狭小住宅で快適に暮らすには? 【部屋別・目的別・坪数別】全16実例を大公開
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狭小住宅は狭くて不便だというイメージを持たれがちですが、間取りやレイアウトの工夫で、狭さを感じさせない快適な暮らしを叶えることができます。今回の記事では狭小住宅の作り方のポイントや、部屋別・目的別・坪数別の実例などをご紹介していきますので、どんな家を建てたいかイメージを膨らませてみてくださいね。
狭小住宅とは
狭小住宅とは、狭い土地に建つ住宅のことを指します。敷地の広さに明確な定義はなく、概ね15〜20坪以下が一般的。床面積を確保するために、多くは3階建てで計画されます。狭小住宅は地価の高い都心に多く、生活利便性を求める若いファミリー層から特に人気があります。
狭小住宅のメリット
狭小住宅は狭いというデメリット以上に、さまざまなメリットがあります。ここでご紹介するメリットを参考に、狭小住宅を検討してみてくださいね。
利便性が高い場所で暮らせる
狭小住宅は地価が高い都市部でも、土地がコンパクトな分、安く購入することができます。交通の便がよく、商業や医療、教育、娯楽などの各種サービスに恵まれた住環境を得られるのであれば、土地が狭くても購入するメリットは大きいでしょう。また、会社や学校との距離が近くなる場合は、通勤や通学の時間を短縮できるというメリットもあります。
土地代や税金が安い
土地が狭いということはそれだけ土地代が安くなり、都市部や景勝地などの地価が高い地域でも比較的安価に購入することができます。それに加えて狭小地は、固定資産税評価額を元に算出される固定資産税や都市計画税を比較的安く抑えることができます。これらの税金は毎年支払う必要があるため、年を重ねるごとにそのメリットは大きくなるでしょう。
ランニングコストを抑えられる
税金以外の様々なランニングコストを抑えられる点も、狭小住宅の魅力です。狭小住宅はコンパクトな造りであるため冷暖房効率が良く、照明を設置する箇所も少なく済み、必要以上のエネルギー消費を避けることができます。都心に家を建てれば、交通の便が良いため、車の維持費を抑えることもできます。このように狭小住宅は、お財布にも環境にも優しい住宅と言えるでしょう。
狭小住宅の暮らしを快適にする6つのポイント
狭小住宅は、狭くても間取りやレイアウトの工夫で快適に暮らすことができます。ここでは、そのための6つのポイントをご紹介します。
①間仕切りを工夫する
空間を広く見せるには、間仕切りの工夫が必要です。狭い部屋を壁で仕切るとどうしても圧迫感が出てしまいますが、これらをなくせば、ひと続きの開放的な空間を作ることができます。用途に応じて部屋を仕切りたい場合は、引き戸やパーテーションなどの可動式間仕切りがおすすめです。どうしても壁を設けたい場合は、ガラス素材にするというアイデアもあります。空間を仕切りながらも視覚的な広がりを感じることができ、光沢が見た目のアクセントになります。
②天井高を上げる
天井高を上げれば、空間を縦方向に広げることができます。そのままフラットに天井を高くする以外にも、勾配天井にしたり、吹き抜けにして上下のフロアをつなげたりする方法などがあります。シーリングファンを設ければ効率の良い空気循環を生み、トップライト(天窓)やハイサイドライト(高窓)を設ければ、風通しを良くすることができます。高い位置から光を取り込むことで、部屋の広範囲を明るく照らすこともできます。
③中庭をつくる
狭小住宅に光と風を取り込むなら、中庭がおすすめです。狭小住宅は都市部の住宅密集地に建てられることが多く、日当たりや風通しが悪くなってしまうことがあります。また、大きな窓を設けると外からの視線が気になってしまう可能性も。中庭を作り、これに面して窓を設ければ、上部から降り注ぐ光と風を各部屋にもたらすことができます。また、天井をガラス張りにしてサンルームを作れば、天候を気にせず洗濯物を干すことができます。
④水回りをまとめる
狭小住宅の多くは3階建てですが、各フロアに何を配置すべきか分からないという方も多いのではないでしょうか。ここでご提案したいのが、水回りをワンフロアに集約するということ。浴室、トイレ、洗面所といった機能を一箇所に集めれば、排水構造がすっきりまとまり、スペースの無駄を省くことができます。また、設置やメンテナンスの費用を抑えられるのも利点です。何より、水回りをまとめることで、掃除や洗濯などの家事動線を短くすることができます。
⑤デッドスペースを活用する
