2022.08.22

カフェスペースから光を取り込むL字型のLDK

南東から朝の光が注ぐ、朗らかなリビング空間

光と風を取り込む装置として
機能しているタイルテラス

S邸の南東に配したのはタイルテラスのカフェスペース。バーベキューで盛り上がったり、子供たちがプールで遊べるゆったりした空間である。設計を担当したMstyle houseの酒井良子さんは、このテラスをL字で囲むLDKのプランをSさんに提案。「便利な立地で、住宅が隣接したエリアでもあるので、お互いの視線が交錯しないよう、約3mの自立壁で囲みました」と酒井さん。テラスの側溝の目隠しとして、小石を自立壁の周囲に敷き詰めた。そして酒井さんは「プライバシーを守りつつも、大きな吹き抜けと開放感のある開口は確保して、耐震や気密性など性能も重視したいというご要望でしたので、木造でも一棟一棟、構造計算が義務付けられ、強度を数値化できるSE構法をおすすめしました」と語る。カフェスペースへの大開口とリビング全体の吹き抜けから光と風が入り、換気にも優れた心地よいLDKとなった。また、吹き抜けのある南側には高い位置に窓を設け、採光を確保している。

大空間とそれぞれの居場所
そのメリハリで空間を有効活用

贅沢な46.2㎡のカフェスペースを含め、S邸のほとんどを占めるのはLDK。寝室やW.I.C.などのプライベートな場所は2階の奥にまとめられている。メリハリを利かせた思い切りのいい空間の使い方といえる。吹き抜けを囲むような廊下の一部に設けた書棚のあるファミリースペースや、階段下のワークスぺースなど、LDKに接した家族共有の空間内にそれぞれが心地よく過ごせる居場所を分散させている。
リビングには存在感のあるソファを置かずに、あえて軽やかな天童木工のパーソナルチェアを選び、のびのびとしたL字型LDKをさらに広く見せている。玄関を入ってすぐの正面の仕切りはあえて透明のガラス戸を造作。選び抜かれた家具が引き立つLDKが実現した。酒井さんは「S邸では内装や家具も細かく提案させていただきましたが、素材や色を決める際、『僕たちが決めるとバランスが崩れて後悔する。今までの事例を見て信用していますので、酒井さんが決めてください』と全面的に信頼をしていただけて、スムーズに設計、工事が進められました」と振り返る。部分的にシャープな黒のスチールやグレーのタイル仕上げにするなど、軽やかさと重厚感の対比も意識した。トイレの壁に選んだマスタードイエローはS邸のアクセントカラーとし、同系色の小物も各所に配した。シンプルな空間に映えるグリーンも目を和ませ、全体の調和が取れている。
加えて、カフェスペースとして活用しているテラスがもたらすのは、心が安らぐデザインだけではない。ランドリーからそのままアクセスできる家事動線としても機能し、洗濯ものをストレスなく運べるようになっている。LDKは段差がなく、ロボット掃除機が自在に稼働できる。床はタフでメンテナンスがしやすい複合フローリングを選んだ。キッチン収納は、日常的によく使う食器や調理器具を事前に相談して設計している。

ライフスタイルの変化に合わせて
多機能な住まいを提案

「ホテルや店舗と違い、住宅は365日、24時間快適であるべき空間。デザイン性と機能の両立は一番の課題としています」と酒井さん。最近は、家での過ごし方の多様化に伴い、住み手からの要望も多目的化しているという。「まずはどんな生活を目指すのか、自由に夢を語ってください」。

取材・文/間庭典子

S邸
設計施工 Mstyle house 所在地 長野県長野市
家族構成 夫婦+子供1人 敷地面積 221.72 ㎡
延床面積 119.66 ㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事

MLWELCOME

MLWELCOMEは『モダンリビング』誌と「重量木骨の家」とのコラボレーションで特別編集されたムック本として2015年10月に発行されました。厳選された木造住宅の実例をウェブサイトでもご覧ください。