【実例紹介】玄関土間を作る時の注意ポイント、把握すべきデメリット

【実例紹介】玄関土間を作る時の注意ポイント、把握すべきデメリットのインデックス
古い日本家屋でよく見る土間が、今また見直されてきています。土間は、明治時代までは家の中にあることが当然の空間でした。農業と並行して家事を行うという生活スタイルの都合上、土足のまま入れる土間には、台所を設置して家事と農作業の両方を行いやすくするという役割が有ったからです。
しかし、現代の土間の特徴は、これまでの固定概念にとらわれず、とても自由で伸びやかです。もしも、使い道が固定されていないスペースを手に入れたとしたら、何をしてみたいですか? 面積を広くとっておしゃれな空間を演出する場所として、また便利な収納スペースとしてなど、土間の役割は見直されてきています。まさしく自由な空間、それが現代の土間です。では土間のメリット・デメリットを見ていきましょう。
1.土間を作ると、こんな風に楽しめる
土間は家の内部にありながら、屋外のように土足で使える「しなやかな場所」です。その柔軟な発想で使える空間は、暮らしに変化をもたらしてくれますが、具体的にどのように使えるのでしょうか。
1-1.自転車やバイク、ベビーカーなど小型の乗り物の収納場所に
自転車・バイクやベビーカーを持っている方は、どこに置いていらっしゃるでしょうか。置き場所に困って、庭やカーポート、狭くなるのを覚悟の上で玄関にしまっている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。土間があれば、これらのものを心置きなく屋内にしまうことができます。これなら盗難や風雨の心配がありませんし、他のスペースを占領することもありません。また、必要とあらば室内で手入れもできます。
こちらの事例のように高さ方向にもスペースを有効に使えば空間を広く使えますし、また収納スペースでありながら、ただ仕舞うのではなく、見せる収納になるのでそのままインテリアの一部として機能します。このように趣味と実用の場となってくれるのが土間です。
1-2.ストーブ置き場に
暖房器具にストーブ、もしくは薪ストーブを使うときにも土間はとても便利です。これらの暖房器具には灯油もしくは薪といった燃料が必要なので、燃料の置き場が必要ですし、燃料の交換時に室内を汚す心配があります。そんな時にも土間があれば、フローリングやカーペットを汚すことなく燃料の保管場所を作ることができます。普段のお手入れがしやすいことも便利な事です。
また、家具やカーテンなど可燃性の高いものから少し離したところにストーブ・薪ストーブを設置することで、安全面にも配慮できます。
1-3.分別ゴミの仮置き場に
家事を担う主婦(主夫)を悩ませることのひとつに、次の収集日までに分別ゴミをどう保管するか、というものがあります。大家族ともなれば量は多くなりますし、安易に庭に放置すると美観の点でも気になりますし、さらには放火などいたずらの対象になる可能性もあります。このような点でも、土間は実用的です。こちらの実例のように玄関がツーウェイになっていれば、家族の為の裏動線上に生活感を感じる分別ごみを置くこともできますので、普段はスッキリとした玄関をキープできます。
1-4.お子様を遊ばせる場に
お子様を遊ばせる場は屋内ならリビング、屋外ならば庭を思い浮かべます。しかし、目の離せない小さなうちは屋外でけがをしないかという心配もあるので、リビングでしか遊ばせられないと思いますが、土間があれば靴を履いて屋外のように使う事ができるので、安全に、屋外でできる遊びに近いことができます。
例えば三輪車や子供用自転車等の練習も、家の中では家具にぶつかったり、床に傷がつくのが心配ですが、土間であれば、自由に練習が出来ますし、また、雨の日にも外遊びとほぼ同等の遊び方ができますので、親御さんにとっての心配事がひとつ減ります。
1-5.部屋の外に位置するのに暖かい・涼しい
土間は、あたかも屋外のような使い方ができますが、実際は屋内にあります。そのため、屋外よりも夏は涼しく、冬は暖かく過ごすことができます。色々な作業を行うときも、さほど気温差を感じなくても済みますし、雨に濡れる心配もありません。多少汚しても掃除もしやすいので、安心です。今まで家の外でしていた作業が快適な環境の中で出来るという事です。
1-6.家庭菜園やガーデニングの趣味をお持ちの方にも
家庭菜園やガーデニングは、「土」とは切っても切れない関係にあります。必要な道具や資材には土がついてしまいますので、これらを保管する場として土間があるととても便利です。また、プランターや鉢を使ってガーデニングを楽しんでいる方にとって必要なのが、台風など風が強いときにそれらをしまう場所ですが、土間でしたら土がついたものを屋内に持ち込む際にも気にせずに済みます。こちらの事例のように土間に洗面スペースがあれば、すぐに手も洗えて衛生的な上に、土間の掃除もしやすいことは大変なメリットです。