広さに限りがある狭小住宅では、収納スペースの確保も課題。家具の隙間や、床下、階段下といったデッドスペースをフル活用すれば、居住スペースを圧迫することなく、収納力を高めることができます。これらのデッドスペースに造作家具を設ければ、幅や高さをミリ単位で設計できるため、空間の無駄をさらになくすことができます。また、天井を高くして屋根裏にロフトを設ければ、広々とした収納スペースを確保することができます。
⑥スキップフロアをつくる
スキップフロアは、同じ空間の中で床の高さを一部分だけ変えた場所を指します。床面を一段上げた「小上がり」や、一段下げた「ダウンフロア」、1階と2階の間に設ける「中二階」などが当てはまります。スキップフロアを設ければ、床の高さを変えることで空間を緩やかに区切ることができるため、間仕切りを設けた時のような圧迫感を与えません。また、段差を利用して収納スペースを設けることができるため、狭小住宅におすすめの設計です。
狭小住宅のレイアウト実例【部屋別】
ここでは、キッチンやリビングといった部屋ごとの実例をご紹介します。それぞれの部屋の機能を最大限に発揮できるレイアウトを一緒に見ていきましょう。
キッチン
こちらの事例は、狭小住宅でありながらも広々と調理できるII型キッチンを採用しています。シンク前の造作カウンターはダイニング側から手元を隠せるだけでなく、食器収納棚になっているとのこと。勝手口の外はサービスバルコニーになっていて、ゴミの一時置き場に便利です。
リビング
ただでさえ土地がコンパクトな上に、こちらの地域は容積率が厳しく、建てられる家の大きさにも制限がかかるという悪条件下で設計がスタートしました。容積率を抑える手段として、リビングに吹き抜けを採用し、スケルトン階段にすることで上部から差し込む光を遮ることなく、空間全体に届けています。
ダイニング
ナチュラルウッドが美しいダイニングテーブル。作業台としても使えるように、壁付けキッチンのすぐ後ろに配置しています。料理の下処理を行ったり、家事の合間にデスクワークをしたり、さまざまな用途に使えそうです。また、キッチンとの距離が近いため動線が短く、配膳や片付けなどが楽にできます。
サニタリールーム
こちらのサニタリールームは、打ちっぱなしの壁とガラス張りの扉によってホテルライクな印象に。洗面所、トイレ、バスルームを集約することで、配管がシンプルになり、コストやスペースの無駄を省くことができました。床材は船舶などに使われるFRPを使用。強度と耐水性に優れ、掃除がしやすいそうです。
狭小住宅の施工実例【目的別】
新しく家を建てる際には、理想を詰め込んだ家にしたいと思うもの。しかし、狭小住宅の場合は、家が狭いからと諦めてしまう方も多いのではないでしょうか。こちらでご紹介する施工事例を参考に、ご自身の目的やご要望に合うものを探してみてくださいね。
ガレージハウスにしたい
こちらの住宅は、1階に広々としたガレージを設け、車2台分の駐車スペースを確保しています。居住スペースである2階と3階は吹き抜けでつながっていて、狭さを感じさせません。これだけ間口の広いガレージは、高い耐震性能を誇るSE構法の成せる技。車を自宅に停めることができれば、駐車場代がかからず、防犯面でも安心。また、ガレージの広さによっては固定資産税の計算から外れるため、お得にガレージを設けることができます。
変形地でも快適に住みたい
こちらは、ひし形の土地に建てられた住宅。鋭角なスペースの使い方が課題でしたが、あえてバスルームを配置し、コンパクトな浴槽を造作することで対応しました。また、リビングや寝室の高い位置に棚を造り付けたことで、床を広く使えるようになりました。このように、変形地でも設計の工夫次第で快適な家を建てることができます。また、同じ面積の整形地と比べると土地代が安く、税金も低めであるため、購入しやすいというメリットがあります。
屋外空間を楽しみたい
庭付きの一軒家に憧れる方も多いかと思いますが、狭小地ではスペースの確保が難しく、また周囲の視線が気になる場合もあります。それでも、屋外空間を楽しみたい!という方にはルーフバルコニーがおすすめです。ルーフバルコニーは屋根の上に設けるため、まとまったスペースを確保しやすく、見晴らしが良いのがメリット。こちらの事例のように、テーブルとチェアを置けば、ちょっとしたアウトドアリビングとして利用できます。
収納を充実させたい
こちらの土間収納は、最大高低差2.1mという地形の不利を逆手に取って設計されました。半地下になっているため、縦方向にもゆとりのあるスペースを確保することができ、アウトドア用品などの大荷物をスッキリと片付けられるようになっています。狭小住宅は敷地面積が小さいため、こちらの事例のように空間を縦方向に有効活用すれば、まとまった収納スペースを確保しやすくなります。
