和室の基礎知識! 洋室と上手に組み合わせておしゃれな和室をつくるコツ

和室の基礎知識! 洋室と上手に組み合わせておしゃれな和室をつくるコツのインデックス
フローリングの普及に押されて、一時期は存在の危機にさらされてきた和室ですが、ここへきて再度注目されてきました。ゆったりとごろ寝したり、日本家屋の風情を取り込んだりと、洋室にはないリラックス効果が見直されてきているからです。
そこで、和室の基礎知識や和室のメリットとデメリット、洋室と上手に組み合わせておしゃれな和室をつくるコツなどを解説します。
1.和室の基礎知識
和室=畳のある部屋、と考えている方も多いかもしれません。ですが、和室は日本の伝統的な様式の部屋のことですので実際には畳の他にも様々な構成要素があります。
・床の間
掛け軸や花・置物などを置く、座敷飾りのひとつです。全体の印象を左右するため座敷の顔と言われます。床の間には「床柱」と呼ばれる化粧柱があり、この床柱にどのような木材を使うかも和室の印象が大きく変わるポイントです。
・鴨居/敷居
障子や襖などの建具の上に造られる横木です。上部にあるのが鴨居、下部にあるのが敷居となっており、障子や襖をはめ込む溝が入っています。
・長押(なげし)
柱と柱の間に水平に取り付けられた横木です。本来は構造材でしたが、現在は装飾材となっています。鴨居の上に取り付けられる内法(うちのり)長押や天井に接する部分の天井長押、柱の下端をつなぐ地長押などの種類があります。
・欄間
長押や鴨居の上に設置されます。透かしや格子彫りの装飾板をはめ込み空間を緩やかに仕切り、通風や採光を兼ねた装飾です。
上記のほかに、襖や障子が使われているのも和室ならではの特徴です。障子は空間を仕切りながらも光が透けるため、部屋全体を明るくしてくれます。また、襖や障子はスライドで開閉するため、ドア周辺のスペースを有効に使うことができるのも洋室にはないポイントですね。
2.和室について知っておきたいメリット
日本人なら、和室で過ごす気持ちよさについて異論を唱える人は少ないと思います。和室は、日本の伝統的な居住空間です。けれども、和室のメリットを知れば、あなたの家づくりにも和室を取り入れたくなるのではないでしょうか。
2-1.リラックス効果がある
和室は、その落ち着いた雰囲気や自然素材の使われ方によって、リラックス効果が期待できます。畳や木材の香りやその感触など、五感の全てを使って和室の良さを味わうことができます。
例えば、畳の上で寝転ぶとほっとした気持ちになるように、和室の自然素材が、私たちの心を和ませ、日常のストレスを解消してくれるでしょう。また、和室は床に座るスタイルであることから、ヨガや瞑想などのリラックスできるアクティビティを行うのにも適しています。
2-2.クッション性と防音効果がある
畳は、表面にイグサを編んだものが張られ、その内部には藁を圧縮させたもの、最下層は木材の板という構成になっています。そのため、フローリングやカーペットにはないクッション性があり、人に優しいと言えます。
赤ちゃんの遊び場や年配の方が過ごす部屋として使えば、ケガのリスクも少なく安心です。また、ある程度の防音効果が期待できることから、足音の気になる2階や3階に和室を設けるのもいいでしょう。
2-3.調湿性が高い
和室の素材は自然由来のものが多いため、調湿性が高いというメリットもあります。和室に使われる畳には、湿気を吸収し、必要なときにその湿気を放出してくれるという機能があるのです。これにより、室内の湿度を一定に保ち、乾燥したり湿度が高くなるのを防ぎます。
特に、湿度が高くなりやすい梅雨や夏場などに、快適な室内環境を維持するのに役立ちます。また、湿度が安定することで、木製の部材や家具などの劣化を防ぎ、室内の空気も清潔で快適に保たれます。
3.和室について注意しておきたいデメリット