本来の土間の使い方に近いものになりますが、作業場として切り離されたものではなく、リビングやダイニングの居住空間に近いところと繋がっているのが特徴です。
2.土間のある家の間取りで注意しなければならないこと
上で触れたとおり、趣味や実用の面でメリットの大きな土間ですが、上手な間取りでよりそのメリットを高めることができます。いくつかのケースを考えてみましょう。
2-1.自転車やバイク、ベビーカーを持ち込みたいとき
玄関スペースを広げ、土間にすることでスムーズにこれらの小型の乗り物を屋内に持ち込むことができます。特に雨が降っている時などは、玄関先で家に入る為に更に濡れてしまう事も多くありますが、さっと玄関土間に入れば、雨に濡れずにゆっくりと作業をすることも出来ます。大きな荷物もとりあえず土間に置いておくこともできますので、室内へ入る為のワンクッションとしての空間があるというイメージですね。
2-2.ストーブ置き場にするとき
家全体にしっかり断熱を施し、土間部分も「ほぼ室内」というつくりにした上で、リビングの延長上として使用できるよう配置すれば、ストーブ置き場にぴったりの土間になります。リビングと同じ床の高さにする必要がありますので、土間に相当する部分を、掃除しやすく汚れに強い床材にすれば、灯油や薪をストックしておくのにも困りません。こちらの事例のようにタイル張りにすれば高級感もありますし、お手入れもしやすくなります。また、暖炉の火をより身近に感じることが出来ますので、リビングで過ごす楽しみも増えますね。
2-3.家庭菜園や家事に便利な場所にするとき
キッチンに近い場所に土間を設置すれば、採れたて野菜やゴミの仮置きの場所として便利に使えます。キッチンの床面から一段低くし、掃除がしやすいような工夫をしておけば、土やゴミの汚れを心配することもありませんし、庭仕事の道具を置いておく場所にもなります。この場合、畑や庭からのキッチンへの動線を考えて土間と開口部を作ることによって、無駄な動きを省いて、外の汚れをキッチンに持ち込まないようにすることが出来ます。
こちらの事例のように思い切ってキッチンダイニングスペースを全て土間にしてしまうというのも、大人だけが暮らす家であったり、来客の多い家など、ライフスタイルによっては使い勝手がいいですし、何よりスタイリッシュであるという点で、魅力的な空間ですね。
2-4.【どのケースにも共通】引き戸を準備する
土間は家の外部と居室との間に存在する「柔軟な」空間で、間仕切りがない例もありますが、敢えて間仕切りを作るのであれば、オススメなのが、引き戸です。ガラスの間仕切りであれば土間も一つの空間として感じることができますので、開放感もキープされたまま快適性も保つことが出来るでしょう。
可能であれば、上吊タイプの引き戸はいかがでしょうか。足元の引っかかりがなくなり、バリアフリーにも対応出来ますし、気候のよい時期に開け放すとき、とてもすっきりと見えます。居室と高さの差をつける場合は、大きな差をつけないようにすればどんな世代の方でも使いやすくて安心できます。
3.玄関を土間にすることで快適に暮らせる実例
玄関を土間にすれば、生活が快適に便利になります。一般的なつくりの玄関の場合、雑多な物が玄関周りに集まってしまうという経験をされる方も多いのではないでしょうか。これを解消するために、玄関プラス土間空間を作ることはとても有益です。
3-1.土間収納を設ければ、ベビーカーや子どものおもちゃ、庭のお手入れ用品の出し入れが楽に
動線に物が集まりやすいのは致し方ないことです。この現象は、家の外と中を結ぶ玄関で顕著です。玄関を土間にし、その土間に接するように土間収納を作ってみるのはいかがでしょうか。ベビーカーやお子さんが外で遊ぶおもちゃ、ガーデニング用品をしまっておけますので、必要な時に道具がスムーズに出し入れでき、とても便利です。収納をたっぷり作っておけば季節外の物も収納出来ますし、土間の仕上げであれば多少汚れたものでもそのまま床に置いておけます。
3-2.土間収納を勝手口代わりにして、いつもきれいな玄関をキープ
玄関は、靴やコートといった体に身につけるものが切り替わる場所です。家族が多い場合、玄関が家族の靴や衣服、雨具などであふれてしまうこともあるでしょう。このようなときも、玄関脇に土間をつくり、玄関から見えづらい工夫をした土間収納を設置すれば便利です。
シューズクローゼットやコート掛けを、玄関脇の土間収納に用意してはどうでしょうか。お客様にとっては玄関に見えても、ご家族にとっては勝手口のように自由に使えるスペースが生まれます。外出時に必要なものを集約させることで、出かける前にバタバタする必要もなくなりますね。ご家族とお客様の「動線」を少しだけずらすことで生活感を感じさせない美しい玄関をキープすることができますので、突然の来客があっても恥ずかしい思いをせずに済みます。
4.土間のデメリットは? どう作れば心配が減る?
