
家は、自分の代だけではなく子供の代にも引き継がれていくことも多いものです。次の代に引き継ぐまでの間、新しい生命の誕生もあれば、どなたかの老化・介護というシーンが巡ってくるのは自然なことです。
このことを考えると、誰もが使いやすい「バリアフリーの家」はとても便利です。高齢者になってからも住みやすい家は、誰にとっても使いやすい家です。では、バリアフリーの家はどうやって作ればよいのでしょうか。家を建てるときから意識しておくとよいことをご説明します。
バリアフリーの注文住宅で高齢者になっても住みやすい7つのポイント解説のインデックス
1.高齢者になってからも住みやすい「バリアフリーの家」とは?
バリアフリーとは、高齢者や障がい者などが生活するうえで支障となるものを取り除くことを指します。一番わかりやすい例としては、部屋と部屋、部屋と廊下の間に段差がないことでしょうか。杖や車椅子を使って室内を移動するとき、ほんの数センチの段差であっても大きなストレスを生みます。
バリアフリーの家が家族全員にとってもメリットがあります。例えば妊婦さんがつまづかずに済みますし、若年であってもケガや病気で、室内で車椅子を使わざるを得なくなることもあるからです。
2.バリアフリーの家の作り方、ヒント7つ
高齢者になってからも住みやすいバリアフリーの家は、段差だけでなく、他の部分での工夫も大切です。次のような部分での工夫も、後々「よかった」と思えるはずです。
2-1.トイレ―寝室のそばに配置、広めにつくる
家主である方々の寝室そばにトイレを作っておけば、高齢者になってからも住みやすい家を実現できます。体が思ったように動かなくなったとき、ヒートショック(温度差による心臓麻痺などの身体的トラブル)が気になる季節になったとき、寝室そばのトイレはとてもうれしいつくりです。
もしも家の中にトイレを1箇所しか作れないときは、寝室から直接入れる位置におき、他の面の壁にもドアを設けて、洗面や脱衣室からも入れるよう「2ドア」にするのもよいでしょう。水周りを連続させることで、トイレ・洗面・入浴がひとつの線で結ばれますので、動きも少なくてすみ、高齢者になってからも住みやすい家となります。
できれば広めに作り、手すりを設けてください。車椅子でも使えるトイレは、介護をする方にとってもうれしいものです。
2-2.洗面―高さに注意、ベンチを設けても便利
洗面台を作るとき、高さに注意してください。健康な方が立って使用するのによい高さと、車椅子生活になった方が座った状態で使いやすい高さはかなり異なります。最初から車椅子生活を想定した高さで作っておくのはいかがでしょうか。健康な大人には少々低いかもしれませんが、お子さんや高齢者・車椅子の方にはとても便利です。
洗面台の下部にも工夫を凝らす事ができます。車椅子のまま洗面台に近づけるよう、下部の収納スペースを取り払った洗面台が便利です。まだまだ車椅子は先、という方であっても、長時間立っていることがつらいこともあるでしょう。これを解消するため、洗面そばにベンチを設置したり、イスを置けるスペースを確保しておくのもよいことです。
2-3.リビング・ダイニング―だれもが集まれる工夫を
リビングやダイニングは、家族が顔を合わせる場です。高齢者を含む家族全員が自由にくつろげる場にするためには、いくつかの方法があります。
ひとつ目は、テーブルの高さです。テーブルに車椅子のまま入れる高さは約70センチが目安です。一般的なテーブルも同じく約70センチですが、車椅子のサイズによっては入れないこともありますので、高さ調節のできるタイプのテーブルを選ぶと良いでしょう。もしも造作テーブルを依頼するときも、この点に注意をすれば、長く使えるものになります。
また、リビング・ダイニングの一部に畳敷きの小上がりを作り、そこにテーブルを寄せられるよう工夫するのはいかがでしょう。イスに慣れない方、高齢となりイスに座ることが面倒になってしまった方も含み、家族全員で食卓を囲むことができます。このようなスペースを作るときも、車椅子と小上がりとの差が小さいほど移動が楽になります。
