2016
21
Jul

家のデザインについて、 理想の家づくりのためのコラム

【実例紹介】狭小住宅で知るべき7つの注意点と、収納等に困らない有効な間取り術

「都心部に家を持ちたい」と考えたとき、一番の問題として浮上してくるのが土地の値段ではないでしょうか。とはいえ、憧れのエリアであったり、通勤や買い物など生活面での利便性が高いエリアであったりと、「暮らしのデザイン」という意味でゆずれないところもあるでしょう。都心における様々な敷地条件の中で狭小地で快適な家を作るための工夫やポイントを考えていきます。

1.【メリット】都心部でも家が持て、税金が安く済みます

利便性の高いエリアで土地を購入しようとすると、一番大きな問題となるのが「土地が高い」「手に入るとしても狭い」ということではないでしょうか。人気のエリアであれば、一坪あたりの価格は高額です。また近年、特に都心部への人口流入のため特定の土地の価格は上がっています。このような中でも人気のエリアで家を持つひとつの方法が、狭い土地に建てる狭小住宅です。

また、家を取得すると「固定資産税」と「都市計画税」がかかりますが、狭小住宅は毎年の税金を安く抑えることもできます。税額を決定するときに使用するのは固定資産税評価額(単に評価額とも言います)ですが、これに税率をかけて導きます。「小規模住宅用地」と呼ばれる200平方メートル以下の土地ならばとても有利です。

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・固定資産税

小規模住宅用地―6分の1に減額した評価額×税率

一般住宅用地(200平米を超す部分)―3分の1に減額した評価額×税率

・都市計画税

小規模住宅用地―3分の1に減額した評価額×税率

一般住宅用地(200平米を超す部分)―3分の2に減額した評価額×税率

 

※税率は自治体によって異なります。

また、家を建てることを法的に認めてもらう建築申請にかかる費用、土地や建物を自分名義にするための登記費用を安く抑えることができるのが狭小住宅の特徴です。

人気のあるエリアで土地を買うだけでも大きなお金がかかりますので、住宅取得・維持にかかる毎年の税金を圧縮できることはとても大きなメリットです。

 

2.【注意するポイント】土地が狭いことには、このようなコストや手間がかかります

都心部の狭い土地に快適な家を建てる時の注意すべきポイントと工夫についてご説明します。

2-1.お隣の家が近い―防音の工夫が必要です

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住宅が密集しているエリアに土地を取得して家を建てる、ということは、その“住宅の群れ”に加わるということです。少なくとも2つの面が、多ければ4つの面が他の家と近くなりますので、音の問題を解消する手を打たなければなりません。他の家から漏れてくる音を遮断する・自分の家から出る音を遮断するというふたつの意味で、防音対策は重要です。騒音はご近所トラブルの上位となる深刻な問題。住み始めてから対策を検討することはとても難しいことですので、間取りを考えるのと同じほど重要なポイントです。

2-2.敷地ぎりぎり建てると―エアコン室外機やメンテナンスの問題が

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敷地境界線から建物外壁までの距離を50センチ以上開けなければならない、というルールがあるのをご存知でしょうか。民法の234条で「建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならない」と定められているのです。これは火事の延焼やご近所の問題を軽減するためのルールとして定められたものですが、「50センチ問題」はこれに留まりません。例えばエアコンの室外機の設置です。ブロック塀と外壁の間が余りにも狭いとき、ここに室外機を置いてしまうと「ショートサーキット」を起こし、エアコンの効率が落ちたり、故障の原因になったりします。もちろん室外機を向ける方向がお隣の寝室であったりすれば、ご近所トラブルの原因ともなりますので注意が必要です。

また、将来的に外壁のメンテナンスが必要となったときのことを考えておきましょう。足場をかけなければならないとき、“最低でも”50センチは必要です。作業効率を考えれば、さらに必要なのはすぐにわかります。

2-3.面積を確保するために―縦に長くなる生活動線・間取りの工夫

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生活に必要な床面積を確保するためには、2階建て・3階建てにする必要があります。このとき、まず考えなくてはならないのが、「生活動線」や「間取り」です。キッチンや洗濯機置場は1階にすることで重たい荷物を持って階段を上らなくて済むようにし、バスルームや寝室を2階に上げてプライバシーを確保するという工夫もあります。また、キッチンやバスルームといった水周りを隣接させることで、コンパクトに無駄のない動きを実現することもできます。その家でどのように暮らしたいかをじっくりと考えなければなりません。

2-4.単調になりがちな空間―見た目にも広々、収納スペースを確保するために

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各々の部屋を壁で仕切ってしまうと、どうしても開放感のない空間になってしまいます。一般的なスケールの住宅でもそう感じるのですから、狭小住宅であればなおさら工夫が必要です。面積としてはさほど広くなくとも吹き抜け部分を作れば、明るさを確保することができます。また、床の高さをずらす「スキップフロア」も有効です。スキップフロアは視界を縦に広げると同時に、新たな居住スペースや収納スペースを生み出します。中二階を設けることで生まれた空間上部を子どもの遊び場やちょっとした書斎に、階段の下部を収納スペースにするといった具合です。

