【実例紹介】3階建て住宅の本当のメリット&デメリット
【実例紹介】3階建て住宅の本当のメリット&デメリットのインデックス
地価の高い都心部を中心に根強い需要がある3階建て住宅。
交通の便を含めてなにかと便利な都心部に住みたいけれど、人気がある分、地価も高いし広い土地はそもそもなかなか売りに出ない。3階建て住宅という選択は、このようなジレンマに折り合いをつけるための、いわば「苦肉の策」として採られるものというイメージがある方も多いでしょう。
しかし、3階建てならではの特徴を理解して、上手に生かせば、平屋や2階建てでは実現できない魅力のある住まいにすることができます。今回は3階建て住宅の「オススメポイント」と「注意ポイント」を施工事例のご紹介とともに解説していきます。
【オススメポイント1】敷地を最大限に生かせる
3階建て住宅の一番の魅力は、なんといっても限られた敷地を最大限に活用できるということ。法律で定められた「建ぺい率」や「容積率」などの用途地域の制限にもよりますが、可能な限り建物を上に延ばすことで床面積を増やし、広さを確保できることが最大のメリットです。
つまり、敷地が狭いほど3階建て住宅は大きな効果を発揮します。「利便性の高い土地は価格が高いから広い土地は購入できないけれど、狭小地でも十分な広さのある家を手に入れたい」という方には、3階建てという選択肢がとても有効なのです。
また、家族構成の変化によって2階建てのままだと住みづらいという場合に、3階建てに建て替えることで、必要な部屋数を確保することができます。さらに、法的制限が緩い地域で土地を購入したから、「2階建てではもったいない」とお考えの方にも良いでしょう。
ただし注意点として、「事前に法的な制限をしっかりと調査する」ことが重要になります。前述した「建ぺい率」「容積率」だけでなく、「道路斜線」や「北側斜線」、「防火制限」など、家を建てる際にはさまざまな法律の規定があるため、それらをきちんと踏まえて、その範囲内で、最適な3階建て住宅を計画する必要があります。
専門的な法律の問題については、工務店や建築士などの専門家に早めに相談しておきましょう。
【オススメポイント2】フロアごとに使い方を分けることができる
目的に応じてフロアごとに使い方をわけ、それぞれのスペースを独立させることができるということも3階建て住宅の特徴です。
例えば、店舗や事務所との併用住宅にしたいという希望があれば「1階は店舗や事務所として独立させて、2階・3階を住まいとする」ことや、ガレージハウスにしたいという希望があれば「1階をビルトインガレージにして、2・3階は居住スペースとする」ことができます。
特に店舗併用や事務所併用住宅の場合には、プライベートな空間を維持しつつ居住スペースと店舗(事務所)スペースをしっかり分けたうえで、広さのバランスをとるために、あえて3階建てにするという選択肢もあるでしょう。
さらに、完全二世帯住宅にしたい場合にも有効です。親世帯と子世帯の人数のバランスを考慮して、1階を親世帯、2階・3階を子世帯にして上手に生活空間を分けることができます。また、二世帯同居型の場合でも、1階を親世帯の寝室、2階を共有のLDK、3階を子世帯の寝室というように、親世帯・子世帯のそれぞれのライフスタイルを考慮しながら共有空間も大事にしたプランニングも可能です。
他にも、賃貸併用住宅を計画する場合に、自分の住居と賃貸部分を完全に分離して、かつ多くの家賃収入を確保するために3階建てを選択するという考え方もあります。このように、2階建てよりも1フロア分の空間が増えることで、フロアごとの区切りを活用したプランニングがより柔軟にできるようになります。
【オススメポイント3】窓を有効に活用できる
当然のことながら、2階建てよりも3階建ての方が高い位置に部屋ができるため、窓を上手に配置することで、快適性とデザイン性の高い家にすることができます。
また、2階建てに比べると3階建ては、同じ総床面積であれば、ワンフロアあたりの部屋数が減るので、各部屋につける窓を配置しやすくなります。それらを考慮して上手に設計すれば、自然の光や風を屋内に取り入れやすい家にもなります。
ただし、これらは周辺環境に左右されることも多いので、事前にしっかりと調査して最適な窓の配置を考えると良いでしょう。
【オススメポイント4】眺望や採光に優れている