小上がりは、ご高齢の方が食事中に疲れたとき横になることもできますし、お子さんのお昼寝やお遊びの場所にもなりますので、育児中の親御さんにも安心を与えてくれます。
2-4.廊下―車椅子の通行ができる幅にし、手すり設置を見越して
高齢者になってからも住みやすい家に必要でありながら、バリアフリーリフォームがしづらい部分に廊下があります。廊下は介護者と介護をされる方が二人並んで歩ける幅に、プラスアルファの広さが必要です。
誰かに頼れば歩けるうちは二人分の幅で大丈夫ですが、いったん車椅子での生活が始まれば廊下の幅はさらに広く必要です。車椅子のサイズにもよりますが、最低でも廊下の幅は90センチ必要です。これはあくまでも進むだけ・戻るだけの「一方通行」のケースであって、もしも廊下で方向を変える(回転する)ことまでを考えれば150センチ以上が必要です。
将来は手すりをつけたいと考えているのであれば、それを見越して壁に手すり用の「下地」を入れておくとよいでしょう。リフォーム時に大掛かりな工事にならずにすみます。
2-5.玄関―スロープを作っておく
家の内と外をつなぐ玄関部分も、高齢者になってからも住みやすい家とするための大切なポイントです。杖をついて歩くとき、階段はとても怖いものとなります。また、段があれば車椅子での出入りはとても難しいものです。最初からスロープをつけておけば、ご高齢の方のみならず、妊婦さんやお子さんにも安心ではないでしょうか。
玄関スロープは意外にスペースを必要としますので、家作りに着手した段階から組み込んでおくか、ないしは玄関ポーチに後付けできる広さを確保しておくと安心です。
2-6.キッチン―高さ調節できる製品を
健康なうちは立って調理もできますが、疲れたり足腰を痛めたりしたとき、一時的にイスに座って調理をすることがあります。さらに加齢によって調理そのものに時間をかけたくなくなったときは、座ったまま調理ができるキッチンが便利です。
このことを事前に見越して、高さ調節のできるキッチンを設置するのはいかがでしょうか。少々お値段は高くなりますが、高齢者になってからも住みやすい家になることは間違いありません。また、小さなお子さんがお手伝いをしたくなったときや、仕事のサイクルで身長差のあるご夫婦が交互にキッチンに立つときにもとても便利です。
キッチンそのものを上げ下げするのではなく、床部分を上げ下げする方法もありますので、家作りの相談の際に要望しておくとよいでしょう。
2-7.バスルーム―介護者と一緒に入れる広さとすべり止めを
高齢者になってからも住みやすい家は、水周りの使い勝手がとても重要です。特に身体の清潔を保つバスルームはその代表です。浴槽の立ち上がり部分で足をとられ、転んでけがをする可能性がありますので、介護をする方と一緒に入れる広さがあれば安心です。
さらに、バスタブや床は滑りにくい素材を選びたいものです。滑りにくくやわらかい素材はお子さんが小さなときにも安心です。車椅子生活になったときのために、シャワー用車椅子で直接入れるように間口を広くとっておくこともよいでしょう。
「誰でも生活しやすい」を意識して、バリアフリーの注文住宅を建てる
高齢者になってからも住みやすい家とは、「バリアフリー」なつくりです。これは高齢者だけでなく、誰であっても使いやすい家です。家族そろって無理なく楽しい暮らしをしたいのであれば、はじめからバリアフリーにする、もしくは将来のバリアフリー化を見越した家づくりをしたいところです。
バリアフリーな家は、住まう方の状態により必要なものが異なることも注意点のひとつです。手すりひとつにしても介護される方の身長に合わせなければなりません。車椅子のサイズを考慮する事も必要です。さまざまなケースに対応できるよう、家づくりをスタートさせた段階で、柔軟に対応できる家を作っておくことが何よりも重要なことです。