完全分離型二世帯住宅で税金対策?メリットデメリットやおすすめの間取りを解説!

家族は人数が多ければ多いほど大変なこともありますが、一方で楽しいことも増えます。新米パパ・ママはご両親の助けを得て“孤独な子育て”から開放されますし、ご両親も自身の体に不安を覚えたとき手助けを得やすくなります。
もちろんお子さんがいなくとも、お互い大人として親世帯・子世帯で適度に寄り添いあい、支えあうことができれば言うことはないでしょう。
今回はそのような暮らしを実現する二世帯住宅についてご説明します。最近増えつつある二世帯住宅の中でも特に注目を浴びている「完全分離型」。そのメリットや気になる税金についてもお伝えしますので、よりよい二世帯住宅づくりにお役立てください。
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1.完全分離型二世帯住宅とは?
完全分離二世帯住宅の話をする前に、二世帯住宅の種類についてご説明いたします。二世帯住宅は大きく3つのタイプ分けが出来ます。その内訳は、「同居型」「一部供用型」「完全分離型」となります。
「同居型」とは、寝室以外のスペースを全て共用するというスタイルです。大家族で一つの家に住むというようなイメージがわかりやすいでしょう。同居型は、年を取って親が一人になってしまった場合に子家族と同居するような事例が多いようです。
次に「一部供用型」は、各家庭の個室やLDKはそれぞれに持つことでプライバシーを確保しながら、水回りや玄関などの一部を共用して省スペース化を図ることが出来るスタイルです。
最後に「完全分離型」の二世帯住宅です。同じ建物内でありながら、玄関から別々でそれぞれの家の内部で生活が完結できる住宅となります。内部に扉をつけてお互いの家に行き来できるケースもありますが、基本的にはプライバシーは完全に確保することが出来ます。
二世帯住宅の中でも、「互いの暮らしに干渉しない」ことを前提につくるのが完全分離型二世帯住宅です。核家族に慣れてしまった日本人の多くにとって、いきなり同居は難しいものです。近すぎず、遠すぎずの場所に一緒に住まうために、完全分離型二世帯住宅は取り入れやすいスタイルといえるでしょう。
2.完全分離型二世帯住宅にまつわる税金のこと
一般的には、住宅を新築した場合には住宅や土地についての減税措置がありますが、これが完全分離型二世帯住宅の場合、2戸分の減税措置が摘要されることもあるそうです。ではその減税措置の内容と、減税になる条件について見てみましょう。
まずは、「不動産取得税」は、50m2以上の家を新築した場合、1200万円控除されます。これが完全分離型二世帯住宅になると単純に二倍となり、控除額が合計2400万になります。(長期優良住宅の場合は1300万円/戸なので合計2600万円となります。)
次に「固定資産税」については、通常の一戸建てを新築した場合、3年度分の固定資産税が1世帯当たり120㎡まで半分に減額されます。これが完全分離型二世帯住宅の場合は、倍の240㎡まで摘要されます。
続いて「住宅ローン控除」は、家を新築する際に住宅ローンを利用した場合に、その年末時点のローンの残額により翌年以降の固定資産税が減税されるという制度なのですが、完全分離型二世帯住宅であれば、登記を「区分登記」もしくは「共有名義」にすることによって、住宅ローン控除を各世帯で受けることが出来ます。
最後に、「相続税」についてです。相続税の節税の中に「小規模宅地等の特例」というものがあります。これは、被相続人と同居していた土地を相続した場合に、330㎡までは80%減税されるというものです。ただし、こちらの特例は、「共有登記」の場合にのみ摘要されますので、注意が必要です。
このように、完全分離型二世帯住宅は金銭面でもメリットがありますが、税金の制度についてはお住いの自治体により変わる場合がありますので、事前に確認をしておきましょう。
3.間取りに共用部分をつくってしまったための「残念ケース」
先述のように二世帯住宅には、大きく
・同居型
・一部共用型
・完全分離型
がありますが、共用部分のある「同居型」「一部供用型」において後悔される方が少なくありません。
夫婦はそもそも他人です。それでもなお、人生を共にするという決意をし結婚をします。夫婦間でもときに大きなストレスが生まれることがありますが、親と共に住むとなるとさらに大きな問題をはらむことも考えられます。
大人が何人も集い、暮らす家をつくることには、「いずれ問題が生じる」ことも検討範囲に含めておかなければなりません。
