開放的な大開口・大空間の家を実現するための6つのポイント

陽光がたっぷり入る大きな窓のある、広々としたリビングは、「明るい家」「開放感のある家」として人気のある間取り。その中でもとくに希望が多いのが、リビングから窓やデッキ、テラスへつながる空間や、吹き抜けのあるリビングで縦につながる空間づくりです。
このような間取りを取り入れた、快適な暮らしのための家づくりには、さまざまな技術力が必要です。そこで、大開口・大空間を取り入れることのデメリットやメリット、さらに家づくりのポイントをご紹介します。
開放的な大開口・大空間の家を実現するための6つのポイントのインデックス
1.明るさ、開放感、一体感は抜群! 大開口・大空間のメリットとは
大開口とは一般的に、リビングから庭やデッキ、テラスにつながる開口部を大きく取った窓のこと。通常の掃き出し窓よりも大きな、ワイドタイプやスライドタイプなどを採用したり、吹き抜け窓を設置することで、ダイナミックな開放感に溢れた大空間を得ることができます。さらに窓の面積が大きい分、陽光をたっぷりと室内に取り入れることができます。
もう一つのメリットは、リビングに大開口・大空間があることで、庭やデッキとの一体感を得られることです。大きな窓をフルオープンにすれば、リビング空間をデッキやテラスまで広げることができます。足もとは段差のないフラットタイプを採用することで、より一体感が生まれ、さらに出入りもしやすいでしょう。
大きな開口部をオープンにすることで、庭やデッキでバーベキューをしたり、大人数でパーティーをしたり、子どもたちがデッキで遊んで室内と行き来できたりと、さまざまな使い方で楽しめます。
2.明るくて気持ちのいい家のはずが、不快のもとになっている?
日差しを取り入れるはずの大きな窓(大開口)は、同時に熱が逃げる場所でもあります。一般的な木造住宅内から熱が逃げる箇所は大きく次のようになっています。
・開口部―48%
・外壁―19%
・すきま風や換気―17%
・床―10%
・天井や屋根―6%
この知識があれば、次のようなデメリットと対処法を想定することができます。
2-1.断熱性能が大きくダウン―夏は暑く、冬は寒い家になってしまう可能性も
上記に挙げたように熱ロスが起こる部分のほぼ半分が開口部であるのなら、そこを大きく広げる大開口の家はときに「暑く寒い家」となってしまうことは想像に難くありません。
冬場、大きな窓ガラスが日中の暖かさを取り込むことができるのは、太陽がさんさんと射すお天気のよい昼間だけです。日光のあたたかさはあっても、外気そのものが室温よりも下回っていればやはりガラスから熱が逃げていくこともまた事実です。
夏はどうでしょうか。夏もまたエアコンで快適な室温を実現していても、ガラスから入ってくる太陽光の熱で室温は上昇傾向にあります。その状態でも快適さを求めようとすると、エアコンをフル稼働させなければなりません。
開口部を大きくとると見た目の開放感・明るさを得ることができますが、同時に熱ロスの問題が大きくなってしまうデメリットも知っておきたいものです。
2-1-1.【熱ロス対処法】トリプルガラスなど、断熱性の高い窓が必須
この窓からの熱ロスを防ぐためには、熱を逃がさない工夫を施した「トリプルガラス」「ペアガラス」を導入する必要があります。これらは通常のガラス1枚のサッシと異なり、2~3枚のガラスの中に特殊なガスを封入するなどの工夫によって、外気と室内の温度が急激な変化を低減します。
特に夏の暑さが気になる場合は、ガラスの表面に金属膜加工を施したLow-Eガラス(Low Emissivityの略で、低放射の意)を取り入れることも検討してください。赤外線や紫外線を反射し、真夏の(特に西側の部屋の)暑さを軽減することができます。
金属のサッシもまた、熱を伝える働きが大きいことで知られています。冬の寒い日、夏の暑い日、空調によって外気温と室温が大きくかけ離れてしまったときに生じる結露を目にするのは、ガラス部分のみならず金属サッシの部分でもあります。
この部分を樹脂製に変えることで、熱をやり取りする働きを大きく低減します。例えば、樹脂製サッシのペアガラスと、従来型のサッシ窓との比較をしたとき、熱の逃げにくさは4倍にもなるといいます。確かにコストはかかりますが、建築後にかかる空調のランニングコストを考え長い目で見たときには押さえるべきポイントです。
