2024.02.26

中庭が光とプライバシーをもたらす都市の住まい

吹き抜けのLDKに続くテラス。開放感あふれる大空間が家族をつなぐ

2人で暮らし始めた1軒目の家が手狭になり、住まいを新築することにしたYさん。住環境や子供たちが楽しみに通う教室との距離などを考慮して取得した土地は、場所も広さも納得のいくもの。ただし間口に対して奥行きが深く、さらに3方を住宅に囲まれるという都市部ならではの敷地だった。
 
 
「条件はやや厳しいところがありましたが、周囲には公園も多くとても気に入った土地です。明るく開放的で、LDKを中心に家族がゆったりくつろげる住まいが希望でした」と夫妻。さらに安心で安全な住宅を求めて耐震等級3の確保は必須と考えていたことから、大空間と耐震性の高さが両立できるSE構法で建築することに決めた。インターネットや情報誌でSE構法を手掛け、敷地のあるエリアを施工地域としている工務店から好みに合いそうな3社をピックアップ、候補とした各社にプランの提案を求めた。その結果、出てきたものを見比べて、ぜひ家づくりを依頼したいと思ったのがテラジマアーキテクツだったという。
「事前にホームページなどを見て、都市部でプライバシーを守りながら明るく開放的な住まいづくりを進めていることや細部まで丁寧に美しいデザインを心掛けていることなどを知って気に入っていたのですが、提案されたプランは私たちの期待以上でした」と、テラジマアーキテクツに決定するまでの経緯をYさんは振り返る。
 
 
一般的に奥行きがある敷地の場合、建物は長方形になり、建物の中央は暗くなりがちだ。そこでY邸でテラジマアーキテクツが提案したのは、まず中央に吹き抜けとなった中庭を配置して住まい全体に光を導くプラン。中庭の一方は浴室をつなげ、浴槽に体を沈めながら窓越しに庭の緑が眺められるようにしている。また玄関からはこの中庭が正面に見えるようにして、ゲストの驚きを誘う演出装置とした。さらに家族の暮らしの中心となるLDKは、一部を吹き抜けにして静かな敷地奥に配置。高い壁で囲ったテラスをつなげ、窓の取り方も工夫することでプライバシーを確保している。たっぷりと光を取り込みながら、しかし外部からの視線はまったく気にならない。この伸びやかな大空間のなかにリビングやダイニング、キッチンが広がる。テラスを含めてさまざまなくつろぎの場が用意されたLDKは、家族の暮らしの中心にふさわしい。
 
 
さらにこの一体空間は、リビングの床だけを一段下げたり、壁の一部に縦長の細い溝が連続するリブ板を使うなど、楽しく、そして美しく演出されている。壁面すべてを収納にあてたオリジナルデザインのキッチンも落ち着いた色合いで、ベージュがかったレーのラグジュアリーな空間に溶け込んでいる。また、LDKのアクセントとして存在するスチールの階段は、夫妻が1階と2階をつなぐ機能だけでなく、空間を彩るオブジェとしても美しいものにしたいと考えていたもの。2人が丹念に収集した参考写真などを基にテラジマアーキテクツの設計担当者と打ち合わせや試作を重ね、イメージ通りの仕上がりを実現した。
 
 
「私の書斎もプライベートスペースから独立した形で上手に組み込んでもらいましたし、間取りはもちろん照明計画や細部のデザインにもとても満足しています。もっとこうすればよかった、と後悔するようなものは1つもありません」と語るYさん。夫妻がこの家のためにと選んだアートやオブジェなども適材適所にあしらわれた。プライバシーを確保しながら、光と風を満喫する都市の快適な暮らしが始まっている。
 
 
取材・文/酒井 新

Y邸
設計施工 テラジマアーキテクツ 所在地 神奈川県横浜市
家族構成 夫婦+子供2人 敷地面積 251.65㎡
延床面積 177.29㎡ 構法 木造SE構法

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