家づくりを考えるとき、デザインや機能性をどう両立させるかは大きなテーマです。限られた敷地を有効活用しつつ、快適な住空間を実現するために、さまざまな工夫が必要です。その中で、見た目の美しさと実用性を兼ね備えた設計手法のひとつにオーバーハングがあります。今回は、オーバーハングの魅力や採用する際のポイントを解説します。
オーバーハングとは?
オーバーハングとは、建物の2階以上の部分が外に張り出している構造のことをさします。英語で「突き出る」「張り出す」という意味で、建築業界では「片持ち構造」とも呼ばれます。2階の居室を広くしたり、ベランダとして活用することが一般的です。張り出した下の部分は、駐車場やテラス、玄関ポーチとして利用することができます。
オーバーハングのメリット
敷地を有効に活用できる
オーバーハングの最大のメリットは、限られた敷地を有効に活用できるという点です。オーバーハングを採用すれば、2階の床面積が広がり居住スペースを広くとることができるので、狭い土地の場合でも、広いリビング空間や豊富な収納を実現しやすくなります。また1階の面積は小さくなるため、庭や駐車スペースを重視したい方にもおすすめです。特に都市部や狭小地では、このように間取りの自由度が増して選択肢が広がるというのは大きなメリットといえるでしょう。
費用をおさえて家を広くできる
オーバーハングには、総二階建てに比べて建築コストを抑えられるというメリットもあります。オーバーハングは2階よりも1階の面積が小さい構造のため、建物全体の延床面積を広げずに居住空間を広くとることが可能。つまり、基礎工事が小規模で済むということです。基礎工事費は建築費用の中でも特に高額なため、基礎を広げずに済むオーバーハングの方が、総二階にするよりもコストをおさえて家を広くすることができるといえます。
日よけ・雨よけになる
オーバーハングを採用すると、張り出した2階が軒の役割をはたし、1階部分の日よけや雨よけとして機能させることが出来ます。玄関の上に設けると玄関ポーチ代わりに、リビング真上であれば深い軒代わりとなり、雨や日差しから守ってくれます。庭や駐車スペースの上に設置すれば、カーポートのような役割も期待できますし、駐輪スペースにもできますね。ぜひ活用シーンをイメージしながら設置場所を検討してみてください。
外観にメリハリがうまれる
オーバーハングは、外観デザインにおいてメリハリを与える効果もあります。2階部分を外に張り出すことで立体感を生み出し、デザインに動きや変化を持たせることができます。オーバーハング部分をアクセントとして外壁材や色を貼り分けたり、バルコニーや窓のデザインに特徴を持たてみてもよいですね。個性的かつ魅力的で、洗練された外観が期待できるので、外観デザインにもこだわりたい方にもおすすめです。
オーバーハングを採用する際の注意点
耐震性を高める工夫をする
オーバーハングでは、耐震性を深く考慮した設計が必要になります。耐震性を確保するためには、張り出した部分を支えられる基礎や構造等の強度をよく検討しましょう。柱や壁の設計ではバランスよく配置するよう工夫し、基礎の延長や適切な補強を施すことが重要です。オーバーハングの構造上の特徴を理解し対策しましょう。
建ぺい率と容積率に注意する
オーバーハングを採用する際は、その土地の建ぺい率や容積率をしっかり確認する必要があります。建ぺい率はオーバーハングしたフロアの面積で算出するため、張り出し部分が大きすぎると、建築基準法の制限を超えてしまう可能性があります。また、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)で許される範囲でなければ大きくできません。土地探しの段階から注意し、適切な設計を行うことが大切です。
間取りや家具の配置に気をつける
間取りを考える際には、オーバーハング側に重さが片寄らないように注意が必要です。特に大きな窓の設置はあまりおすすめできません。オーバーハングを支える壁に強い負荷がかかるためです。グランドピアノや本棚などの重たい家具や室内設備を置くのも避けたほうがよいでしょう。オーバーハング部分の負荷をできるだけ軽くできるように、間取りや家具の配置を考えることが必要となります。
まとめ
今回は、住空間を有効活用する設計手法であるオーバーハングについて詳しくご紹介しました。デザインや空間の使い方に関するメリットや魅力は沢山ありましたが、耐震性や法規制など注意する点もいくつかありました。理想の住まいを実現するためには、土地の条件や家族のライフスタイルに適しているかを見極めることが重要といえるでしょう。