2024.07.22

舞台のようなキッチンで食と音楽が共演する家

プライベートダイニングに集い、音楽に酔いしれる完璧な週末

I邸は食と音楽を楽しむための住まい。シェフ顔負けの腕前とセンスをもつIさんは、フランス料理のフルコースを自ら調理し、洗練されたテーブルコーディネートでゲストをもてなす。もはや厨房と呼ぶべきプロ仕様の調理器具をそろえたキッチンで、独学で習得した料理を究めることを趣味としている。奥さまはセミプロレベルの音楽家。玄関部分を拡張する形でプランニングされた練習場兼音楽ホールでは、グランドピアノやヴィオラを演奏し、ゲストとセッションを楽しむこともあるそう。玄関ホールとLDKが自然につながる1階は伸びやかで、よちよち歩きを始めたばかりの息子さんも上質な食と音楽に囲まれ、健やかに育っている。ベンチにもなる階段下のコーナーには、ベビーサイズのグランドピアノを設置。自然に音楽と触れ合える環境が整い、愛鳥も音楽に合わせてさえずることも。そんな心豊かな暮らしが日常だ。
 
 
家づくりは敷地が南北に長いため、間取りの自由度が限られるというチャレンジングな条件付きのスタートだった。さらに時間によっては隣接する東西の住居が光を遮り、日陰になってしまう。しかし敷地の前方、南側からは1日を通して日当たりがよいことが日照シミュレーションによって実証できた。そこで外壁後退ラインを守りつつ、北に住居、南を駐車スペースとし、可能な限り直射日光を得られる配置計画に。「両隣の家の影を避けつつ、南面に集熱窓を取るというプランです。南側ほぼ全面を開口部とし、吹き抜けから住まい全体に自然光が渡ることを目指しました」とタイコーアーキテクト設計担当の中瀬由子さん。下がり天井に採用したウォルナット素材など、シックな色みや素材感を組み合わせ、ラグジュアリーに仕上げた。
 
 
「気になる家具や照明があれば実物をショールームまで足を運んで選び、それに合わせた空間のデザインをお願いしました。ダイニングのペンダントライトとして選んだトム・ディクソンのメルトもその1つです。細かい部分までこだわりたくて、中瀬さんやインテリアコーディネーターの中野さんには親身に相談に乗っていただきました」と奥さま。
 
 
「家づくりを考え始めた頃、YouTubeなどで情報収集し、『性能』が大事ということを学びました。当時はそれだけに固執して、超高性能住宅を手掛ける工務店を検討していましたが、デザインに納得できず。そこで高性能かつおしゃれな家を建てられるバランス感覚に優れた会社をリサーチするなかで、『重量木骨の家』のサイトに出合いました」とIさんは振り返る。動画で本格的なフレンチ料理の技を身につけたというIさん。家づくりに対しても持ち前のその探求心でSE構法にも詳しくなり、自分たちのテイストに近いと感じたタイコーアーキテクトを訪問。さらなる情報を集めた。
 
 
「『スケッチアップ』でつくられた3Dモデルのおかげで具体的なイメージがつかめ、自分たちの要望を見直すことができました。明るく開放的な玄関ホールとその先につながるLDKの空間が実現でき、とても満足しています」とIさんは語る。「2人で真剣に家や暮らし方について語り合い、考えるのは大変でしたが、とても充実していました。あのときに一生懸命に悩んだからこそ、今の快適な暮らしがあると思います」と奥さま。
 
 
日中は常に明るく、夜は間接照明でムードが増す食卓はゲストも感動する究極のプライベートダイニング。理想の空間を得たことで毎週末が“パーフェクトウィークエンド”となり、家で過ごす休日がさらに楽しみになった。
 
 
取材・文/間庭典子

I邸
設計施工 タイコーアーキテクト 所在地 大阪府堺市
家族構成 夫婦+子供1人 敷地面積 220.45㎡
延床面積 142.77㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

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