2-1-2.【熱ロス対処法】熱のコントロールに「パッシブデザインの考え方」を
冬には太陽光を取り入れ、夏には日差しをよける工夫をする「パッシブデザイン」。これは以前の「2.パッシブでつくるエコハウス」でもご説明しましたが、改めて触れておくことにします。パッシブデザインとは、私たちの身の回りにある自然エネルギーを上手に取り入れる工夫です。
夏の暑さをしのぐためには
・ひさしや軒を大きめにつくり、室内に入る太陽光をさえぎる工夫
・ひさしや軒を大きく確保できないときは、シェードやルーバーを設置
・落葉樹を庭に植えて庭から入る太陽光を遮断
・風の通り道を確保して熱気を溜め込まないようにする
ことが大切です。
冬の寒さを抑制するためには
・角度の低い冬の日光を室内に取り入れる工夫(夏に必要なひさしや軒の大きさとの兼ね合いを計算)
・冬には葉を落とす樹木で太陽光を遮断しない工夫
が大切です。
3.大空間はどんなデメリットが? 工夫次第で問題もなし
大開口の開放感と同時に好まれているのが、「大空間」です。これまでの日本の住宅は「ここまでが何の部屋」と明確に区切ってきましたが、近年顕著なのが、「キッチンとダイニング」「ダイニングとリビング」を広く取ることです。これらを一体化、広くつくることがトレンドとなっています。
キッチンで一人寂しく食事を作る人、テレビを見ながら食事が出来上がるのを待つ人…そういう気持ちの分断も避けることができることから人気です。また、1階と2階を完全に区切るのではなく、縦に広がる「吹き抜け」も広く採用されていることはご存じの通りです。このような大空間でもまた、「熱ロス」の問題が生じがちです。それぞれの部屋でファンヒーターやストーブを使ってきたこれまでの家のイメージから想像がつくように、「1台のエアコン(ストーブ)で大空間の快適温度をキープできるのだろうか」という心配事です。
3-1.家全体の断熱性能に着目、熱を逃さない・入れない工夫を
大空間を快適な場所にするためには、家全体の断熱性能を上げる必要があります。いわば、家を「魔法瓶化する」という考え方で、適切な断熱材の種類と量ですっぽりと家を包み込むものです。断熱性能を上げると、大空間であっても暑い・寒いをあまり意識せずに済むうえに、基本的に眠るだけの寝室の暖房や冷房をしなくてもよくなります。
日本は狭いとはいえど、南北で気候が大きく変わりますので、必要な断熱性能はその地域により異なります。家を建てるエリアによって提案された断熱性能が適切かどうかを知る必要もあります。
3-2.立体的な「風の通り道」を確保すれば大空間も怖くない
熱の出入りが大きくなりがちな大空間であっても、三次元的な風の通り道を考えておけば大丈夫です。吹き抜けリビングは縦に大きな空間で、熱い空気は上層に、冷たい空気は下層にたまりやすいものですが、夏は上層の熱い空気を上手に抜くしかけを、冬は温まった空気を下層に回すしかけを施しておけばよいのです。
その工夫の中で目に見えてわかりやすいのがシーリングファンです。夏のエアコン使用時に下層にたまりがちな冷たい空気を上層にまで届けるため、シーリングファンを下向きにまわせば、上手に攪拌ができます。せっかく温めた空気が上層に昇ってしまい足元が寒くなる冬は、シーリングファンを上向きにまわせば、暖かい空気が内壁づたいに降りてくるので大空間でも寒さを感じることがありません(※3)。
視覚的に理解しづらくても、明確な効果があるのがパッシブデザインです。吹き抜けとは別の位置にスケルトン階段を設ける工夫をすれば、暖房効果で上に昇る温かい空気が生じて上層にたまってしまっても、吹き抜け上部から階段部分へと暖かい空気がおしやられ階段伝いに下層へ回るという緩やかな空気の循環が生じます。どんどん上層に昇る空気の力で温かな空気を下層部に押し出すようにおろすことができるのです。
吹き抜けの上部、もしくはロフト上部といった熱い空気がたまりやすい場所に開閉できる天窓(トップライト)やドーマーを設ければ、夏のあの滅入るような暑さを経験することもほとんどありません。