和室の床部分は畳です。畳は傷がつきやすく、時としてカビ・ダニの温床となることがあります。高温多湿な日本の気候では神経を使わなければならない部屋となってしまうこともあるのです。
また、和室にしつらえる建具(ふすま・障子)は和紙で作られていますので、定期的に張り替えなければなりません。特に小さなお子さんがいらっしゃるご家庭なら、破られてしまった障子の手入れはとても面倒な作業になるでしょう。
親御さん用の部屋として和室をつくっても、将来的に布団ではなくベッドでの生活が楽になったとき、和室から洋室へのリフォームが必要になることも考えられます。
4.和室と洋室を上手に「同居」させるコツ5つ
日本家屋の風情のある和室と、掃除やメンテナンスが楽で手間いらずな洋室をうまく組み合わせた家づくりが流行しています。それぞれの良さを追及する5つのコツをご紹介します。
4-1.リビング・ダイニングの一部に小上がりの和室を作る
リビングやダイニングの一角に小上がりの和室を作ってみるのはいかがでしょうか。ママ・パパがキッチンで炊事をしながらお子さんを見守ることもできますし、和室で一緒に洗濯物をたたむなどの作業もできます。
ご高齢の親御さんがいらっしゃるご家庭なら、お部屋として使ってもらいながら、自然な見守りもできます。必要なときは障子やふすまを閉めれば個室となりますので、臨機応変な対応が可能です。小上がり下部には収納スペースを作ることもできますので、お子さんのおもちゃや座布団、お客様用の布団など、たっぷり収納できます。
洋室と和室を近接させる場合は、色合いを統一すると違和感を覚えることもありません。
4-2.窓際にベンチのような畳スペースを設置
独立した和室をつくるスペースがなくとも、窓際にベンチのような畳スペースを設ける方法もあります。畳の気持ちよさを楽しみながら、ときにごろ寝もできる場所があれば、和室のデメリットを最小限にとどめながら和の風情を取り入れることができます。
4-3.フローリング洋室を一時的に和室にする
バリアフリーの観点や掃除のしやすさから全室をフローリングにしたとしても、和のテイストを取り入れる方法があります。
少々段差が生じてしまいますが、フローリングに直置きできる「琉球畳」という商品があります。琉球畳とは、縁のない真四角の畳のことです。本来は「七島イ(しっとうい・カヤツリグサ科)」と呼ばれる日本独特の畳表を使用したもののみを琉球畳と呼んでいました。柔道の畳としても使われてきましたが、今ではそれもビニール畳に変わり、現在は大分県国東半島・杵築市のみで栽培されている高級品です。
しかしながら、縁のない畳は今でも琉球畳と呼ばれ、自由自在にフローリングに敷ける置き畳として重宝されています。メーカーにオーダーすれば、その部屋に合うサイズや素材(ビニール・和紙など)、色合いで作ってもらえます。部屋の模様替えをしたいときや畳が必要なときだけ和室風にすることが可能です。
ご家族の中に和室を希望される方がいながら、将来の実用面で不安を感じる場合は、琉球畳で和室とすることもひとつの考え方です。
4-4.縁無し畳やカラー畳を取り入れた和室にする
和室の良さを生かしつつ現代的な空間をつくるのにおすすめなのが、畳の交換です。伝統的な縁のあるものではなく縁がない畳を選ぶだけですっきりとしたモダンな印象になります。また、クローゼットや扉の色に合わせたカラー畳を選ぶことで様式の家具類とも調和した和モダンな雰囲気の和室をつくれます。
4-5.照明や採光の工夫でおしゃれな和室に
照明や採光の工夫によっても和室の印象は変わります。和紙素材の照明器具などはナチュラルなテイストの洋室とも相性がよく調和をはかりやすいでしょう。また、主張の少ない間接照明や足元付近の採光窓などを取り入れ、あえてこじんまりとした造りにすることで茶室のような雰囲気を残しつつおしゃれな空間にすることができます。
5.和室をフル活用するために大切なこととは?