3階建て住宅は、2階建てや平屋に比べて2層分(3~4m程度)高くなりますので、視線の高さもそれだけあがります。実際に比べてみれば、2階から見る景色とは違うものが見えることも実感できると思います。
また、より遠くまで見通すことができますので、開放感も味わえるでしょう。さらに採光という点では、家が密集した住宅地であっても、3階建てであれば周りの建物よりも自然光を室内に取り込みやすく、明るい空間を実現できます。
【オススメポイント5】水害への備えとなる
最近は地球の気候変動のためか、日本でもゲリラ豪雨が度々ニュースになります。床下浸水や、床上浸水といった被害も耳にすることが多くなりました。こういった水害への備えにもなるのが、3階建てのおすすめポイントの一つでもあります。
万が一室内に水が入ってきたとしても、3階へ避難することで直接的な水難からは逃れられますし、避難経路を確保しておくことで、3階から救助を求めることも可能です。また、大切な家財道具は2階以上に置くようにする等の対策をしておくと、人も物も水害から守ることができるでしょう。
【注意ポイント1】階段の存在
3階建て住宅にする場合は、「階段」の存在に注意しましょう。2階建てよりも階段が1つ増えるため、その分のスペースが必要になってしまいます。
もちろんこれは構造上仕方のないことですが、例えば、スケルトン階段のようなオープンな階段にして、見た目もおしゃれに、視覚的な圧迫感を軽減して、デメリットを薄めることができます。
また、3階分の上り下りが日常的に発生するということも考慮する必要があります。「若いうちは良いけれど、年をとって足腰が弱ってきらどうだろう……」と不安になる方もいるでしょう。考えられる対策としては、例えば、主寝室を1階に配置し、3階は、お子さんが小さいうちは子ども部屋として活用して、将来的には使用頻度が少ないものを収納するためのスペースにする、という方法があります。
また、ホームエレベーターをつけることも方法の1つです。ただし、設置するとなると数百万円ほどコストアップしますし、設置後も定期的なメンテナンスが必要になります。内部のスペースもその分さらに余裕がなくなってしまうため、本当にホームエレベーターがあった方が良いかどうかはしっかりとした検討が必要でしょう。
階段の上り下りについては2階建て住宅の場合にもあるので、3階建て住宅にすることでワンフロア分増えることをどのように受け止めるかは住む人次第です。ものを収納するためのスペースにする、という方法があります。
将来を見据えた計画を事前に練っておけば、後悔することなく住むことができるでしょう。
【注意ポイント2】家の資産価値を考えなければならない
最近では、「将来子供が独立したら家を売って、コンパクトなマンションに買い替えるつもり」だとか、「老後は賃貸に出して田舎暮らしにシフトしたい」というように、長期的な運用を見据えて家を建てることを計画する方も増えています。
将来的に手放すことを考えているのであれば、利便性の良い立地であったり、建物そのものの価値を上げるなどの、客観的な資産価値を考慮に入れた選択をすることが重要です。
【注意ポイント3】耐震性への考慮の必要性
3階建ての場合は2階建てよりもさらにワンフロア分の重量が増えます。そのため、それを支える構造躯体や地盤は2階建ての場合よりもさらに強固にする必要があります。
また、建物自体が上に高くなり、地面に接している横の面積よりも外壁の縦の面積の方が大きくなることで横に揺れやすくなるため、そのための対策も必要です。
法律的にも3階建ての場合は、木造住宅2階建て以下では免除される「構造計算」が義務付けられています。できれば耐震等級も3を取得できるような耐震性を確保したほうが良いでしょう。
また、在来木造工法や2×4工法で耐震性の高い住宅にするには、建物が揺れないように「耐力壁」と呼ばれる壁をより多く配置する必要が生じますが、「耐力壁」が増えることによって空間の区切りが増え、内部が狭くなってしまう可能性もあります。
これは、在来木造工法や2×4工法で3階建てを建てるときの大きな弱点です。敷地を最大限に有効活用したくて3階建てを選んだはずなのに、かえって空間に制限ができてしまっては本末転倒でしょう。