空気の性質を利用したパッシブデザインも、冬は暖かく夏は涼しい家を実現するための手法のひとつです。
4.大開口・大空間の断熱性をさらに高めるための、3つのコツ
大開口・大空間による日当たりのよさや開放感といったメリットを活かしつつ、デメリットである断熱問題をクリアするためには、ちょっとしたテクニックを取り入れることで解決できることがあります。そこで、大開口窓の断熱性をさらに高めるための3つのコツをご紹介しましょう。
4-1.窓の向きに注意して間取りを決める
ガラスの面積が広い大開口窓は、外気の影響を受けやすいため、プランニングの段階で窓の向きをしっかりと検討する必要があります。とくに、冬場はできるだけ室内に温かな日差しを取り入れたいのであれば、南向きまたは東向きの大開口がベスト。朝から日中にかけて日が差し込み、ポカポカと気持ちよく過ごすことができます。ただし、夏の日差しには注意が必要で、これから紹介する庇や軒などを外観デザインに組み込んだり、植栽などで陽光を遮ることも必要です。
一方で、北向きの大開口は、真夏の暑さはかなり軽減することができますが、冬場は室内の温度が低くなってしまいます。こうなると、効果的な断熱効果は得られません。
また、西向きの大開口は日中の日差しが入りにくく、午後から夕方にかけて西日が強く差し込んでしまいます。夏の午前中はあまり陽が当たらなくていいものの、午後からは室内の温度が上がってしまい、夜にかけても高いままになってしまいます。
窓の向きは、土地を選ぶ段階で考慮することができますので、建築家や設計士の方に相談しながら、土地選びをするのが賢い方法です。
4-2.庇や軒のある外観デザインにする
凹凸のないシンプルな建物では、庇や軒を充分に作ることができず、窓からの陽光がダイレクトに室内に入ってきてしまうことも考えられます。
そこで有効なのが、昔から日差しを遮る役割を果たしてきた屋根の軒や、窓につける庇です。上階のベランダやテラスを活かして庇がわりにしたり、屋根を大きくして軒にしたりと、外観のデザインを工夫することで、陽光の入り方を調整することができます。
また、デッキ部分に庇や軒があることで、外空間の使い勝手がぐっとよくなることもあります。雨の日でもデッキに出ることができたり、雨風がガラスに直接かからないなど、断熱以外のメリットも大きいでしょう。
4-3.植樹やグリーンで、自然な形の断熱をする
開口部の庭やデッキ側に、比較的スペースがあるようなら、植樹やグリーンなどで、自然な日陰を作るのもいいでしょう。植樹の種類はさまざまですが、断熱効率を高めるのが主な目的であれば、落葉樹がおすすめです。春から夏にかけては、葉が青々と茂り、陽光を適度に遮ってくれます。逆に秋から冬にかけては、葉が落葉することで、室内に日差しが入ります。
また、落葉樹を敷地内に植えることで、家に居ながらにして、四季折々の季節の移り変わりを身近に感じることができるのもメリットですね。ただし、あまりにも大きく成長してしまう植樹などは手入れが大変になったり、落ち葉の処理なども手間になるので、どんな種類を選ぶのかはよく検討するようにしましょう。
5.大開口・大空間の家が抱えてしまう「耐震性」の問題は
地震や台風のときには「柱や壁の多い部屋(トイレやバスルーム)が安心」という話をお聞きになったことがあるでしょう。そう聞けば、大開口・大空間の家で柱や壁が減ってしまうことによる耐震性に問題はないのか、という疑問が生まれます。キッチンとダイニング、ダイニングとリビングをつなぐために、または吹き抜けを実現するために柱や壁が少なくなる大空間部分は、2階や屋根を支える力が弱くなってしまうのではという心配も生じます。それはある意味で正しい理解です。しかしながら、これにも対処法があります。
5-1.アクセントとして柱を入れることも一考
リフォームのときによく用いられる手法として、壁は落としても柱は残すという方法があります。新築の家であってもこの手法を採用することがあります。リビングとダイニングとする部屋の間の壁のみを排除し、耐力上必要な柱を設けるのです。テーブルなどの作り付け家具と一体化させることで柱の存在感を消す工夫もでき、比較的取り組みやすい大空間のつくり方といえます。しかし、「柱があったら自由に子どもが走り回れない」「私が希望する本当の意味での大空間ではない」といったときには、別の方法を考えます。