和室を上手に無駄なく使うためには、少しの工夫が必要です。畳の特徴を知り、快適な和室をつくりましょう。
5-1.畳は傷つきやすく、ときにダニの温床となる
一般的な畳は、薄い畳表で芯をくるんだつくりとなっています。そのため、家具を移動させたりするときに傷つき、ほころびが生じることもあります。丁寧に取り扱いをする必要があります。
また、畳表には細かな隙間が多くあり、ここに溜まってしまうヒトの皮膚やフケなどをエサにしてダニが発生してしまうことがあります。コナダニ・チリダニ(ヒョウヒダニ)・ツメダニなどが繁殖することで、アレルギー症状を発してしまう方もいらっしゃいます。これを防ぐためには、定期的に換気をし、丁寧に掃除機をかけることが大切です。
長時間閉め切る部屋や、空気がよどみやすい位置に和室を設けると、健康面での心配が発生することがあるのです。特に梅雨場は温度・湿度ともにダニが発生しやすい条件が整っていますので、丁寧な掃除を行うとともに、除湿機ないしはエアコンの除湿機能を使用することも必要です。
5-2.可能な限り家具などを置かない
家具を置くとその重みで畳に形が残ってしまいます。また、均等に変色することができませんので、家具を撤去したときに違和感が残ってしまいます。
上記のように、模様替えの際に違和感が出てしまうので可能な限り大きめの家具を置かないようにしましょう。畳の上にラグなどを置くのも同じ理由で避けたいところです。造作の収納を設けるなどして、家具を置かないすっきりとした部屋にすることをおすすめします。
5-3.メンテナンス時期を見逃さない
畳は2~3年経過すると色あせや汚れが目立ってきますので、畳表を裏返すメンテナンスが必要です。また、5年経過すると畳表そのものが傷んできますので畳表を張替えます。そして、10~15年で畳を新しいものに交換します。
日々のお掃除だけでなく、このタイミングを逃さないように手入れをすれば、いつも気持ちのよい和室をキープできます。
5-4.ペットを飼っているのなら、専用畳を
和室に欠かせない畳は、フローリングで足がすべりがちなペットにとって快適な居場所となります。しかしながら、爪あとが残ったり、ペットのニオイや菌が発生したりと、問題も起こりがちです。もしもペットを飼っている・飼う予定があるのであれば、ペット飼育に対応した畳を選ぶとよいでしょう。
6.おすすめの和室の使い方4選
和室は、日本人にとって心地よい空間です。昔ながらの機能美に加え、趣のある雰囲気やデザイン性が魅力の和室。ここからは、おすすめの和室の使い方を見てみましょう。和室ならではの特徴に適した居心地を楽しめますよ。
6-1.客間として使う
引き戸やふすまで仕切れる和室は、大切なゲストをお迎えする空間として最適です。目上の方や、海外のゲストにも喜ばれるでしょう。個室としてプライバシーを確保することができるので、短期間であればゲストに宿泊してもらうことも可能です。座布団や座卓のある、伝統的な和のおもてなしも喜ばれるでしょう。掘りごたつ式にすれば、正座が苦手な方にもくつろいでもらえますね。
6-2.子供の遊び場
畳はクッション性が高く、転んだ際の衝撃を和らげてくれるので、ケガの心配が少ないという特徴があります。そのため、小さい子供が寝転んだり、這ったりしても安心できる環境と言えます。また、床に直接座るスタイルが基本となるので、絵本の読み聞かせやカード遊びをなど、親子で体を寄せ合える空間としても最適です。日本の文化を知るという点でも、子供が小さい頃から畳を体感できるのは貴重な経験と言えるでしょう。
6-3.家事などの作業スペース
和室は、家事などの作業スペースにも適しています。畳の上に座りながら作業ができますので、洗濯物を畳むなどの家事も行いやすいでしょう。座卓を置いていれば、アイロンがけや、裁縫などの家事もできるでしょう。またそのほかにも、パソコンやノートを使って仕事や家計簿の記帳や、子供の宿題など、様々な作業の場として使えます。畳の部屋は掃除もしやすいので、和室は家事の効率化に役立つと言えるでしょう。
6-4.和の雰囲気を楽しむ
和室での最大の楽しみは、その和の雰囲気に浸るということでしょう。旅館に行った際、畳に座り、窓からの景色を楽しみながらお茶を飲んでいると、不思議と気分が落ち着いてくるものですよね。こうした風情ある体験ができるのが、和室の醍醐味です。日常を忘れ、非日常的な時間を過ごす。和室を作れば、普段とは少し違う、優雅で心地よい空間づくりを実現することができます。
