マイホームと自分のお店、二つの夢を同時に叶えるなら、「店舗併用住宅」という選択肢はいかがでしょうか。住宅と店舗が一体化しているため、仕事とプライベートを両立させやすく、費用面でもメリットがたくさんあります。一方で、店舗併用住宅には一般の住宅にはない制限も多く、今回の記事ではこれらの注意点を踏まえて建築のポイントを解説していきます。
店舗併用住宅とは?
店舗併用住宅とは、一つの建物の中に店舗部分と居住部分があり、それぞれ独立して利用できる住宅を指します。店舗併用住宅の中でも、建物内で行き来ができるものを「店舗兼用住宅」と細分化するケースもあります。また、店舗を自営業に使用するだけでなく、他人に貸し出すことも可能です。
店舗併用住宅のメリット
テナント料がかからない
店舗併用住宅は、店舗を借りるための賃料がかかりません。保証金や礼金、仲介手数料などの初期費用がかからないことも大きなメリットと言えるでしょう。テナントを借りる場合は、内装工事や退去時の原状回復工事がかかりますが、店舗併用住宅であれば、これらの費用も発生しません。また、テナントを貸し出す場合は、これらの工事費用を借り手側が賄うのが一般的です。
建設費などを経費に回せる
店舗併用住宅は、建設費や維持費、光熱費など、店舗にかかる費用の一部を経費として計上できる点も魅力です。自宅用の単独住宅とは異なり、事業にかかる諸費用を経費として処理することで、節税対策にも役立ちます。こうしたメリットは、経済的な負担を軽減し、結果として事業の安定性を高めることにもつながります。
仕事と家事・育児を両立させやすい
店舗が自宅に併設されているため、仕事と家事・育児を両立させやすく、ワークライフバランスの取れたライフスタイルを叶えることができます。業種によっては、幼いお子さんと同じ場所で仕事ができるため、安心して作業に集中できます。また、自宅に職場があるため、通勤に時間がかからないことも魅力です。
店舗併用住宅を建てられる土地の条件
住居系・商業系の用途地域は建築可
店舗併用住宅を建てる際には、建築基準法に定められている「用途地域」の確認が欠かせません。用途地域は、計画的な市街地形成のために分けられたエリア区分のことを指し、全部で13種類あります。住居系、商業系、工業系など、それぞれの土地の用途に応じて建物の種類や大きさ、容積率、建ぺい率などの建築規制が定められています。
店舗併用住宅で円滑に事業を運営するには、事前に地域の条例や規制を確認し、地域住民の生活に配慮した事業計画を立てることがポイントとなります。店舗併用住宅は、住居系・商業系の用途地域での建築が可能で、商業系地域は店舗の建築規制が緩やかである一方、静かな住環境を得にくい点がデメリット。住居系地域は建築規制が厳しくなりますが、条件をクリアできれば静かな環境で暮らしと事業を両立させることができます。住居系地域の中でも特に規制が厳しい「第1種低層住居専用地域」と「第2種低層住居専用地域」に建てる場合の注意点については、以下で解説していきます。
第1種低層住居専用地域の場合
第1種低層住居専用地域は住居系地域の中でも特に規制が厳しく、原則として店舗を建築できません。しかし、以下の条件を満たせば店舗併用住宅の建築が可能とされています。
・店舗部分の床面積が50㎡以下
・店舗部分の床面積が延床面積の半分以下
・店舗と自宅が内部で行き来できること(店舗兼用住宅であること)
・飲食店、サロン、事務所など、定められた一部の業種が対象
・厨房における機械の出力は0.75KW以下
営業できる業種が限定されているため、事前確認が必要不可欠になります。自己判断で出店してトラブルになったというケースも少なくありません。また、厨房の出力規制があるため、大きな出力を必要とする飲食店(パン屋やケーキ屋など)を想定している場合は、設備基準についても確認しておきましょう。
第2種低層住居専用地域の場合
第2種低層住居専用地域に店舗併用住宅を建てる際の条件は以下の通り。第1種よりも規制が緩くなり、営業できる業種の幅が少し広がります。
・店舗部分の床面積が150㎡以下
・店舗部分は2階以下に設けること
・厨房における機械の出力は0.75KW以下
店舗併用住宅の間取り実例
狭小地に建つカフェ兼住宅
こちらのカフェ兼住宅は、敷地面積45㎡、延べ面積68㎡というコンパクトな造り。夫婦二人と愛犬たちとの暮らしにちょうどいいサイズ感となっています。カフェは1階の細長いアプローチを抜けた先にあり、隠れ家のような雰囲気。内装は落ち着いたナチュラルモダンで、壁には作家から直接買い付けた器がおしゃれに並んでいます。住居スペースは2・3階に集約され、一室空間のLDKと吹き抜け天井が開放感を演出しています。
明るく清潔感のあるサロン
こちらの住宅にはヘアサロンが併設されていて、家族それぞれの個室や、ゆったりとしたリビングダイニング、ビルトインガレージなど、多くの要素が盛り込まれています。店舗部分は白を基調としたシンプルで明るく、清潔感のある空間。一対一での接客を基本としているため、シャンプー台やカットスペースはそれぞれ一か所とコンパクトな造りですが、それぞれがゆとりを持って配置されています。住まいと店舗の間をつなぐ前庭は、家族と来客の動線を分ける場所であると同時に、家族が憩う庭としても機能しています。
個性的なデザインのオフィス
こちらは、外観・内観ともに個性的なデザインが目を引くオフィス併用住宅です。外観は赤いガルバリウム鋼板の外壁と丸窓がポイント。1階のオフィスは応接スペースと執務室がスキップフロアで緩やかに区切られていて、階段や手すりのカラフルな配色が訪れた人の目を楽しませます。2階は住居になっていて、コーナーサッシからはパノラマ眺望を楽しむことができます。さらに階段を上がれば明るく開放的なルーフバルコニーがあり、多目的に使用できます。
まとめ
今回は店舗併用住宅について詳しくご紹介しました。家づくりをお考えの方の中で、いつかは自分のお店や会社を持ちたいという希望がある方は、この機会にぜひ、店舗併用住宅を検討してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介した法律上の注意点をクリアして店舗併用住宅を建てることで、家族の夢が一度に二つ実現するかもしれませんね。