3-1.生活の時間のずれがストレスに
たとえ人間関係が円滑であったとしても、親世帯と子世帯の生活時間帯のズレから暮らしのストレスを生んでしまうことがあります。
えてして高齢の親は早寝早起きになりがちです。一般的そして働き盛りの子世帯は夜遅くに就寝ということも珍しくありません。共用スペースを作ってしまったがゆえに、親世帯は「なかなか眠れない」、子世帯は「親が気になって食事やテレビを楽しめない」ということもあるでしょう。
3-2.価値観の違いが軋轢を生む
価値観の出来上がってしまった大人が同じ屋根の下で複数名生活する、ということは、ときに考え方がぶつかり、その後の暮らしに悪影響を及ぼしてしまうことがあります。
職場なら「仕事の時間だけお互いに我慢すればよい」と切り替えることができますが、家庭での出来事はそう簡単に“スルー”することはできません。特に一旦は同じ家で暮らすと決め、実際に家を建ててしまった後は後戻りすることはできません。
それでなくても、世に言う「嫁姑問題」は同居にあたってありがちなことです。これを事前に避けるためにも、完全分離型二世帯住宅にすることは必須、と言っても過言ではないでしょう。
4.売却するときも貸すときも、完全分離型二世帯住宅は有利
二世帯住宅にしたために家族関係が悪化してしまった、また円満に暮らしていても親が亡くなった場合は、家の売却を検討しなければならないでしょう。そのようなときも、完全分離型二世帯住宅であれば買い手がつきやすい傾向にあります。
完全分離型二世帯住宅なら、買い手は「1階は自分が住み、2階は賃貸にしよう」という考え方をしやすいからです。同居型の家ないしは一部供用型ならよほどの大家族でなければ購入の検討をしないでしょう。
最近は特に「大家族で暮らす」という家族形態はあまり多くありません。そのような近年の住環境を考慮しないと、いざというとき売却しようとしても売れない・安く売るしかない、という問題が発生します。
もし、親が亡くなったとき、空いたスペースを賃貸物件として貸し出すことができるのも完全分離型のメリットです。他人と共にスペース共有することに抵抗感を覚える人はまだまだ多数派で、シェアハウスにするとしても、その家の大家である相続人側に人を受け入れる心の余裕と管理能力が必要となりますので、そのハードルは高いでしょう。
3-1.相続人が複数名いるときも完全分離型二世帯住宅がよい
相続人が複数名いる場合も、完全分離型二世帯住宅が有利です。空いたスペースを使い複数名で暮らすこともできます。また、上で触れたとおり「売りやすい」ことから、売却で得たお金を分割しやすいというメリットもあります。
5.完全分離型二世帯住宅の間取りは横割りがいい? 縦割りがいい?
完全分離型の二世帯住宅のつくり方には、横割りと、縦割りがあります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、適した間取りを検討してください。
5-1.横割り(1階親/2階子)
足腰が弱ってもその家で過ごしやすいよう親世帯を1階に、元気な子世帯を2階にする方法があります。
この場合、外階段をつくり玄関を別にすることになります。出入りもほとんどわからないこととなりますので、二世帯住宅の安心感を得るためには「積極的に会う機会を作る」必要があるでしょう。
また、キッチンやバスルームなどのいわゆる水周りの位置を充分に考えます。深夜、子世帯で料理をする・入浴するとなると、排水音が1階に響くこともあります。また、何かしかのトラブルで2階部分からの漏水が起きてしまったとき、親世帯の生活に影響することも考えられるので、音と水の問題を起こさないよう、適切な対策をとる必要があります。
5-2.縦割り(いわゆる二戸一住宅)
長屋のように2棟の住宅でありながら外見からは1棟に見える「二戸一住宅(にこいちじゅうたく)」が、縦割りの二世帯住宅です。ほぼ同等の家を内壁で完全に分離することで、世帯を分けます。
上で触れた「横割り」で気になる排水音などの問題を避けることができます。しかしながら二世帯とも2階建てとしたときは、親世帯側でいずれ2階が使いづらくなることも考えておかなければならないでしょう。
縦割りのよいところは、二世帯いずれもが庭を持てるということです。お子さんが親世帯に遊びに行くことも自由ですし、自然に相互の見守りをすることができます。また、あまり考えたくはないことですが、火事に見舞われてしまったとき、どちらの世帯も地面に近いことから避難しやすいというメリットもあります。
6.完全分離型二世帯住宅のデメリットは?