2-5.面積に対して高さが必要―より強固な家にする必要

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狭小住宅は、居住空間を確保するために縦に空間をとっていく事がほとんどです。家が地面に接する面積に対し高く作った家は、揺れを感じやすいものとして知られています。というのも、限られた面積(1階部分)で、2階・3階の自重を支えなければならないからです。その重みが横揺れに遭遇してしまうと、しなるように大きく左右に振れてしまうのです。自分の家を守ると同時に、近隣に家が密集しているエリアで他の家に損害を生まないためにも、強度が求められます。

2-6.狭小住宅ならではの問題―建築コストが高くなること

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狭小住宅は、坪単価が高くなることをご存じでしょうか。これは狭小地ならではのもので、なかなか避けて通れません。例えば、敷地のすぐそばに大型の車がつけられず小型のトラックで何往復もしなければならない・人力に頼る部分が多くなるといったことが挙げられます。また、足場をかけるためのスペースが充分でない場合、作業が長引いてしまう傾向にあり人件費がかさんでしまいます。

必要に応じて地下室を設ける場合にコストの高騰が最も顕著に表れます。土を掘り運び出す車・コンクリート圧送ポンプ車・クレーン車など一般の木造の家ではあまり使わない重機が必要で、資材よりも人件費や車両費がかかってしまうからです。

2-7.家を建てる際の条件がついていることも―天井や床に「調整」を加える

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「高さ制限」(高度地区)ということばをお聞きになったことはあるでしょうか。土地は、都市計画法によって用途地域が定められています。これにより第一種低層住居専用地域とされる土地では、建物の高さを制限しています。健全な環境形成のために必要な制限ではありますが、ここで2階建て以上の建物を建てようとすると、各階の天井高を下げ建物全体の高さを決められた範囲内に収めなければなりません。

また近隣の家の日照や風通しを確保するため、架空の斜線にそって天井部分を削らざるを得ない斜線制限に出会うことがあります。このとき天井から壁面に向かって斜めに整える急勾配を「母屋下がり」といいますが、ときにこれが部屋を使いにくくすることがあります。母屋下がりの不便を解消するためにもまた、各階の天井高を階ごとに調整することがあります。高さが必要なリビングのある階は天井高をとり、寝室のある階は低めに、と階ごとの性質に合わせて母屋下がりで削られてしまう部分を極力少なくします。

同じようなことを床でも行うことがあります。基礎の上に1階の床を設けるのが通常ですが、基礎高よりも低く(基礎の内部に)床を作ることで高さをかせぎます。しかし、あまりに低くしてしまうと床上浸水してしまう可能性が高まりますので限度があります。

 

3.狭小住宅で有効な間取りとは?

狭小住宅は、敷地が狭いだけに、どうしても居住のための面積が狭くなりがちです。それをカバーするために、間取りの面での工夫が不可欠となります。狭小住宅で積極的に検討したい間取りは、次の通りです。

3-1.空間を完全に区切らない

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寝室など、プライバシーを求められる居室以外は、可能な限り壁で区切らないことで広さを感じさせるという方法があります。

特に人気があるのが、上記でも触れたスキップフロアです。1.5階または2.5階を作れば、段差そのものがある程度の「区切り」の役割を果たしてくれます。人の身長ほどの段差があれば、1.5階ないしは2.5階はほぼ視界に入りません。

移動が階段だけで完結することもスキップフロアの良さです。階段と各層の一部を通過することで移動ができますので、廊下が必要でなく、その分各層の居住スペースを広くすることができるのです。一般的な廊下の幅は80センチとされていますが、この分を省き居室にできることは、狭小住宅には大きなメリットとなります。

3-2.地下室を設ける

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スキップフロアと合わせて考えたいのが、地下室もしくは半地下室です。狭小な土地に家を建てる場合、必要な面積を保つため家を縦に伸ばす必要がありますが、この一部を地下室ないしは半地下に担ってもらうことでさらにスペースを増やすことができます。

映画鑑賞や音楽の演奏などの趣味の部屋にすることもできますし、湿気や雨に対応できる設備などを設けることで寝室にすることもできます。

一定の基準下で設けられた地下室は容積率に算入しなくてもよいとされていますので、空間の確保法としては充分検討するだけの価値があるでしょう。

3-3.ロフトや中庭を設ける

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土地が狭い狭小住宅は、どうしても家そのものも小さく狭く感じがちです。それを縦に伸ばす方法のひとつに、ロフトを設けるという方法があります。ロフトとは、居室の一部を高くし、2層にしたものであることはご存じのとおりです。

ロフトは天井までの高さが1.4メートル以下である、はしごを固定しないなどいくつかの条件はありますが、寝室や収納、趣味のスペースをもうひとつ設けることができますので、狭小住宅では有効な方法です。

また、小さくとも中庭を設けるのも一案です。特に入り口が狭く奥行きが長い「うなぎの寝床」とも呼ばれる細長い土地の場合、明るさや風通しを確保する手段として使えるものです。

