変化し
家族とともに進化し続ける家
未来系2世帯住宅
家族とともに進化し続ける家
駅から近い住宅密集地にあり、敷地面積は約33坪。玄関の扉を開くとプライバシーが守られている外観からは想像できないほどの、気持ちのいい空間が広がる。中庭から多くの光と風を取り込んだ、明るく開放的な2世帯住宅だ。
約4.5㎡の中庭をロの字型に取り囲む間取りで、一階に親世帯が、娘さん夫婦とお孫さんが2階、3階に住む。どのフロアにいてもお互いの気配を感じられる設計だ。「20年前に家を建てたときには、その時の家族構成だけに意識が向き、それぞれのライフスタイルが変わっていくことまで想像できませんでした」とお母さま。そのため、新築当時は完璧でも、その後、さまざまな変化に対応できず、徐々に違和感が生じてきた。それを教訓として先を見据え、2度目の今回は家族とともに進化していく住まいを求め、SE構法にたどり着いた。木造ではあるが、耐力壁は外壁や階段周りのみなので、部屋を仕切る、広げるなどの改築も自在なことが決め手となった。1階の親世帯ご夫婦それぞれのプライベートルームも、木製キャビネットを境にしており、思いついたらすぐに一つの部屋に広げられる。
中庭やテラスは外界とのつなぎ役
季節や時間の流れを感じるきっかけに
白の大型タイルが目に爽やかな親世帯は「家にいることが楽しくなる家」がテーマ。玄関扉を開けると、赤の扉とグリーンが目に入る軽やかな空間だ。床と同素材の手すりを設置するなど、バリアフリーによる安心感も重視した。
2、3階はチーク材の床や落ち着いた色調の造作の木製家具でコーディネイト。「大学生の孫息子を含め、外で活動する時間が多い現役世代なので、家ではくつろげることが大切なのでしょうね」とお母さま。キッチンは細かい収納も住み手のスタイルに合わせて指定できるシステム「エクレア」でオーダーし、快適さと機能性を追求した。
お互いの世帯がまったく干渉せず、独自に決めたというインテリア。色調は微妙に違うが木材の風合いを生かし、自然に調和している。SE構法のメリットである柱や壁にさえぎられない広い開口部は、外と内、2世帯のフロアをつなぐ橋渡しになっている。
中庭以外にも、2階リビングの小さなデッキスペースや趣味の釣り道具を手入れするためのバルコニーなど、テラスが多いのも特徴。小窓が点在しているため風通しがよく、真夏でも朝は冷房が必要ないほど快適だという。設計を担当した山口さんは語る。「昔はのれんがあって縁側があって、家の外と内の境界はあいまいでした。ところが現在は外と断絶した家が多い。中庭やテラスが中と外をつなぐ役目を果たし、季節や気候、時間の移り変わりなどに気づくきっかけにもなります」。
チームとしての結束力が生む
絶対的な信頼と満足で完成した家
満足度の高い住まいが実現した理由は、施工会社や建築士との密なコミュニケーションにある。大手メーカーに依頼した最初の建て替え時は、会社としての安心感はあるものの、担当者が頻繁に変わるなど個人としての関係が希薄だった。今回お願いしたスペースワーク建築計画は、年間に扱う物件を25棟以内に限定。可能な限りお施主さんのところまで足を運び、ミーティングを重ねている。「山口さんには納得できるまで説明していただき、一緒に問題に向き合いました。現場監督の方は今でも立ち寄ってくれ、もう一人の息子のように頼っているんですよ」とお母さまは笑顔で語る。
家族をゆるやかにつなぐ新しい2世帯住宅の距離感。家という器をつくるだけではなく家族が集う場を築く。そんな志を感じる「進化し続ける家」だ。
取材・文 間庭 典子
W・U邸
設計 | 山口辰実 | 施工 | 株式会社参創ハウテック |
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所在地 | 東京都北区 | ||
家族構成 | 親世帯・ご夫婦、子世帯・ご夫婦+大学生の息子 | ||
敷地面積 | 110.39㎡ | 延床面積 | 164.27㎡ |