これを木造住宅で解決する方法としては、「SE構法」のようなラーメン構造の構造躯体を使うことなどが挙げられます。このような構法は柱と梁の接合部で強度を保つことができるので、耐力壁が少なくても耐震性を確保できるのです。それによって、1階部分にビルトインガレージを配置したり、吹き抜けを計画したりしても耐震性の高い住宅が可能になります。
住みやすい3階建ての家を実現するポイント3選
3階建ての家について、おすすめのポイントと注意するべきポイントを見て頂きました。次に、それらのことを踏まえて、どうすれば住みやすい3階建ての家が実現するのか、次の3つのポイントについても押さえておきましょう。
土地と建物のバランスを考えた費用計画
家づくりをスタートさせるには、まず土地がなければ始まりません。家を建てるには、その土地を読むということがとても重要です。土地の方位方角や大きさ、周囲の環境など全てを含めてその土地にピッタリの3階建て住宅を計画する必要があります。
また、建築基準法では用途地域によって、建てられる階数の制限がある場合もありますので、土地を選ぶときには注意が必要です。そして、土地の取得費用と建築費のバランスについても考える必要がありますね。
間取りは過ごしやすさを重視しよう
3階建ての家は、3層を階段で行き来する必要がありますので、動線についてはよく検討する必要があります。例えば、1階にLDKを配置して水回りを3階に配置したとすると、家事動線が長くなり、毎日の移動が大変になりますね。
なるべくLDKと水回りは2階に配置して、個室やその他の用途の部屋は1階や3階に配置するといいでしょう。また3階建てでは、ルーフバルコニーを作る楽しみもあります。その場合は、ルーフバルコニーを絡めた動線についてもしっかりシミュレーションしておくことをお勧めします。
断熱性を高めて快適に
3階建ての家で快適に暮らすためには、断熱性を高めることも忘れてはいけない大事なポイントです。3階建てでは、吹抜けを設置して、上階の窓から下階へ太陽光を届けるようにすることがよくありますが、吹抜けを作るとどうしても空間が大きくなり、冷暖房効率が下がります。
断熱性を高めることで、冷暖房の効率が上がり、居住空間の快適性が向上します。断熱性を高めるためには、断熱材を使うことはもちろん、窓やその他の開口部に使用する部材にも、断熱性の高いものを選ぶ必要があります。
3階建て住宅のよくある疑問
3階建ての家を建てるにあたって、皆さんがよく疑問に持たれることをチェックしてみましょう。ご自身でも気づかなかった疑問もあるかもしれませんので、じっくり見てみましょう。これらの疑問が解決すれば、3階建てを建てる事に対して、前向きに検討できそうですね。
3階は水圧が低くなるのか?
水道管は、地中を通ってそこから住宅内へ上げていくので、階数が上がるほど水圧が低くなるということはありえます。けれども、3階に水回りを持ってくること自体、動線を考えた場合においてもあまりメリットがないので、採用される事例は多くはないでしょう。
また、もし3階に水回りを持ってくる場合であっても、最近は、低水圧に対応している設備機器を販売しているメーカーもありますので、そういった商品を選ぶようにするといいでしょう。
塗装やメンテナンスなどが高くなる?
3階建て住宅を建てるにあたって、塗装費やメンテナンス費用が高くなるのではないかという疑問の声も多くあります。これに関しても、そこまで心配する必要はありません。
塗装に関していうと、コストの計算方法としては㎡単価でされることが多いので、高さによるというよりは、外壁の㎡数の合計によるということになります。足場に関しては、階数が高くなる分はもちろん上がりますが、費用についてはトータルで考えるようにするといいですね。
家全体に電波が届くか不安
現代の住宅においては、必須条件のインターネット接続。3階建ての場合は、家全体に電波が届くのかどうか不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。こちらに関しては、木造の住宅であれば、ほぼ問題ないと言われています。
ただ、住まいの中心である二階にルーターを設置することで、家全体にバランスよく電波が届くようになるので設置場所には気を付けるといいですね。また、最近では3階建て用のルーターや中継機も販売されていますので、チェックしてみるといいでしょう。
【実例紹介】3階建て「だからこそ」の魅力的な住まいに!!
