狭小住宅で快適に暮らすために、取り入れたい9つの間取りアイデア

狭小住宅と聞くと、とても小さな家をイメージするかもしれません。たしかに、外観はコンパクトに見えますが、間取りやデザイン、設備などの選び方を工夫することで、室内を敷地面積以上に広く感じられる空間にできるのです。そこで今回は、狭小住宅で取り入れたい、9つの間取りやデザインのアイデアをご紹介します。
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小さいだけじゃない、狭小住宅の魅力とは
狭小住宅とは、一般的には15坪以下の土地に建てられた家屋のこと。都心部で戸建て住宅を建てようとすると、土地の広さに限りがあることが多く、必然的に狭小住宅になってしまうご家庭もあるでしょう。また、駅近など利便性を優先して考えると、コンパクトな土地を選ばざるを得ない状況になることもありますよね。
しかし、実は狭小住宅にこそ、空間を有効活用でき、また採光や通風を効果的に取り込むアイデアが満載なのをご存知でしょうか。たとえば、自然な形で部屋を区切りながらも、家全体をひとつの大きな空間に見せるためにスキップフロアや吹き抜けを採用する……。階段下の空間を活かしたり、造作家具で収納スペースを確保することで、限られた空間を最大限に有効活用する……。中庭やサンルームなどで上からの陽光と通風を室内に効果的に取り入れるなど、さまざまなアイデアがあります。
さらに、非常にコンパクトな土地や変形地などは、通常の価格よりも低予算で購入することができるので、その分、家の建築費に予算をかけられるというメリットもあるでしょう。また、広い土地にゆったりと建つ家とは違って、変化に富んだユニークな家づくりができるというのも、魅力のひとつかもしれません。
注文住宅での家づくりであれば、その土地に合ったプランニングをすることができるので、限られた空間や変形地であっても、アイデアを駆使して快適な家づくりが実現できるのです。
<狭小住宅のアイデア その①>
キッチンとダイニングの動線をコンパクトにする
ダイニングテーブルでくつろぐ家族や友人と、会話をしながら料理や家事をする……。そんな理想的な毎日を過ごすことができるのが、このようにキッチンとダイニングテーブルをキュッと近づけた間取りです。スペースに限りのある狭小住宅では、いかに家事動線をコンパクトにするかがカギになると言えるでしょう。
また、家具選びもポイントに。ダイニングテーブルの椅子をソファータイプにすることで、壁にピッタリとくっつけて使うことができ、狭い空間でも大きめのダイニングテーブルを置くことができるのです。
こちらは、キッチンの作業台を造作し、ダイニングテーブルと一体化させたデザインを採用。このようなアイデアによって、限られた空間に大きめの作業台とダイニングテーブルを置くことができ、狭小住宅でも調理や食事を快適に行うことができるでしょう。
作業台とテーブルが一体になっていることで、料理を作って盛り付けたら、そのままお皿をスライドさせてテーブルへ。食事後の片付けももちろんスムーズです。無駄な動きが減るので、小さな空間でも複数人で調理ができたり、片付けをする際にも便利。共働きでウィークデイは忙しいというご夫婦には、とくにおすすめの間取りと言えそうです。
<狭小住宅のアイデア その②>
スキップフロアで空間を広く見せる
こちらのお宅は、細長い敷地と高さを上手く組み合わせて、スキップフロアの間取りを取り入れています。数段ずつの段差でつながっていることで、ひとつの大きな空間として感じられながらも、自然な形で部屋の役割が分けられています。この間取りは、狭小住宅でよく取り入れられる人気のアイデアですね。
狭小住宅では、部屋と部屋をつないでくれる廊下を設けることが難しい場合も多いでしょう。そこで、スキップフロアを活用することもできます。こちらのお宅は、玄関土間を入って数段上がると、こちらのダイニングキッチンに。玄関とダイニングキッチンが同じ高さになっていると、玄関扉からダイレクトに室内が見えてしまいますが、高さを変えることで空間をゆるく仕切ることができるのです。