7.和室と洋室を上手に組み合わせた重量木骨の家の施工例
和室は、日本家屋の風情を取り込むことができ、い草の香りがする等心地よい空間です。つくり方によっては、洋室にも負けない便利さも生み出すことができます。お子さんや親御さんのお世話をするとき、またはお客様が宿泊する際のお部屋に最適です。
洋室と和室を上手に組み合わせた家にご興味はありませんか。間取りのみならず、畳の色合い・建具のしつらえなど、センスのよい「和洋折衷」を実現した家の事例をご紹介します。
7-1.色合いが統一された和洋折衷のリビング
ソファやテーブルなど洋式家具でそろえられたリビングのすぐ横が和室になっているこちらのお宅。和室の襖は収納できるようになっており、収納襖をしまえばLDKがひと続きとなった大空間にできる間取りになっています。フローリングや天井を支える横木がナチュラルな色合いに統一されていることも相まって、違和感なく和洋折衷されています。リビングの照明にぼんぼりのような丸い形のものを取り入れていることも調和のポイントになっています。
7-2.カラー畳とアクセントクロスでシンプルモダンな和室に
シンプルモダンなこちらの和室。天井から床にかけて視線を上から下へうつすと、天井の木目のダークブラウンからアクセントクロスになっている奥の壁のグレージュ、そして明るいベージュの畳が美しいグラデーションになっています。そのため、シンプルで落ち着いた雰囲気でありながら寂しい印象にならないようになっています。部屋全体が落ち着いたトーンのため、左側の白い扉のクローゼットも違和感がありません。
7-3.畳の色が映える色合い爽やかなリビング
スキップフロアで小上がりの畳スペースを設けたこちらのリビングも素敵です。襖や壁など視線を遮るものではなく段差で空間を区切っているため、ひとつづきでありながらリビングと和室にしっかりと境界ができています。北欧テイストで落ち着いた色合いのリビングに畳のライトグリーンがアクセントカラーとなって見事に調和していますね。色合いも爽やかで、家族でくつろいだり、ちょっとお昼寝をしたりするのにちょうど良いリラックス空間になっています。
7-4.趣の異なるスペースをスキップフロアで上手に共存
スキップフロアで空間を区切る場合は、小上がりだけでなく下がったところを和室スペースにするのも一案です。スキップフロアの下がったスペースを和室にすることでリビングからの視線が届きにくくなり、空間はひと続きでありながら洋風リビングと趣の異なる和室も違和感なく共存させることができます。写真のように、階段部分や机、天井を同じトーンのダークブラウンで統一し、モダンでありながら老舗旅館のような大人な和室も素敵ですね。
7-5.吹き抜けの大空間の和室とつながる畳リビング
フチなしの畳が特徴的なこちらの事例。和室の引き戸を全て引き込むと、リビングとフラットにつながり、空間をより広く感じることができます。リビングにも和室と同じくフチなしの畳を敷いており、和の雰囲気を連続して感じることができます。また、リビングの上部には吹き抜けが設けられ、大開口からは太陽の光が差し込み、明るい空間を作り出しています。和の落ち着きと明るさがマッチした、心地よい空間です。
7-6.多彩に使えるナチュラルな印象の和室とリビング
こちらの和室は、伝統的な作り方に準じた、床の間を持つ6畳間です。引き戸を引き込むと、リビングと和室が一体となり、伸びやかな空間が広がります。和室には明るい色の木材を使用し、収納の扉も襖ではなく木製とすることで、リビングとの統一感を高めています。LDKの上部には吹き抜けがあり、開放的な雰囲気です。一方、和室は通常の天井高を保ち、温かみのある照明が、和の趣と落ち着きを演出しています。伝統とモダンが融合した、新しい和室のデザインと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。コツをおさえれば、和室と洋室を上手に組み合わせたおしゃれなマイホームも夢ではありません。重量木骨の家では、今回ご紹介したほかにも美しさと機能性を兼ね備えた和室を取り入れた豊富な施工例があります。ぜひ、和室や畳の基礎知識を踏まえて、和室の良いところを最大限に取り入れた理想の家つくりの参考にご覧ください。