様々なメリットが考えられる完全分離型二世帯住宅ですが、デメリットがないわけではありません。それは、「積極的にコミュニケーションを取る事を心がけがなければ、隣の他人になってしまう可能性」です。
お互いの暮らしを干渉しない完全分離型二世帯住宅は、心地よくもありますが、一方で同じ屋根の下に住んでいる安心感が過度に現れてしまうと、寂しい家になってしまうことも考えられるのです。
マンションや賃貸物件の“お隣さん”が何をしている人なのか、どのような暮らしぶりなのかがわからないのと変わりがない事と同じ様な状態です。これを避けるために、庭を使ってやんわりと繋がる、もしくは週に数回は食事を共にするなどの配慮をしなければなりません。
また、相続する人が2名以上だった場合、誰がその家に住むのか、家という形でない財産を手にすることができるのか、といった問題を生むこともあるでしょう。
これらを総合的に考えると、
・新しく建てる二世帯住宅でどのような暮らしをしたいのか
・親が要介護となったときだれが・どのようにケアをするのか
・相続人は何人いるのか
・家以外の財産はあるか
・いざというとき、家を売るという覚悟をもてるか
など、後の揉め事となり得る“問題の芽”を先に把握しておく必要がある、といえるでしょう。
また、昔ながらの同居(個々の寝室以外は全て共に使用する)の場合、キッチンやバスルーム、トイレなどの水回り設備はひとつで済みますが、完全分離の二世帯住宅の場合、これら設備を2セット作らなければなりません。単純計算で「水回り設備費用は2倍」となってしまうことも理解した上で家づくりに臨んでください。
7.快適に過ごせる完全分離型二世帯住宅の実例
7-1.完全分離型でもお互いの様子がわかる距離感をキープ
こちらの写真は、完全分離型二世帯住宅の子世帯リビングになりますが、正面の窓からは親世帯の庭を借景的に見ることが出来ます。窓から緑が見えることもいいですが、親世帯の様子も庭を通してうかがい知ることができますので、安心です。もちろんプライバシーを確保したい場合には、ロールスクリーンをおろすことにより調節できますのでその時々で使い分けができます。吹き抜け上部にも開口部がありますので目線を遮りつつも、明るさをキープできるのもいいですね。
7-2.完全分離型でも行き来がしやすい作り方
こちらの事例は、玄関が2つある完全分離型二世帯住宅でありながら、子世帯の玄関を入るとすぐに、親世帯へと通じる引き戸が設置されています。二世帯住宅のいいところは祖父母と孫の交流がしやすいことがありますが、このように家の内部にお互いが行き来できる扉があると、より気軽に交流ができるのがいいですね。また、階によって親世帯子世帯を分けることによりワンフロアーを子世帯のリビングだけに使えるので、広々とした空間も実現できます。
7-3.完全分離でも交流する場所を作る
こちらの事例は、完全分離型二世帯住宅ですが、子世帯の1階に土間スペースを作り、そのスペースを両世帯の交流の場としています。子世帯のLDKは2階に設置されているので、LDKでは子世帯のプライバシーをキープしつつ、この土間スペースは親世帯、または友人たちを集めて楽しめるパブリックスペースという使いわけができるのは使い勝手が良さそうですね。土間になっていることで内と外の境界があいまいになり、世代を超えた交流を含めた自由度の高い使い方が出来ます。
7-4.平屋で贅沢な、完全分離型二世帯住宅
こちらの事例は、平屋の完全分離型二世帯住宅です。中庭を通じてお互いの気配が感じられる作り方ですが、平屋のいいところは、上下階に分けたときに生じる音や振動のトラブルがないことでしょう。また、平屋であれば、階高を高くして、開放感を味わえる空間を作ることが出来るのもメリットの一つです。中庭にはウッドデッキを配して、アウトドアリビングとして使っているということですが、アウトドアリビングがあれば親世帯子世帯の交流もしやすくなりますね。
8.二世帯住宅を建てるなら完全分離型はオススメ
「超高齢化」が進む日本において、国も二世帯の家づくりに補助金を出したり、税金の面での優遇策を設けたりと、様々な対策を始めています。家づくりに必要な資金を圧縮できる可能性もある二世帯住宅は、これらのサポートもあり人気が出てきていますが、注意点も少なからずあります。
間取りの工夫やちょっとしたアイディアで、それぞれの家族の快適な暮らしが実現します。親と子、そして孫がいっしょに暮らす二世帯住宅は、心地よい関係をおだやかに育んで行けるライフスタイルと言えそうです。
9.中古物件の二世帯住宅を検討するなら
もし、新築ではなく中古物件で二世帯住宅を検討している場合ですが、お伝えしてきた通り二世帯住宅にはさまざまな間取りのパターンがあります。二つの世帯が同居する二世帯住宅では、お互いの生活スタイルや家族構成など検討する点も多くなります。二世帯住宅の場合、一度住み始めると引っ越しも容易ではなくなりますので、事前にしっかりと検討することが大切です。
今、あなたが思い描いている二世帯住宅はどのようなものでしょうか。注文住宅ならではの二世帯住宅の工夫を見てみたいと思われませんか。使い勝手がよい上、個性的な二世帯住宅の事例をご覧になってください。