<狭小住宅のアイデア その③>
サンルームや中庭で上からの光と風を取り込む
こちらのお宅は住宅密集地にあり、建物の南側と東側が隣の住宅によってふさがれている立地環境。このような狭小住宅で取り入れたいのが、外に向かって作るベランダを設けずに、家の内側にサンルームや中庭を設けるアイデアです。吹き抜けの上部に天窓を設けて、光と風を上手に取り込むことで、住宅密集地とは思えないほど明るく気持ちのよい空間になっています。このお宅のようにサンルームの天井にバーを設置すれば、室内でも洗濯物を干すことができるでしょう。
建物の内側に、小さいながらも中庭を設けるのもいいですね。狭小住宅では、外側に面した庭を持つことは難しくても、内側に小さな中庭を設けて、外空間を楽しむこともできるのです。建物で囲まれた中庭なら、周囲からの視線を気にすることなく、家族でリラックスして過ごすことができるはず。また、中庭に向かって大開口が実現できたり、上からの陽光や通風を確保して、室内に取り込むことができるのです。
<狭小住宅のアイデア その④>
壁や扉部分をガラス素材にして広く見せる
部屋と部屋の仕切りとなる壁や扉などは、狭いスペースでは圧迫感を感じてしまうことがあります。そこで、壁ではなくガラス素材にして向こう側が見えるようにすることで、空間が広く感じられる効果が期待できます。
こちらのお宅では、階段とリビングルームを仕切る壁の、腰から上部分をガラス素材に。このようなデザインにすることで、リビングルームがガラスの向こうまで広がっているように感じられるでしょう。また、家族が帰ってきたり、出かけていく様子をいつでも見守ることができるなどのメリットもあります。
リビングルームに入る扉をガラス素材にした、こちらのお宅。玄関から家の中に入ると、目の前にこちらのリビングルームが見えるうえ、扉によって視線が遮られないため、圧迫感を感じません。また、室内側からも視線が扉の外側まで届くので、実際のリビングルームより広さを感じるでしょう。
キッチンで料理をしていたり、リビングルームでくつろいでいても、家族が帰ってくるのを迎えたり見送ることができ、家族間のコミュニケーションも一層深まるはずです。
<狭小住宅のアイデア その⑤>
スケルトン階段の下空間を活用する
狭小住宅では、できるだけ空間を有効活用するために、スケルトン階段を採用するご家庭が多いようです。スケルトン階段にすることで圧迫感がなく、上階からの光と風を階下まで届けることができます。また、階段下の空間も、さまざまな目的で活用することができるのも魅力です。間接照明を置いたり、グリーンやオブジェを素敵に飾ったりと、余裕のある暮らしを楽しんでみるのもおすすめです。
ちょっとしたデッドスペースでも、アイデア次第で上手に活用することができます。こちらのお宅では、階段下に小さなライブラリーを造作。床を少し下げて、ラグを敷いたりクッションを置くことで、隠れ家のような雰囲気にすることができます。お子さんの好きな本を置けば、ここで夢中になって読書をしてくれるでしょう。お子さんが大きくなったら、また違った活用方法を考えてみるのもいいですね。
<狭小住宅のアイデア その⑥>
ロフトや吹き抜け空間で明るさと開放感を
細長い狭小住宅の場合、どの部屋にもしっかりと採光を確保することが課題になることが多いでしょう。とは言っても、周囲が住宅密集地であれば、大きな開口部を設けることが難しいことも。そこで、家の中に吹き抜けを設ければ、建物全体に明るい光を取り入れることができます。
こちらのお宅では、縦長の吹き抜けを間取りに取り入れて、細長いロフトスペースを配置。部屋にするには使いにくい形ですが、お子さんたちの勉強スペースやリモートワーク の場所にすることで、空間の有効活用ができています。
こちらは、二階部分にオープンスペースを設けた間取り。お子さんたちの勉強スペースとして使っています。吹き抜けと上部の大開口を組み合わせたことによって、狭小住宅でも明るく開放的な空間に仕上がっています。吹き抜け上部にお子さんのスペースを配置したことで、家族間でいつでも会話ができ、お互いに気配を感じ合うことができるでしょう。