狭小住宅の間取り実例【坪数別】
ここでは、敷地の坪数ごとの実例を紹介していきます。コンパクトながらも快適に過ごせる間取りのアイデアを一緒に見ていきましょう。
【10坪】吹き抜けからの光が明るいLDK
2階に配置されたこちらのLDKは、「緑が身近にある暮らしをしたい」という、オーナー様のご要望を叶える空間設計。3階のバルコニーからの光を届ける吹き抜けを作ったことにより、LDKが明るく照らされ、観葉植物が生き生きと成長できる環境になっています。また、スペースを有効活用するために、階段の踊り場を利用してスタディコーナーも設けています。段差を利用して掘りごたつになっているため、足を伸ばして快適に机に向かうことができます。
【13坪】仲の良い6人が暮らす二世帯住宅
こちらは親世帯と子世帯の計6人が暮らす二世帯住宅。狭小地かつ、高さ制限も厳しいことから水回り以外を全て共用にしていますが、それが苦にならないほどの仲良し家族だそうです。ご高齢のご両親が不便なく生活できるよう、1階には水回りと、ご両親、オーナ様ご夫婦それぞれの寝室を配置。2階には広々としたLDKを設け、家族みんなが集まれる憩いの空間を作りました。スチールのリビング階段は、3階の子ども部屋へとつながっています。
【15坪】スキップフロアで区切られた部屋
「小さくて大きいこと」というコンセプトで計画された、こちらの住宅。一つ一つの小さな部屋をスキップフロアで緩やかに区切ることで、家全体に連続性を持たせ、開放感を生むことができました。1階には趣味の自転車の収納場所として使用している土間空間、数段上がった先にはダイニングキッチンが配置されています。さらに階段を上がった先には、こだわりのオーディオスペースが設置されていて、食後の時間をゆったり過ごすことができそうです。
【15坪】明るい勾配天井のリビング
こちらの住宅は、1階にガレージ、2階に水回りを配置。最も明るい3階に設けられたリビングは、勾配天井で天井高を上げたことにより開放感が生まれ、内装を白系統にまとめたことで視覚的な広がりを感じられます。屋上にはアウトドアリビングとして利用できるルーフバルコニーが設置されていて、リビング内の階段から自由に行き来できるようになっています。家の内と外がつながった、大変居心地の良い住宅です。
【16坪】天井高3mの開放的なLDK
夏にはルーフバルコニーから花火を一望できるという、こちらの住宅。車2台分を広々と停められるインナーガレージを構えていながらも、耐雪耐震に優れた頑丈な設計となっています。リビングは見晴らしの良い3階に配置していますが、エレベーターがあるため上下階移動が全く苦になりません。また、このリビングの天井高はなんと3mもあり、土地の狭さを感じさせない開放的な空間となっています。
【17坪】高窓で光とプライバシーを確保
こちらの住宅は、LDK空間を広く取って大空間を作るために、水回りを1階、プライベート空間を3階に配置しています。西側の隣地が空き地になっていることから、2階の南西側にバルコニーを設け、大きな掃き出し窓からLDKの明るさを確保できるようになっています。一方、住宅が立ち並ぶ東側は、プライバシーの確保が課題。横長のハイサイドライトを設けることで、明るさを確保しつつ、外から見えないようになっています。
【19坪】中庭から光が差し込むリビング
こちらの住宅は、中庭をぐるりと囲んだコートハウス。1〜3階の各フロアに中庭があり、家全体に光を取り込むことができる設計となっているため、外側に大きな窓を設ける必要がなく、外部からの視線が気になりません。2階のリビングは、ダイニングキッチンとの間に中庭を挟んだことで、明るく居心地の良い空間となっています。リビング脇に階段を設けたことで、家族のコミュニケーションが生まれやすい動線を作ることができました。
【19坪】L字型の窓から効率よく採光
建物同士の距離が近く、光が入りにくい土地に建てられたこちらの住宅。いかに効率よく採光できるかが、設計のカギとなりました。2階はLDKがL字型に配置され、バルコニーからリビング側とダイニング側の2方向へ光を届ける間取りになっています。また、天井が吹き抜けになっているため、上方向からも採光でき、明るく居心地の良い空間を実現しています。
まとめ
土地が狭いからと言って、理想の家を建てられないなんてことはありません。コンパクトで快適な暮らしは、広い家では実現できない狭小住宅ならではの強みです。今回ご紹介した内容を参考に、小さいながらも住み心地の良い、自慢のマイホームを作ってみてくださいね。