中庭を介して親子が緩やかにつながる
SE構法ならではの4.6mの大開口でデッキにつながるダイニング。床にホワイトアッシュを採用した。キッチンに立ったときに向かいに見えるのは奥さまの実家。
モールテックスのキッチンと収納キャビネット、ダイニングテーブルはすべてオリジナル。ピットリビングを斜めにつなげたことでメリハリが生まれ変化が楽しい空間に。
床を一段下げたピットリビング。天井も下げて落ち着いた空間にした。正面は西向きなので開口部は最小限にとどめている。ブルーの壁は、家族全員でペンキを塗った。
1.ワークスペースへのアクセスはリビング側からも可能。穴蔵に入るようなアーチ型の入口にした。ご主人が個室として使っている。/2.雑誌のラックにしか見えない部分だが、実は扉になっていて階段の踊り場下にあるワークスペースに進むことができる。
デッキはくつろげる十分な広さを確保。外階段を上がれば2階のルーフテラスにつながる。この階段の袖壁がプライバシーを確保する役割も果たしている。
奥さまが仕事部屋にしている離れのような個室。LDKとは玄関を挟んでいるので独立性がある。設計提案で夫妻が最も気に入ったポイントでもあり、本棚や大きなカウンターテーブルも現場で製作したもので、子供と並んで勉強する場所にもなっている。
3.玄関正面は、庭へ視線が抜ける大きなガラス窓になっている。キャビネットは愛用していたテレビボードをリデザインして設えた。左には奥さまの仕事部屋。右に進めば手洗いコーナーを経てLDKへと続く。/4.玄関の曲線を描く上がり框が、この住まいにあふれる遊び心を象徴している。広い土間は愛犬の昼寝の場所としてもうってつけ。
2階の個室。1階のデッキから外階段を上がるとルーフテラスを通ってこの部屋にアプローチできる。
水回りは2階奥に確保した。明るくて気持ちがよい。洗面化粧台と作業カウンターはこのスペースに合わせて製作された。
木と塗り壁を組み合わせた個性的な外観が街並みの彩りとなっている。
外階段で1階のデッキと2階のテラスをつないだ回遊式のプラン
築50年になる奥さまの実家の建て替えを機に、敷地を2つに分けて親世帯と子世帯がそれぞれの住まいを新築することにしたKさん。ホームパーティが楽しめるオープンなキッチン、大型犬が暮らしやすいこと、夫妻それぞれのワークスペースといった希望があった。しかし夫妻がいちばん大切に考えていたのは「自分たちらしい、毎日ワクワクする家」にすることだった。
「実家が鉄筋コンクリート造で解体に手間がかかるとわかり、新しい家は木造でと考えました。そこで木造住宅をメインにしているハウスメーカー何社かに設計の相談をしたんです。でも出てきたのは規格品のようなプランで。さらにキッチンが一定のメーカーに決まっていたり、自由設計といっても、あらかじめ決められた標準仕様品のなかから選ぶというスタイルで楽しくなかった。こちらが合わせるのもイヤだなと思っていました」と奥さま。改めて依頼先を探しているときに、この雑誌『MLWELCOME』で目にしたのがミューズの家が設計施工した1軒の住宅だった。オリジナルのアイデアにあふれ、楽しそう!設計を頼んでみようと考えた。
実際、間もなく提案されたプランは、ハウスメーカーからは決して出てこないようなユニークなもので、期待していた「ワクワク」に満ちていたという。
「南隣が親世帯なのでプライバシーを気にする必要はありません。植栽で緩やかに区切るだけにして、アウトドアの暮らしが楽しめる広々としたウッドデッキを設けています」と設計を担当した藤本卓也さん。さらにこの中庭を心地よいものにしているのは、道路側からの視線を巧みに遮っていることだ。敷地は長方形だから、普通なら敷地をなぞるように四角い長方形の建物が立つところだが、このプランでは道路寄りの建物の一部が斜めになっている。道路側からの視線が遮られてプライバシーが確保された落ち着いた場所になった。しかもこの斜めの部分は玄関を挟んで1階のLDKから独立した離れのような空間に。在宅での仕事がメインの奥さまには、かっこうのワークスペースになった。上階は芝生が気持ちよいルーフテラスで、デッキから外階段でつながっている。
「離れのような部屋と外階段で上がるテラスがとても気に入りました。キッチンが収納も含めてイチからつくれたのも、とてもよかった。既製品を選ぶと家全体の雰囲気に合わないものになりがちです。でもカウンタートップの種類も仕上げの素材も色も収納のレイアウトも、すべて自由に考えることができたので、思いどおリのものになりました」と奥さま。また1階奥のリビングは床が一段下がり、天井も下げているので“こもり感”のある落ち着いた場所が実現している。さらに隣り合う階段下を利用して、隠し部屋のようなスペースを連続させており、こちらはご主人のワークスペースになった。
キッチンを囲んだり、ダイニングに座ったり、さらにピットリビングやウッドデッキに集まったり、デッキから上がった2階のテラスで風に吹かれたり…。K邸には家族や人が集う場所がたくさん用意されている。毎日の暮らしもホームパーティも楽しい家になった。「ソファや椅子以外にも、ベンチや腰掛けるのにちょうどよい段差がたくさんあるので、大勢が集まってもにぎやかに過ごせます。期待どおりの毎日ワクワクできる家になりました」
設計が家族に合った楽しい暮らしをデザインする。その可能性の大きさを教えくれる住まいだ。
取材・文/酒井 新
K邸
設計施工 | ミューズの家 | 所在地 | 東京都杉並区 |
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家族構成 | 夫婦+子供1人+犬1匹 | 敷地面積 | 196.18㎡ |
延床面積 | 130.49㎡ | 構法 | 木造SE構法 |