土間コンクリートの施工のポイント。快適な家づくりのヒント&実例を紹介
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床面に使われる土間コンクリートは、耐久性が高く人気のある仕上げです。外構工事でよく使われる素材ですが、内装に使えば無機質なデザインが空間のアクセントにもなります。今回の記事では、土間コンクリートのメリット・デメリットや、他の素材との違い、施工の注意点などについて詳しくご紹介していきます。
土間コンクリートとは?
土間コンクリートとは、平面にコンクリートを打設して舗装する手法のことで、地面に砕石を敷き、その上に生コンクリートを流し込んで作られます。強度を高め、ひび割れを防ぐために、コンクリート層には鉄筋のワイヤーメッシュが入れられています。耐久性が高く、住宅の外構部分や、駐車スペースなど、幅広い用途に使われています。
土間コンクリートと他の素材との違い
コンクリートの特徴
コンクリートは、セメント、水、細骨材、粗骨材を混ぜ合わせたもの。細骨材は砂や砕石などの細かい粒子、粗骨材は砂利や砕石などの大きな粒子のことで、セメントが水と化学反応を起こし、細骨材や粗骨材と結びつくことによって、強度を生み出します。コンクリートは強度と耐久性が高く、また、蓄熱性や耐火性にも優れています。
モルタルとの違い
モルタルは、セメント、水、砂からできていて、粗骨材が入っていない点がコンクリートと異なります。コンクリートよりも強度は劣りますが、柔軟性の高さはモルタルに軍配が上がります。このため施工がしやすく、レンガやブロックなどの接着剤として使われます。また、目が細かいため、表面を滑らかにするための仕上げにも用いられます。
アスファルトとの違い
舗装材として使われるものは、正式にはアスファルト混合物と言います。アスファルトとは本来、石油を精製して得られる重質油のことで、アスファルトと骨材や砂などを混ぜたものが、アスファルト混合物です。コンクリートの方が強度に優れていますが、アスファルト混合物は完成までの時間が短く、施工費用が安いのがメリット。壊れた場合の補修も速く、安価に済ませることができます。
土間コンクリートのメリット
耐久性が高い
モルタルやアスファルトといった他の素材と比べて分かる通り、土間コンクリートは耐久性に優れています。このため、荷重がかかっても割れにくく、自然環境による変化や劣化が少ないため、長期にわたって使用することができます。初期費用はかかるものの、一般的な舗装材よりもメンテナンスの費用や手間を少なく済ませることができます。
雑草が生えない
土間コンクリートは地面全体を覆うため、雑草が生えにくいという特徴があります。このため、除草作業に時間や手間をかけることなく、美しい外観を維持できます。除草剤を使う必要もないため、ペットが安全に庭で過ごすことができます。また、土が露出している面積が少ないため、虫の発生を防ぐことができる点も魅力と言えるでしょう。
掃除がしやすい
土間コンクリートは凹凸が少なく、なめらかな仕上がりが特徴。このため、汚れを落としやすく、掃除が簡単というメリットがあります。日常的なお手入れは、ほうきでさっと掃くだけで十分。土汚れなどは水で洗い流すことができ、水はけも良いため、すぐに乾きます。外構だけでなく、玄関などの室内空間に土間コンクリートを使用した場合、清潔な環境を保つことができるでしょう。
デザイン性が高い
土間コンクリートは、機能性だけでなく、デザイン性の面でも人気があります。色味はグレーを基本としていて、無機質な素材感がシンプルかつモダンな印象を与えます。木などのナチュラルな素材との相性も良く、異素材を組み合わせることでデザイン性の高い空間を作ることができます。後でご紹介する仕上げの方法にもさまざまな種類があり、それぞれ異なる風合いを楽しむことができます。目地のデザインは自由度が高く、レンガやタイルなどでアクセントをつけることも可能です。
蓄熱性が高い
土間コンクリートは、暖まると冷めにくいという蓄熱性の高さもメリットです。外構だけでなく、室内にも土間コンクリートを使用することで、その効果はより発揮できるでしょう。日中は太陽の熱をコンクリートにたっぷりと取り入れることで、時間をかけて家全体を暖めることができます。暖かさは夜までキープできるため、暖房だけに頼らないエコな生活ができるでしょう。この蓄熱性の高さは、床暖房との相性も抜群です。
土間コンクリートのデメリット
費用が高い
