2023.05.08

伸びやかに広がる空間が心地よいくつろぎのスキップフロア

LDKライブラリー寝室の3層を縦にゾーニング

縦方向に奥行きを演出した
4層に重なる都心の邸宅

都心とは思えないほどの伸びやかさを感じるS邸。空間を有効利用し、地上階には2台の車を駐車できるビルトインガレージが。海にも近く、大きな河川に挟まれた地域だけに、災害時を考慮して、居住エリアとなる1階は地上よりも1.6m高い位置に設定した。LDKはテラスとつながり、大開口と窓際の吹き抜けから採光。ガレージの真上はスキップフロアとし、家族が集まるライブラリーや子供室を配置。吹き抜けやLDKと接した側にはベンチにもなる棚を造作した。リビングからライブラリーを見上げた広がりがヌケと奥行きを生み出している。
その上の2階となるフロアはトレーニングやヨガのスタジオ、お嬢さまのバレエのレッスンなどにも活用できるフリースペース。夜はスクリーンを下ろしてプライベートシアターに。そして奥には、落ち着きのあるシックな寝室。室内窓を設けて、LDKや向かいのスキップフロアと緩やかにつながる。子供室との間には段差があり、フリースペースを介しているため、落ち着いた時間を過ごせる間取りとなった。そしてフリースペースの東側はサウナも併設した浴室。外気を運ぶスカイデッキもあり、半露天風呂感覚でくつろげるホテルライクなバスルーム。約57坪の敷地面積いっぱいに建てた都会の邸宅だが、縦方向を効率よく生かし、テラスやスカイデッキで外へと開くことで、実際の面積以上に広さを感じる伸びやかな邸宅が実現した。

家具セレクトの妙により
洗練されたギャラリー空間に

「S邸のコンセプトは『都市の中の静謐な箱』です」と空間トータルコーディネートを担当したTIMBER YARDの行木朋子さん。端正な箱を積み重ねた空間をアーティスティックな名作家具を配することで、洗練された住まいに仕上げた。設計施工を手掛けたTIMBER YARDは、ショールームに併設したインテリアショップとカフェを経営。家具やアート、食器までをフルコーディネートするような感覚で、専任のインテリアコーディネーターがアドバイスをしてくれる。フリッツ・ハンセンやルイス・ポールセンなどのデザイナー家具を取り扱っており、プロフェッショナルな視点で、幅広く空間づくりをサポート。ちなみにS邸の表札は、TIMBER YARDのロゴを手掛けたデザインユニットKIGIが担当している。

デザイン性よりもさらに重視した
実用性で日常を快適に

S邸の日常を快適にするのはデザインだけではない。機能性に優れた実用性、そして家事や毎日の行動にストレスを生まない動線にも配慮された。例えば玄関からそのまま開放的なLDKが視界に広がるゲスト用の動線とは別に、洗面台からパントリー、キッチンへと抜ける裏動線も並列している。また、柱や壁に頼らずとも耐震性を確実にするSE構法により、広い動線を確保でき、家具の配置も自在に。外装断熱材、エコボードの効果で静粛性、調湿性も高まった。最近、新しい家族が誕生したSさんご一家。「可動式のベビーベッドをどこでも置けるゆとりがあるので、家事の途中でも、リビングに集まるときにも、家族の誰かが見守れて安心です」と奥さま。4人の子育てに並走してくれる機能的な家。優しさに満ちた空間が、ゆとりある日常生活を紡いでいる。

取材・文/間庭典子

S邸
設計施工 TIMBER YARD 所在地 東京都江戸川区
家族構成 夫婦+子供4人 敷地面積 186.49㎡
延床面積 227.71㎡ 構法 木造SE構法

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