2023.08.21

異素材がリズムを生むシンプルモダンな大空間

静謐ささえ漂う、無駄なくシャープな大空間

見せる空間を意識しつつ
効率よく日常を支える邸宅

通り過ぎる人々が思わず振り返りそうになるほど、モダンを極めたS邸の外観。交通量の多い県道沿いにあるため、視線を遮る高い塀で囲まれつつも、スタイリッシュな外観に仕上げた。邸宅そのものが巨大なモニュメントかのように大胆で、台形を重ねたようなデザイン。「車寄せはガレージとしても機能し、雨に濡れない場所にバイクや自転車も駐輪できます」とニケンハウジングの丹羽八州男社長は語る。玄関扉もオリジナリティあふれるマットなゴールド。「実はこのドアは既製品に金属塗装で風合いを出しています。ドアとしての機能面も維持し、かつコストも抑えられる秘策です」と丹羽社長は笑う。このマットな光がS邸をさらに上質に見せている。
玄関扉を開くと、目の前には存在感のある青ドラセナの大きな鉢が。この中庭を中心として回廊する間取りになっており、室内全体を明るく快適に保っている。中庭からのヌケでより広く開放的に感じさせる視覚効果も生まれた。また、中庭を見ながら進む回廊は家事効率も考慮されている。「見せる空間を意識しながらも、玄関からクローゼット、ランドリー、浴室へワンラインでつなげて、日々の家事をより快適にする動線にしています」と丹羽社長。
圧巻なのはLDKの大空間。約20帖を誇る吹き抜けがあり、リビングとダイニングの天井高は5.3m。キッチンと和室の天井との高低差で、さらに高さが際立つ。「生活感が皆無な空間を目指しました」とSさんは語る。

モノトーンでミニマルにまとめ
研ぎ澄まされたLDKが実現

白と黒を基調としたモノトーンの辛口な配色。キッチンの壁やモダンにアレンジされたシャンデリアなど、色ではなく光沢でラグジュアリーさを表現した。階段やダイニングテーブル、窓枠などは硬質な黒で空間全体を引き締め、ソファやラグはソフトな淡いグレーで中和させている。
LDKには構造上必要な梁以外は無駄なものは一切なく、テラスと一体化した空間は先まで見渡せる。「高い耐震性を約束しつつ、ここまで大胆な大空間を可能にするのは、一棟一棟、構造計算をしている木造SE構法ならではです」と丹羽社長。「ここまでの広さである以上、冬でも室内の温度を快適に保てるかは一番の懸念でした」とSさんは振り返る。

端正なデザインと日常の快適性を
両立させる絶妙なバランス感覚

ニケンハウジングが提案する住まいはデザインも機能も妥協しない。大空間、大開口でも年中快適に過ごせるよう、断熱材の量や窓の位置を緻密に計算し、太陽の熱を効果的に取り入れるパッシブデザインを採用。そのためLDKを大きく包むような庭側の庇は、夏は日差しを遮断し、冬は室内の奥まで太陽光を取り込むための装置だ。「想像以上に冬も暖かく、快適です」とSさん。
端正な空間で快適に暮らすためには、実績に基づくテクニックが頼りになる。約30㎡のテラスのタイルは、リビングや玄関と同じ柄を選んで室内の延長のような中間領域に。「外では色が明るく見えることを考慮して、室内よりワントーン濃い色を選んでいます」と丹羽社長。S邸のような隙のないプランが、快適性とデザイン性の高さの両立をさらなる高みへと引き上げている。

取材・文/間庭典子

S邸
設計施工 ニケンハウジング 所在地 愛知県大府市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 487.31㎡
延床面積 197.40㎡ 構法 木造SE構法

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