【実例紹介】スキップフロアでワンランク上の住まいへ! 後悔しないための間取りや注意点、メリットとは?
【実例紹介】スキップフロアでワンランク上の住まいへ! 後悔しないための間取りや注意点、メリットとは?のインデックス
少しでも収納スペースを多くとりたい、単調なフロアにメリハリをつけたい。そんな時の選択肢として「スキップフロアのある家」はいかがでしょうか。スキップフロアは、空間を縦に活用してユニークな間取りを実現する方法です。
開放感あふれるおしゃれな空間づくりにぴったりですが、実際にスキップフロアを取り入れるとどのような空間になるのか、取り入れる際にどのような注意点があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。スキップフロアのメリットや注意点を挙げながら、後悔せずに取り入れるためのポイントをご紹介します。
1.スキップフロアとは?
スキップフロアは、1.5階や2.5階、いわゆる「中二階」「中三階」を設ける間取りです。ひとつのフロア(階層)に複数の高さの床が設けられており、「小上がり」などと呼ばれる場合もあります。高さが変わることで、壁がなくても領域の変化を感じることができるので、狭小住宅で採用されることが多いデザイン手法でもあります。
1-1.スキップフロアの特徴
スキップフロアの特徴としては、同じ空間の中で異なる床の高さが存在するので、視覚的なアクセントを作ることができます。また、同じ空間で天井の高さも変わってくるので、天井の高い部分は吹抜けのような空間にもなり、高低差によって空気や光の循環が生まれます。
また、床のレベルが違うフロアを行き来する階段は、通常より段数が少なく、移動のための空間でありながら、その部分も居住空間として活用することができます。
1-2.スキップフロアとロフトの違いとは?
吹抜けがあるロフトと、空間に段差のあるスキップフロアを比べた時、その2つを混同してしまうかもしれません。けれども、両者には明確に違いがあります。
ロフトは、屋根の直下である小屋裏空間を活用したプラスアルファの空間であるのに対し、スキップフロアは小屋裏空間とは関係なく、通常の居住空間の中で、床の高さに変化を付けるデザイン手法によって生まれた空間です。作り方によっては、スキップフロアにロフトを付け加えるということもできるでしょう。
2.スキップフロアがもたらすメリット
2-1.平屋や二階建てでも、三層以上を確保できる
一般的に、各土地は都市計画法によって用途が定められており、この法律で第一種低層住居専用地域とされる土地では、建物の高さが制限されています。このような制限のある場所で家を建てる場合には、建物全体の高さを法律で決められた範囲内に収めなければなりません。
高さは出せないけど、床面積は増やしたい……。こんな時の方法のひとつがスキップフロアです。最大限に高さを確保してもなお、必要な床面積を確保できないときにスキップフロアがその効果を発揮します。効率よく床面積を増やして収納や書斎スペースとして活用するのもいいですね。
2-2.視覚的に広く見える
同じフロアで視界が平坦に通るよりも数段の差がつくスキップフロアは、視覚的に広く見える効果があります。例えばリビングとダイニング、キッチンのスペースを数段の階段で上下にスライドさせると、視界がずれるために、実質的には同じ階でありながらもまるで別の部屋にいるような気分になれます。
実際の面積よりも広がりを感じるだけでなく、光を通す工夫がしやすいのも大きなメリットです。日のあたらない方角のスペースを下げて太陽光の差す方角を高くすると、まんべんなく光の入る明るい室内を作ることができます。
2-3.段差の下部を収納スペースに
スキップフロアを取り入れると、その下部を収納スペースとして活用できます。段差が大きいスキップフロアの場合は、衣類を収納してウォークインクローゼットのように使えるかもしれません。こちらの事例では仕切りをひいて棚をつくり、細々したものを収納するスペースにするなど、アレンジの仕方は様々。
キッチンの近くであれば、食品やストック用の水など重たい品物を楽に収納できるスペースにしてもいいでしょう。生活動線に併せた計画を立てられれば、より効率的にスペースを活用できます。
2-4.土地に高低差があるときに活躍
高低差のある土地(傾斜地)に家を建てるとき、どうしても1階部分より下になるスペースが発生してしまいます。「スペースを無駄なく使いたいけれど、高さの差が1階層ほどもない……」というときにこそ、スキップフロアを取り入れて、階段数段分をずらした中階層の空間で、デッドスペースを削減できます。