土間の機能は生活を豊かにしてくれますが、一方でデメリットもあります。屋内でありながら屋外に近いその特性からくるデメリットはどうすれば解消できるのでしょうか。
4-1.土などの汚れが目立ちやすい
自転車やバイク、ベビーカーを持ち込んだり、ストーブ用の燃料を保管したりできるとても便利な土間には、それ相応の汚れがつきやすい場所でもあります。これを防止するために、床部分を滑りにくいタイル仕上げにしたり、水道水栓や排水設備を設置しておけば、ほうきで掃いたり水で洗い流すことも可能です。外のような内のような空間ですが、水が使えるという点ではお手入れはしやすくなります。土の付いた汚れは乾いてしまうと取りにくいので早めに掃除をしやすくすることがポイントですね。
4-2.湿気対策が必要
土間には湿気の問題が生じることがあります。これは、外気に触れる外のサッシと、部屋と土間部分を区切るサッシの間に土間という空間があるというつくりから生じるものです。冬場、屋外の冷たい空気と、室内の暖かい空気がぶつかる部分が土間ですので、ここで結露が生じているような状態が起こるのです。
この湿気の問題を解消するために、壁に調湿効果のある珪藻土等の自然素材を使用することもおすすめです。さらに、土間部分にも空気の通り道を確保することも大切です。こちらの事例のように、風通しをよくすることで、家の中に湿気を残さないようにすると、洗濯物干しとしても使い勝手がよくなります。
4-3.冬場、寒くならないようにするために
土間の設置場所や作り方によっては、寒い場所になることがあります。たとえば、家の中を横断する通路のように作る場合や、部屋の床の高さから一段下げるような場合です。
底冷えするような場所となれば、せっかく実用面でのメリットがあっても使いづらい場所となりますので、これを防ぐために床断熱材を導入することで寒さをクリアすることができます。さほど寒くないエリアであれば、しっかりと断熱材を入れることで問題の解消を目指すことも可能です。よく土間とセットとして導入される、薪ストーブも効果的です。空間全体をじんわりと温めてくれるので冬場も快適に土間空間を楽しめるでしょう。
5.【実例紹介】土間のある家の「重量木骨の家」施工例
5-1.ゆとりある玄関土間は多目的に利用できるスペース
6帖超の広々土間スペースはモルタルで仕上げることで、のびやかにLDKと溶けるように交じり合う空間に。ホールは白基調でまとめられ、収納扉や階段なども抑えめの統一感のあるデザインです。ご主人の趣味でもあるサーフィンのボードがインテリアのように飾られています。サーフボードを手入れするワークスペースであり、子供のプレイグランドでもある、まさに多目的な土間玄関といえそうです。リビングとフラットな仕上げになっているのでより広々としたイメージに見えます。
5-2.土間収納からキッチンへと続く玄関
玄関から出入りのできる土間収納のその先はキッチンへと繋がっています。4帖ほどの広さの収納スペースは、日用品の買い物をしたときも、玄関から土間空間を通ってキッチンに直行できるので、家事動線の短縮にも一役買ってくれる存在。キッチン側の奥はキッチンから床続きとなっており、パントリーとしても利用できます。収納スペースと玄関が区切られているので、いつでもすっきりとした玄関を保つことができそうですね。
5-3.おしゃれなカフェのような土間スペース
玄関を入ると大きな土間がお出迎えしてくれます。ギャラリーとしても、趣味のスペースとしても使える多目的な空間は、いるだけでワクワクするようなおしゃれなスペース。コーヒーを片手にグリーンを眺めたり、リラックスできる場所としても魅力的ですね。LDKとはスクリーンパーテーションで間仕切りが自由にできるため、シーンに応じて空間を区切ることができます。玄関土間からダイレクトにLDKにつながるような作り方は、玄関ホールがない分リビングを広く作れますし、間仕切りを付ける事で閉じたい時には閉じられるというところにも利便性を感じます。
まとめ
家の内部にありながら、限りなく外に近い場所である土間は、そのあり方によって暮らし方のバリエーションを豊かにしてくれます。ライフスタイルによって、キッチンとつながりのある土間、玄関とつながりのある土間、またはリビングとつながりのある土間など、様々な土間の作り方がありました。位置やスペースの広さ、使用する材の種類などによって変わる土間の実例をご覧になってください。それぞれの家族が希望する生活をランクアップさせる快適な土間を発見できることでしょう。
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