土間コンクリートは、他の舗装材に比べて施工費用が高い点がデメリットです。コンクリートをしっかりと流し込むための基礎準備や、仕上がりを均一にするための手間が多く、職人に高い技術が求められるため、工賃が高くなる傾向があります。また、材料そのものも耐久性が高い分、費用がかさむことがあります。とはいえ、長持ちする素材でメンテナンス費用が抑えられるため、長期的には高いコストパフォーマンスが期待できます。
冬は寒さを感じやすい
土間コンクリートは蓄熱性が高い一方、一旦冷えると、その冷たさをキープしてしまうという性質があります。このため、冬場は土間コンクリートがあることによって、室内が寒く感じることがあります。土間コンクリートは床高に法律上の制限がないため、通常の床よりも低い場所に設けられることがあり、地面の冷えがダイレクトに伝わりやすくなります。土間部分に断熱材を敷いたり、断熱効果のある床材を使用したりするなど、冬場の対策もしっかり行いましょう。
部屋に段差ができやすい
土間コンクリートは地面に直接施工できるため、床面が低くなる傾向にあります。このため、室内の他の空間との段差ができ、バリアフリー性が損なわれてしまうことがあります。小さいお子さんや、ご高齢のご家族の安全を確保するためには、スロープなどを設けて対策しましょう。段差は一概にデメリットとは言えず、空間に変化をつけたり、腰掛けたりでき、メリットと言える面もあります。
土間コンクリートの仕上げ方
金鏝仕上げ
土間コンクリートの代表的な仕上げの一つが、金鏝(かねごて)仕上げ。金ゴテを使って生コンクリートを上から押さえ、表面を滑らかに仕上げます。ツルツルとした見た目が美しく、汚れが落ちやすいのがメリット。濡れると滑りやすいので、雨天時や水洗いの際には足元への注意が必要です。
刷毛引き仕上げ
刷毛引き(はけひき)仕上げは、生コンクリートの表面を刷毛でなでて刷毛目をつける仕上げです。表面がザラザラとしているため、金鏝仕上げよりも滑りにくいのが特徴。手作業でつけられた刷毛目は流れるようなラインが美しく、デザイン性の高さにも定評があります。ただし、凹凸に汚れが溜まりやすいため、こまめな掃除が必要です。
洗い出し仕上げ
洗い出し仕上げは、表面に骨材(石や砂利など)が見えるようにする仕上げ。生コンクリートの表面をいったんコテでならした後、水で洗い流すことによって骨材を露出させます。表面がゴツゴツとしているため、滑り止めとしての効果が高いのが特徴。石の種類を変えれば、さまざまなデザインで作ることができます。
スタンプコンクリート仕上げ
スタンプコンクリート仕上げは、生コンクリートの表面に型を押し当てて模様をつける仕上げ。レンガ、木目、石タイルなどにそっくりな模様をつけることができます。色やパターンを自由に選べるため、庭やエントランスなど、個性を演出したい場所の仕上げに適しています。
土間コンクリートの注意点
ひび割れ
土間コンクリートは強度が高く耐久性に優れていますが、使用する環境や施工方法によってはひび割れが生じやすい点に注意が必要です。コンクリートは温度や湿度の変化で乾燥や収縮が起こり、特に温度差の大きな季節や乾燥した気候では細かいひび割れが発生することがあります。これを防ぐためには、施工時に十分な厚みを確保する、ひび割れ防止のスリットを入れる「目地処理」を施す、コンクリートの下にワイヤーメッシュを敷く、といった対策が必要です。
水はけ
土間コンクリートの水はけは基本的には問題になりませんが、施工が不適切である場合、水溜まりができてしまうことがあります。水はけが悪いと、苔やカビが発生しやすくなったり、移動時に靴が濡れてしまったりするなどのトラブルが発生しやすくなるため、対処が必要です。
水溜まりができてしまう場合の原因として考えられることは、水勾配が不十分であること。通常、2〜3%ほどの勾配が求められます。土間コンクリートの完成後に問題が発覚した場合、一部を解体して施工し直す必要が出てくるため、不備があった場合は早急に業者に連絡を入れましょう。
色ムラ
土間コンクリートは、施工時の天候、混合材料の比率、固まる過程での温度変化など、さまざまな要因で仕上がりに色ムラが生じる場合があります。意図しない色味や風合いが出ることで、見た目の印象を著しく損ねてしまう可能性があります。施工時の対策に関しては、職人の腕に委ねられる部分が大きいですが、依頼者側は気温が安定した時期に施工を依頼するなどの対策ができるでしょう。また、完成後に色むらが気になる場合は、後からコンクリート用の塗料を塗って対処できる場合もあります。
土間コンクリートのおすすめ用途&事例集