傾斜地は、平な土地よりも比較的、安く購入できる場合も多いですから、スキップフロアを取り入れて空間を上手く活用する前提で、選択肢に入れても良いかもしれませんね。
2-5.狭小地でも無駄がない
壁ではなく高低差で区切られた部屋は、スキップフロアの最大の特徴と言えるのではないでしょうか。高さの変化だけで部屋のようにしているため、空間は緩やかに繋がっているものの各部屋の区切りは明瞭です。そのため、特に狭小地の場合、壁で部屋を区切るとどうしても圧迫感が出てしまいますが、スキップフロアで区切る間取りであれば、視界を遮らず開放的な空間をつくれます。
また、一般的な間取りでは、廊下が空間をつなぐ役割をはたしますが、スキップフロアは緩やかに連続している間取りとなるため、廊下を設けるスペースも節約してほぼ全ての床面積を居住空間として活用できます。少しでも、居住スペースを確保したい狭小地での住まいづくりにこそスキップフロアは効果を発揮するでしょう。
2-6.いつでも家族を身近に感じられる
壁で空間を区切らないスキップフロアのもう1つのメリットは、家族の様子が伺いやすいこと。高低差を工夫して視界に入らないスペースも設ければお互いのプライバシーに配慮しながらも、緩やかなつながりによって家族の気配を感じられる空間となります。小さいお子さんの遊びのためのオープンスペースとして活用すると、いつでも目が届く安心感もあります。
3.スキップフロアを作るときの注意点
スキップフロアは、部屋と部屋を壁で区切らずに高低差で区切るため家の中に多くの階段があるという特性上、気をつけなければならないポイントも当然あります。
3-1.断熱・空調に配慮が必要
前述の通り、スキップフロアのある家は部屋を壁で区切らないため、大きなワンルームのような形になります。そのため、空調周りに悩む方が多いようです。
しっかりとした断熱を施し、熱の出入りを低減した家になるように事前に計画すると良いでしょう。また、暖かい空気が上層に、冷たい空気が下層にたまったままにならないように、エアコンはもちろんシーリングファンやサーキュレータなどの空調設備を適切に準備したり、地域によっては床暖房の導入も検討したりすると安心です。
3-2.建築費用が高くなりがち
階段や床板ひとつひとつに工夫が必要なスキップフロアは、同じサイズの家を建てるのに比較して材料と手間がかかります。壁の少ない大きなワンルームであるとも言えるので、強固な家となるように耐震性を確保する必要があります。建築コストが上がるというのがデメリットのひとつです。
3-3.スキップフロアの設計・施工には経験が必要
複数の性質を持つスペースがひとつの空間を共有するスキップフロアは、光や空気の入り方、音の響き方のコントロール、プライバシーの確保などに、一般的な戸建ての家以上に気を遣わなければなりません。ので、3D画像や模型で示してもらえなければ思ったとおりの家に近づけるのが難しいかもしれません。設計はもちろん、施工に慣れている建築会社を選んでください。
3-4.自治体により判断が分かれる
家を建てる計画を立ち上げたら、設計書などをそろえ「許可してください」と申請をします。自治体が建築基準法に照らし合わせて建築物を審査しますが、スキップフロアについてはその判断が分かれるのが実態です。
高さが1.4メートル以下で、なおかつ設置されている床の面積2分の1未満のスキップフロア(収納スペース分)であれば床面積としてカウントされない場合が多いのですが、床面積として算入するルールを採用している自治体、スキップフロア自体認めない自治体があります。この点でも、スキップフロアの設計・施工になれた建築業者に任せるのが最善と言えるでしょう。
3-5.固定資産税が上がる
段差をつけてスペースを広げたスキップフロアは、通常の1階建て・2階建ての家と比較して床面積が多くなります。このため、床面積=家の資産価値として計算する固定資産税が上がってしまう結果となります。スキップフロアのないごく一般的な家を持つ人が支払う固定資産税の金額は参考程度にし、それを上回る金額となることを知っておいてください。もちろん、この点でもスキップフロアを取り扱いなれている建築士や建築業者のノウハウが必要です。
3-6.掃除が面倒
スキップフロアは空間の区切りを高低差で表現するため、大きなワンルームのような形になるといえども、お掃除ロボットを使う際には限界が出てしまいます。また、階段が多くなると掃除機を持って移動するのにも不便という声もあるようです。例えば、軽量でコードレスの掃除機を選んだり、各エリアにクイックルワイパーを設置したり、少しでも掃除の負担が減らせるような工夫ができると良いでしょう。
