2024.09.09

猫4匹と共生するカフェ感覚の日だまりの家

夫婦と猫4匹が自由に暮らす、家全体を1つの大きな箱に見立てた空間

北陸新幹線の佐久平駅から至近のM邸は、猫4匹と共に暮らす日だまりが心地よい家。それまでMさんご夫婦は都心のオフィスに通い、都内のマンションで生活していたものの、猫と自分たちにとってより幸福度が高い環境を考え、長野への移住を決意。今では週に1、2回は都内のオフィスに通いつつ、自宅で業務を続けるリモートワーク中心の働き方にシフトした。
 
 
設計は長野県を中心に多くの住宅や別荘建築を手掛けているMstyle houseに依頼。「お2人がどんな生活を望んでいるのか、日常でどんな時間を過ごされているのかは、ざっくばらんな雑談のなかからつかみました」とMstyle houseの酒井良子さんは振り返る。堅苦しい聞き取りではなく、楽しくお酒を飲んだり、お茶を飲んでくつろぐ時間を共に過ごし、語られる将来への希望や理想の暮らしなどの話題は、家づくりの大きなヒントになる。そんななかでご夫妻からは、自分たちが不在のときに猫たちが自由に活動できること。そして自宅で仕事をする際には互いの存在が気にならないよう程よく距離を保てることが最初の要望だった。
 
 
そこで生まれたのが「1つの大きな箱」という設計コンセプト。具体的には過度な装飾をせず、幾何学的な階段のデザインやグレーを基調にしたキッチンなど、あえて無機質なトーンでまとめた。LDKや玄関の照明をすべて間接照明やダウンライトにし、天井のフラットなラインを強調。床は複合フローリング材、軒下の外部からつながるレッドシダーの天井は無垢材を選び、造形ではなく素材感で柔らかさをプラス。陽光が心地よい住まいとなった。それを叶えたのは南向きに可能な限り大きな開口を設け、家全体の仕切りを最小限にした大きな箱のような空間だった。視覚で高さを実感できるように、サッシの上部を天井や軒下ぎりぎりに設置。室内のどこからでも空を見渡せるような、開放感あふれる家にした。その結果、外部と内部の境界線があいまいになり、どこで過ごしてもぬくもりを感じ、日なたぼっこをしているような穏やかな気持ちで過ごすことができる。
 
 
さらに一緒に料理をつくることを楽しむご夫妻がストレスなく調理ができるように、ゆったりとした幅の回遊式のキッチンを設計。時には外でBBQをしながら乾杯したり、夕暮れどきに1杯飲んで楽しむ…。そんな時間を愛するお2人が友達を招いたときに、それぞれ好きな場所でくつろいでも皆が一緒に過ごせて、それぞれがお気に入りの場所を見つけてリラックスできるコーナーを各所に設けた。「おいしい時間とは、単においしいものを食べることではないと思っています。そのシチュエーションが1人なのか、大人数なのか、お酒なのかコーヒーなのか。楽しみたいのか、静かに過ごしたいのか。心で感じるものがプラスされて本当の意味でのおいしい時間になり、そんなシーンに寄り添う間取りや照明を心掛けています」と酒井さんは語る。
 
 
2階の和室、フリースペース、ルーフバルコニー、吹き抜けに接した通路をひと続きとしてとらえた空間も空を感じられる心地よい「居場所」。さまざまな場所にそんな「居場所」があるのは猫たちにとっても幸福だ。「猫たちのことを意識して選んだのは、壁を傷ができてもすぐ張り替えられるビニルクロス材にしたことくらいなんです。自分たちが理想とする大空間を求めたら、猫たちにとっても快適な場所となりました」と奥さま。
 
 
視覚的にも、動線も、何にも邪魔されず、家族全員が自由にくつろげる住まいが完成した。
 
 
取材・文/間庭典子

M邸
設計施工 Mstyle house 所在地 長野県佐久市
家族構成 夫婦+猫4匹 敷地面積 253.55㎡
延床面積 125.26㎡ 構法 木造SE構法

この家を建てた工務店

MLWELCOMEの新着記事