2023.07.24

硬質な素材を打ち出した都会の邸宅

硬質な素材を重ねたクール&ラグジュアリーな空間が完成

ミニマムな空間を格上げする
上質でハードなマテリアル

閑静な住宅街に立つY邸。玄関扉を開くとギャラリーやショールームと見紛うほど洗練された玄関ホールが広がる。続くリビングも同素材の石を張った壁、大判タイルのフロアの黒で統一したクールな空間。「生活感のないホテルライクなLDKが理想でした」とYさんは語る。1階は天井高3m、壁面は11mの石張り。全長4.8mのテレビボードにより横幅が強調され、研ぎ澄まされた空間に奥行きと広がりが生まれた。リビングのソファはカッシーナのBEAM。リビングとのバランスを考えるとやや大きめだが、そのサイズ感がホテルのラウンジのような非日常感を演出。夜はキャンドルを灯すと、さらにその雰囲気が高まる。
リビングダイニングも黒を基調にコーディネート。研ぎ澄まされた端正な空間は、ノイズを排除するための緻密な計算がなされている結果と言える。ダイニングテーブルと連続する4.5mのキッチンカウンターは、ダイニングとキッチンの床に段差をつけることで、連続したカウンターでも快適なように調整。実は冷蔵庫の背面も、接している部分のみ数センチ奥に凹ませ、キッチンのキャビネットと面が揃うよう調整をしているという。暖炉を設置した壁はセラミックのネオリスを使って継ぎ目のない1枚板に。室内全体を通して不自然な継ぎ目などを感じないよう、細部にまで目の行き届いたデザインや施工となった。

構造とデザインの力で
限られた空間を有効かつ快適に

また、家族それぞれのプライベートな部屋を配した2階は白い壁に中庭からの光が反射し、大らかで軽やかなスペース。階段周りの動線をゆったりとって、好きなアートを床に並べるなど、1階とは異なるギャラリー空間となっている。ロフト階には約7帖の小屋裏収納を確保。LDKの天井高3mを実現するためにスキップフロアを設けるなど、設計とデザイン力によって空間が有効利用されている。「外部空間の中庭に向けた2面の大開口と壁や柱のないLDKでありつつ、耐震等級3が実現したのはSE構法ならではです」とテラジマアーキテクツの設計士、深澤彰司さんは語る。

室内全体に光と風を取り込み
外部と緩やかにつなぐ中庭

「指定建蔽率、容積率がそれぞれ40%、80%と厳しい条件だったのですが、外部空間をLDKに取り込むことで大きな床面積を体感できるようにしています」と深澤さん。中庭を囲むようなL字型のLDKは室内へ光と風を運ぶ。テラスを介して玄関先の気配も感じられ、静かな時間を約束されながらも、外部へ緩やかにつながる安心感も得られている。
このY邸を手掛けたテラジマアーキテクツは都市部のラグジュアリーな邸宅を得意とし、ファサードのデザインや機能にもこだわりがある。「この地域は建物の形状に厳しい制限があり、シャッターゲートにもSE構法を採用することでワイドスパン化しました」と語るのは、同じく設計担当の伊澤杉人さん。落ち着いた街並みになじみつつも、モダンが際立つ印象的なファサードとなった。
厳しい条件をスマートに解決し、リアルな生活に寄り添いつつもクール&ラグジュアリーな非日常を感じるY邸。この伸びやかな大空間を可能にしたSE構法と、設計施工の総合力によって、唯一無二の個性が魅力となる住宅が生まれた。

取材・文/間庭典子

Y邸
設計施工 テラジマアーキテクツ 所在地 東京都杉並区
家族構成 夫婦+子供2人+猫 敷地面積 188.50㎡
延床面積 150.70㎡ 構法 木造SE構法

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