見た目に広さを感じさせてくれると同時に、植える植物により四季を実感することもできます。浴室やリビングに隣接する位置に中庭を設けると、日常生活も楽しいものになるでしょう。

 

4.狭小住宅での収納スペース確保法

収納スペースの確保もまた悩みどころのひとつです。どのようにすれば、効率よく収納場所を確保できるのでしょうか。

4-1.暮らしに必要な「モノ」の見直し

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収納の確保以前に行っておくべきことは、生活に必要なモノがどれだけあるのかということです。できるだけ最低限のモノで生活ができるよう持ち物の整理をしてみてください。いわゆる「断捨離」を行い、シンプルに暮らすことを目指してみてください。

モノが減ると、それにまつわる管理の時間も同時に圧縮できますので、一石二鳥といえるでしょう。

4-2.家に生まれがちな「デッドスペース」の見直し

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私たちの暮らしの中には、意外に気づかない、有効に使えるデッドスペースがあります。

たとえば、階段の下部ですが、ここにキッチンや書斎、トイレを設けるのはとても有効です。もしもニオイや音の問題でキッチンや書斎、トイレにしたくない場合、収納スペースにすることもできます。

クローゼットのように閉じるタイプもいいですし、オープンにして本や小物を置けるスペースにするのも素敵です。階段の1段ごとに引き出しを設けるのも便利でしょう。日本古来の「階段箪笥」のように仕立てるのもこなれた和モダンを演出できます。

収納スペースを確保するため、一部屋全面にクローゼットを設けても手の届かない部分ができてしまうものです。それを逆手に取り、クローゼットの一部を低めにしてそこにベッドマットを納め、寝室にしてしまう方法もあります。

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もし、スキップフロアを採用する場合、その下部にも見逃せないデッドスペースが生じます。特に1階層部分は人の出入りできる高さにはしませんので、こここそ活用すべき場所といえます。

また、その他にも洗濯機の上部などに空間があります。これらのいわゆる「隙間」を上手に用いることで、少しずつではありますが収納スペースを確保することができます。

また、ソファやベッドなどの家具の下部も意外に大きな容量となります。隙間サイズに合ったキャスター付きの収納ボックスを用意しておけば、すぐに取り出したいもの・季節の寝具もすっきりとしまっておけます。

家具の下ぴったりの収納ボックスを置いておけば、お子様やペットがもぐりこむこともありませんし、ほこりが溜まることも少なくなりますので、一石二鳥です。

4-3.「見せる」収納法も効果的

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きっちりと隠し、すっきりとしたシンプルなイメージもすてきですが、あえて「見せる」収納法も個性となります。特にキッチン周りはおしゃれな雰囲気を出しながら、同時に便利でもあります。

たとえば、コンロ周りにフライパンやフライ返し(ターナー)などのキッチンツールを下げてみるのはいかがでしょう。

必要なモノにすぐ手が伸ばせる、洗った後はすぐに掛けておけるという利便性に加え、まるでカフェのキッチンのようなおしゃれな感じにもなりますし、なによりキッチンツールのためだけの収納スペースを多く割く必要がなくなります。

4-4.狭小住宅こそ「造り付け家具(造作)」

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人のための、もしくはモノのためのスペースがどうしても確保しづらい狭小住宅を充実させるためには、造り付け家具(造作)がその実力を発揮します。

先に触れたとおり、本当に必要なモノはどれだけの量なのか、それをどこに収納すれば効率が良いのかの判断ができていれば、棚やクローゼット、テレビ台、キッチン収納、ときにテーブルや収納つきベンチに至るまで、ご家庭にマッチしたものを作ってもらえます。

もちろんそのための費用は発生しますが、狭小住宅に合う家具が見つからない・家具が搬入しづらいといった問題を回避できます。

設計段階で間取りに合わせてデッドスペースを建築士の目で洗い出しできるうえ、内装全体のイメージを崩さぬように考えてもらえますので、無理にご自分でDIYする必要もなく、入居と同時に快適な生活をスタートすることができます。

 

【実例紹介】狭小住宅が魅力的である理由

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立地の面で制約があり、建築費用がアップしがちな狭小住宅。それでも魅力的なのはやはり住まうエリアの利便性や、税金を安く収められるといったものがあるでしょう。もしくは、生まれ育った土地で家を新たにするという安心感かもしれません。そうとなれば、注文住宅でとことん「我が家の暮らし」を突き詰めてみてはいかがでしょう。その土地の持つ性格や条件にそって、最大限のメリットを生み出すこと―。これが注文住宅の最も得意とする分野です。ここまでにご説明したことで、「狭小住宅はとても難しい」「思ったとおりの家は建たない」とお考えではありませんか。いいえ、決してそのようなことはありません。狭小な土地であっても、中庭や吹き抜けを実現した家もあれば、和のテイスト、シンプルでホテルのようなテイストなど多種多様の家があります。狭小地であるからこそ家づくりが楽しい、と思わせてくれる「家たち」のある光景をどうぞご覧になってください。「注文住宅の楽しさ」にきっと驚かれることでしょう。