2022.11.07

角地のパフォーマンスを最大限に引き出した都心の家

天井高4.2mを実現した光あふれるリビング

角地のメリットを最大限に生かし
デメリットを最小限にする設計

A邸が立つのは東京都山手線内の都心でありながら閑静な住宅街。住宅街用途地域に関しても厳しい条件だが、設計の妙により、角地緩和、準防火地域の準耐火建築物の緩和を図り、土地の持つパフォーマンスを最大限に生かした。「このエリアの土地を探し続け、日当たりのいい角地に出合ったときはうれしかったのですが、規制がこんなに厳しいことは想定外でした」とAさん。隣接する2辺以上が道路に接した角地は日当たりも風通しもよく、快適な環境が約束される反面、周辺の採光を確保するための斜線制限などで、建物の高さ制限など、さまざまな制約がある場合も。例えば角地は建ぺい率が10%緩和されるが、道路の交差部の見通しをよくするために角部分には建てられない隅切りなどの制限があった。さらに長期優良住宅に対して、景観条例による「緑化」が義務付けられているエリアのため環境を守ることも必須。3階建ては不可な条件だったなど、自由な空間が取れないというジレンマが生じたという。「大手住宅メーカーにも相談したのですが、不可能なことが多すぎて、想像以上に厳しい制限に弱気になったこともありました」と奥さま。そんな折、SE構法で家を建てた友人がきっかけでその構法を知り、インターネットを検索。そこで見付けたKURASUに相談した。「驚きました。今まで『できない』と言われて諦めていたことが、すべて『できますよ』という答えだったので(笑)」と振り返る。実際、“NO(ノー)と言わない工務店”を目指しているというKURASU。都心の限られた土地でも、伸び伸びとした空間づくりを得意としており、角地緩和、準防火地域の準耐火建築物の緩和をフルに生かすプランを提案。「SE構法だからこそ実現した、角地のパフォーマンスを最大限に引き出したスマートハウスです」と設計を担当した小針美玲社長。斜線構造の工夫もたくさん盛り込みつつも、耐震等級3を取得し、安全面でも十分に配慮した。

採光とプライバシーを確保する
L字型の開放的なLDK

都心ならではのプライバシーの確保もA邸の課題だった。「目の前には大きなマンションが立っているので、距離感も考慮しつつ、2階全体を大空間のLDKとしました」と小針社長は語る。南西の角をルーフバルコニーとし、そこを囲むようなL字型のLDKとした。「キッチンからバルコニー越しに向かいの桜が見え、ダイニングでお花見を楽しみました」と奥さま。景観条例の厳しい地域ゆえ、各開口から借景が楽しめ、天窓や高窓、室内窓などから十分な採光を確保。天井の形状を工夫することで斜線制限の融和に成功した。壁面の階段状の棚から続くロフト階や奥のスタディコーナーなど、心地よい居場所も設けられている。

2階が広いオーバーハングで
敷地内に駐車することも可能に

駐車場のためだけに敷地を割り当てるのはプランに制限が出てしまう。「SE構法では2階をせり出す設計も可能なので、2カ所をオーバーハングにして駐車スペースを確保しました」と小針社長。自転車2台も屋根の下に置ける。さらにリビングの壁面はロフトへの階段を兼ねた収納棚を動線上に配し、洗面所も設置。このような空間を最大限に生かす工夫が各所に。「家造りは一世一代の大仕事。家造りは楽しい!と思っていただくためにも、NOとは言いません!」と小針社長。デザイン力のある工務店によって、理想の家が実現した。

取材・文/間庭典子

A邸
設計施工 KURASU 所在地 東京都
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 87.37㎡
延床面積 113.62㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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