5-2.木造であっても大空間をつくれる工法の検討
柱と柱の間に渡す梁の長さのことを「スパン」と呼びます。ロングスパンの建物といえば、体育館や商業施設など、RC造(鉄筋コンクリート構造・Reinforced Concrete Constructionの略)を思い起こすことでしょう。これを一般の木造住宅に応用したのが「SE構法」です。木のもつ温かみを保ちながら強度を担保する集成材を使用し、柱と梁を独特の金物で接合することで、筋交い(ブレース)や耐力壁が不要なロングスパンの建物を実現します。その実力は「車を3台入れることのできるビルトインガレージ」をも作れるほどで、9メートルの大開口を確保できます。
ビルや大規模建築物と同等の構造計算システム(国土交通大臣認定)でその強度を計算し、耐震性を数値で表すことが可能なSE構法の家は、大開口・大空間の間取りでも安心です。
6.大開口・大空間を素敵に取り入れた、4つの実例紹介
実際に、リビングルームに大開口や大空間を取り入れたお宅をご紹介しましょう。窓や庇のデザイン、外とのつながり方を参考にしてみてください。
6-1.大開口から自然のエネルギーを楽しむ住まい
両サイドに開くタイプのワイドな大開口は、天気のいい日には大きく開け放って、室内の空気を全交換できます。爽やかな風が入り、気持ちよく過ごすことができるリビングです。
開口部から通りに向かって、遮るものが何もなく、陽光がたっぷり入る間取りです。そのため、デッキの上部に庇をつけることで、光の入り方を調整しています。1階のリビングであれば、窓を開け放ってデッキに出たり、庭に降りたりと、室内と外に区切りがなく、まさに開放感抜群の大空間を感じられる家になるでしょう。
6-2.大開口と吹き抜けのある大空間リビング
掃き出し窓の上に、天井までのダイナミックなハイサイドライトと吹き抜け空間で、たっぷりの陽光を確保し、大空間を実現したお宅。白でスッキリと統一した室内が、さらに明るく解放的に感じられます。昼間でも室内の奥まで光が届くので、照明も必要ないほど。
窓の向こう側は壁に囲まれたプライベートガーデンになっているので、大開口をオープンにしても、周囲の視線を気にせずに過ごすことができます。
6-3.大開口でありながら、プライバシーも確保された大空間
吹き抜けのないリビングでも、ワイドタイプの大開口にするだけで、温かな日差しがたっぷり入り、大空間のような開放感も感じられます。ただし、開口部の向こう側を庭やデッキにしてしまうと、通りや周囲の建物からの視線が気になり、カーテンやブラインドを閉めたままにしなければいけない場合も。
そんな時はこちらのお宅のように、壁で囲まれたプライベートテラスにするのがおすすめ。日差しはしっかり確保しながらも、視線を気にせずにリビングやテラスで過ごすことができます。
6-4.大開口の窓で家族とのつながりを感じられる家
中庭のある平屋建ては、大開口窓との相性がいい住宅。内側に向かってのみ開かれているので、周囲からの視線が気にすることなく、大開口が実現できます。また、開口部を大きくすることで、家のどこにいても、家族の気配をお互いに感じ合うことができるのもメリットです。
こちらのお宅のように、窓の向きによって庇をつけるのもいいですね。庇があることで、室内に入る陽光を調節できたり、雨を防いだり、デッキの使い勝手をアップさせます。さらに中庭は家族のコミュニケーションの場になり、デッキに腰をかけて過ごす時間も増えそうです。
まとめ
誰もが憧れる“大きな窓、広い空間の木造住宅”は、SE構法の家で実現できます。ダイナミックな大開口があれば、たっぷりの陽光を室内に取り入れたり、吹き抜けで開放感を出したり、リビングを庭やデッキと一体化させることができます。
大開口や大空間の家を手に入れたいのであれば、そのメリットとデメリットをあらかじめ知っておき、そのデメリットを解決できる技術を取り入れることも大切。さまざまな手法や技術を取り入れて、明るく開放感のある家づくりをしてみませんか。
【大空間、大開口の施工例一覧】はこちら