土間コンクリートは住宅内外のさまざまな用途に活用できます。ここでは4つのアイデアと、計8つの実例をご紹介します。実例を見ながら、ぜひ家づくりのイメージを膨らませてみてくださいね。
①土間コンクリートの玄関
シンプルな鏝仕上げの玄関
鏝仕上げのシンプルな玄関。デザインの主張はそれほど強くないものの、色ムラが独特の風合いを生み出しています。また、この土間コンクリートの無機質さが、白と木目のナチュラルな家のデザインと上手くマッチし、アクセントとなっています。玄関の仕切り壁の裏側は土間収納に。シューズボックスはフロートタイプになっていて、空間をスッキリと見せてくれます。
和モダンな洗い出し仕上げ
こちらは、和モダンな住宅の中にある土間玄関。表面に石が浮き出て見える、洗い出し仕上げが施されています。無機質ながらも自然の温かみが感じられる仕上がりとなっていて、この住宅の和の雰囲気によく馴染んでいますね。この玄関は家族用と来客用と通路が分かれているのが特徴。家族側の玄関にはシューズインクローゼットが設けられ、スッキリと収納できます。
②土間コンクリートのビルトインガレージ
コンクリート打ち放しのガレージ
コンクリートの質感が美しいビルトインガレージ 。柱や壁などの構造体もコンクリート打ち放しで仕上げられています。外観もモノトーンでデザインされ、土間コンクリートの仕上げもよく馴染んでいます。ガレージ内から道路のギリギリまで広範囲にわたって土間コンクリートが施されているため、空間に一体感や奥行きを感じさせています。
動きのある鏝仕上げのガレージ
こちらのビルトインガレージは、墨を落とした後にコテで表面をならして仕上げています。土間コンクリートは、仕上げによっては単調なデザインになってしまうため、墨を落として動きのあるデザインを作るのは良いアイデアです。ガレージ内にはスロップシンクがあり、土間コンクリートは水はけが良いので、洗車やガレージ内の水洗いも手軽に行えます。
③土間コンクリートのエントランス
重厚なコンクリートのエントランス
こちらの住宅は2mの高低差がある立地にあり、エントランスは地階に設けられています。この地下空間は全体がコンクリートで仕上げられていて、重厚感のある印象に。地面ももちろん土間コンクリートで、濃い目のグレーに浮かぶ白い色ムラがアクセントとなっています。また、壁の一部は杉板枠型コンクリートで仕上げられています。コンクリートに杉板の木目が美しく浮かび上がり、無機質さの中に木の温かさが感じられます。
外構の大部分がコンクリート仕上げ
敷地に対して、建物が奥に配置されています。建物までの長いアプローチの全てが、土間コンクリートで大胆に仕上げられていますね。駐車スペースを開放すると、中庭にダイレクトにアプローチすることができ、またその中庭の半分ほどのスペースも引き続き土間コンクリートで仕上げられています。家の外壁も塗り壁のフラットな仕上がりで、統一感のあるテクスチャーが、クールなイメージをトータルに演出することに成功しています。
④土間コンクリートの蓄熱性を活用
年中過ごしやすい温熱環境
玄関を入った先に広がる、コンクリートの通り土間。日当たりの良い窓際に配置されているため、冬場は日中の太陽熱をコンクリートが吸収し、部屋全体をじんわりと暖めます。また、薪ストーブの熱も蓄え、寒い冬でも快適に過ごせるでしょう。夏場はエアコンの冷気でコンクリートが冷やされ、室温を下げます。このように、コンクリートの蓄熱性を生かすことによって、一年を通して住まいの温熱環境を整えることができます。
明るく暖かいサンルーム
こちらは、土間コンクリートのサンルーム。日当たりがよく、洗濯物をからっと乾かすことができます。サンルームは洗濯物を干す以外に、日中の太陽熱を蓄える機能もあります。家全体の室温を安定させるため、寒い冬も暖かく過ごせることでしょう。反対に、夏はサンルームが暑くなりすぎることがありますが、こちらの事例では窓の外に可動式のルーバーがあり、角度を変えることで日射量を調節できます。
まとめ
コンクリートは耐久性が高く、外構や室内土間におすすめの素材です。お手入れも簡単で、デザイン性も高く、より興味を持たれた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。今回ご紹介した施工のポイントや、実例などを参考に、ぜひ土間コンクリートを用いた家づくりについて考えてみてくださいね。
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