キッチンの上がロフトスペースになっている、こちらの狭小住宅。キッチンは換気フードを設置したり、手元を照らせる照明が必要になるため、天井が高すぎるのはかえって使いにくくなります。そこで、キッチンの天井上をロフトにすることで、空間を無駄にしません。
<狭小住宅のアイデア その⑦>
造作家具で小さな空間を有効活用する
室内に購入した家具を置いてみたら、思いがけずにスペースを取ってしまった、想像していたより大きくて圧迫感がある、無駄なスペースが生まれてしまった…などの失敗をすることがあります。そこで、狭小住宅で空間に限りがあるのであれば、できるだけ造作家具を活用するのがおすすめです。
例えばこちらのお宅では、キッチンカウンターの下の空間に一枚板を使って、スタディスペースを造作。このような空間はデッドスペースになりがちですが、ここに机があることで、お子さんが勉強したり、アイロンがけやミシンなどの家事スペースにもなります。
狭小住宅は、いかに収納場所を確保するかも、快適に過ごすためのカギになります。こちらのお宅では、ロフトの下に造作棚を設けて、リビングルームの収納力をアップ。造作であれば、しまいたい物のサイズに合わせて作ることができるメリットもあります。
小さなお子さんがいると、リビングで遊ぶおもちゃ入れが必要になるでしょう。そこで、リビングにベンチを作り、その下に収納を設けるアイデアも。このようなベンチは、ただ座るだけではなく、時にはお子さんの遊びや勉強スペースになったり、家事をする場所になったり、グリーンやオブジェを置いたりと、さまざまな使い方ができます。
<狭小住宅のアイデア その⑧>
水回りは一箇所に集中させてコンパクトに
狭小住宅でありながら、リビングルームの奥にまとめられた水まわりは、ゆったりとした空間に仕上がっています。家族用のトイレを洗面内に配置したことで、広く使い勝手の良い洗面スペースが実現。また、バスルームの扉をガラス張りにすることで閉塞感がなく、より広く感じられるのでしょう。バスタブやトイレ、洗面などの設備のデザインをシンプルにすることで、スッキリと清潔感のある空間になっています。
こちらのバスルームは、壁を打ちっぱなしの素材にすることで、クールな印象に。また、洗面所とバスルームの壁をすべてガラス張りにしているので、まるでひとつの空間のように感じられます。限られたスペースではあるものの、白×打ちっぱなしの素材によってシンプルに見せています。また、洗面所にも収納スペースをできるだけ確保できるとベストでしょう。
<狭小住宅のアイデア その⑨>
狭小住宅の玄関は、収納力がカギに
限られた敷地内で、できるだけ居住スペースを確保しようとすると、廊下や玄関がだいぶコンパクトになってしまうことも多いもの。しかし、玄関には靴を収納するシューズクロークをしっかり確保しないと、いつでもスッキリと片付いた玄関にすることはできません。そこで、可能な限りの収納力を確保できるデザインを採用しましょう。
こちらのお宅は、床から天井までの壁一面のシューズクロークを設置し、収納力をアップ。フラットなデザインにすることで、玄関がスッキリと広く感じられます。
こちらは、玄関と階段を同じ空間にして、階段下をシューズクロークとして活用したデザイン。階段の半分をスケルトンにすることで、上階からの光と風が玄関まで届きます。玄関は暗くなりがちですが、階段と組み合わせることで、上階からの陽光で明るい空間にすることができるでしょう。
狭小住宅だからこその良さを生かした家づくりを
土地がコンパクトであったり、変形地だからと言って、理想の家が実現できないというわけではありません。小さいというデメリットを逆手にとって、上から陽光や採光ができるプライベート感のある家づくりができたり、変化に富んだユニークな間取りができるなど、広い家にはない魅力がたくさん詰まっているのです。
狭小住宅ならではのさまざまなアイデアを参考にして、納得のいく、自分たちらしい家づくりを楽しんでみてください。