せっかく3階建て住宅にするのであれば、平屋や2階建てではできないような魅力的な暮らしができる住まいにしたいですよね。どのような工夫ができるか、実際の施工事例とともにアイディアをご紹介します。
1.「ルーフバルコニー」
必ずしもそうとは言い切れませんが、3階建て住宅を選択するということは敷地の広さが十分でないという場合が多いでしょう。
ということは、庭をつくるのは諦めざるを得ないとお思いではないでしょうか。そんなときに注目していただきたい場所が、「屋上」です。
屋根部分をフラットにして、しっかり防水処理をすることで「ルーフバルコニー」というおしゃれな空間にすることができます。洗濯物を干す場所として日常的に活用もできますし、ウッドデッキやテーブルなどを設置して食事やお茶を楽しんだりハンモックでリラックスしたりするスペースとして楽しむのも良いでしょう。
立地によっては、夏は花火大会の特等席になるかもしれませんし、ステイホームが合言葉の昨今、なかなか外に遊びに行けないお子さんを思いっきり遊ばせられる場所としても活躍しそうですね。
注意点として、通常の屋根であれば考慮する必要がありませんが、ルーフバルコニーにする場合は、構造計算上、屋上に人が乗っても大丈夫なように対策しておく必要があります。
2.「縦の空間を利用する」
法的な制限によって、地域ごとに建築可能な高さの上限が決まっています。3階建ての場合は、これを3層に分けていくことになりますが、上手に配分することが重要です。
例えば、1階部分は階高を少し低めに設計し、2階のLDKは天井高を高くする。そして3階部分は勾配天井などを使って、天井高の低いところと高いところを上手に使い分けながら解放感を保つと良いでしょう。
また、スキップフロアなどを採用して、単調な空間になりやすいところを、変化をつけてリズムのある空間にするのも一考です。
あるいは、吹き抜けをつくって海外の家のような高い天井を感じる住まいにするのも素敵ですね。
→【実例紹介】スキップフロアの間取りを考える上での注意点、メリット、最も重要なことは?
3.「ビルトインガレージ」
3階建て住居にするなら、思い切って1階部分を駐車スペースにした「ビルトインガレージ」にするのも良いでしょう。「ビルトインガレージ」の魅力はなんといっても、大事な愛車とともに”暮らせる”こと。
都心部ではときに最寄りの駐車場が遠く、目の届かない場所に駐車せざるを得ないことで、愛車にいたずらされる心配があったり気軽にメンテナンスができなかったりといった不満が生じることがありますが、住宅そのものを、ガレージを内包した「ビルトインガレージ」にすることで、そのような問題から解放されます。
また、車を持たない世帯でも、家族でバーベキューをしたりDIYなどに取組むアトリエとして活用したり、マルチに活躍してくれるスペースとしてビルトインガレーはおすすめです。
まとめ
空間の妙を楽しむことができるスキップフロアや吹き抜けを取り入れたり、自宅の過ごし方をもっと豊かにしてくれるようなルーフバルコニーやビルトインガレージを設けたり、素敵な3階建て住宅の施工事例をご紹介させていただきました。これらはたくさんの実例の中のごく一部です。
一般的に、「本当は2階建てにしたいけれど敷地が狭いから仕方なく3階建てに……」という方も少なくないでしょう。しかし、ここでご紹介したような、様々な工夫を凝らすことで、平屋や2階建てよりももっと魅力的な住まいにすることが可能です。優れた構造躯体を採用することでさらにその選択肢も広がります。
もしかしたら、「予定にはなかったけど、3階建て住宅なら二世帯住宅や店舗・事務所との併用住宅にするのもいいかもしれない」というように、新しい選択肢が増えるきっかけにもなるかもしれませんね。
「仕方なく3階建住宅」ではなく「3階建て住宅だからこそ」つくることのできる、あなたのこだわりがたくさん詰まった住まいを実現させてください!