4.スキップフロアの活用アイデア4選
スキップフロアを作ることで、どんな空間が実現するのでしょうか。スキップフロアを使った、様々な空間の活用アイデアをご紹介します。これらのアイデアが気に入ったら、是非スキップフロアというデザイン手法を家づくりの候補に入れてくださいね。
4-1.キッズスペース
リビングとダイニングキッチンが、スキップフロアで繋がっています。こうすることで、ダイニングキッチンは食事を作って食べる場所、リビングはくつろぐ場所というように、領域を緩やかに分けることが出来ますね。
また、ダイニングキッチンがスキップフロアの上階に設置されることで、その下部にはキッズスペースを作ることが出来ました。これで、キッチンで大人が作業していても、子供たちがキッズスペースで遊んでいる時に、声が聞こえたり、気配が分かるので、安心ですね。
4-2.ドッグスペース
玄関を入るとすぐにリビングスペースへと繋がる、こちらの事例。玄関ホールや廊下は、それだけスペースを必要としますので、玄関からダイレクトに居住空間へアクセスできるのは、合理的なデザインと言えますね。空間として仕切りたい時のために、間仕切り用のカーテンもあるので安心です。
そして、LDKからスキップフロアで繋がった上部には、小さなタタミコーナーがあり、南側に設置された大開口から陽光が降り注ぐ明るい空間になっています。そのタタミコーナーの高低差を利用した下部空間には、ペットのための部屋が設置されました。また、ペットコーナーの玄関側に窓が設置されているので、家族の出迎えもここからしてくれるそうです。
4-3.ワークスペース
こちらの事例では、玄関扉を開けると、大きな三和土空間に大開口が設置されています。そしてそのまま明るい中庭にアクセスすることができる、開放感あふれる玄関スペースとなっています。
また、その玄関とダイレクトに繋がるLDKも、スキップフロアと吹抜けを活用して、明るい空間に仕上がっています。スキップフロアの上階部分には、ワークスペースが設置されています。リビングに背を向けて壁に向かうことで、オープンな空間でありながら集中しやすいデザインとなっています。
4-4.ライブラリー
スキップフロアに、本や趣味のものを飾る棚があれば、そこは家族のライブラリーのような空間に。こちらの事例では、LDKとつながるスキップフロアは吹き抜けになっており、明るい自然光と高い天井が開放感を与えてくれます。読書に没頭したり、楽器を引いてみたりと、ゆったりとした気持ちで、好きなことを楽しめる空間です。家の中に読書のためのスペースがあれば、そこで育つ子供たちも、自然と読書が好きになっていきそうですね。
4-5.収納スペース
こちらの住まいは、海が見える立地ということで、スキップフロアを採用し、異なる高さから海を楽しむことができるようにデザインされています。ダイニングキッチンと、リビング&タタミコーナーがスキップフロアで緩やかに繋がり、ダイニングキッチンの上部にロフトを設けることで、空間にさらなる動きを付け加えています。そしてスキップフロアの高低差を利用して、収納棚を設置することで、落下防止の安全対策としても機能しています。
5.【実例紹介】スキップフロアの家を手に入れるために最も重要なこと
スキップフロアのある家は、空間にメリハリをつけたユニークなデザインを楽しんだり、スペースを有効に使ったりできる面で優れています。一方で、特徴あるデザインが「暮らしぶり」に直結したり、建築が許可されるかどうかにハードルがあり、そしてその範囲の判断が自治体によって異なっている、“大きなワンルーム”であるため高い耐震強度が求められる……などのいくつかの注意点があります。
スキップフロアは、難しい間取りのため設計者や施工業者にも高い技術が求められるので、これらの点をスムーズにクリアするためにはスキップフロアの施工実績が豊富で、なおかつ耐震性が確実な家づくりをしている会社に依頼するのがオススメです。また、スキップフロアは非常に高度な構造解析(構造計算)をしないとその安全性を検証できません。SE構法ではスキップフロアであっても、その安全性の確認が可能になります。
スキップフロアのメリットとデメリット、その注意点を踏まえつつ信頼のできる施工会社によって叶えられた、個性豊かな実例をぜひご覧ください!
5-1.スキップフロアの寝室
1日の疲れを癒すのに最も重要な空間である寝室。忙しい毎日をパワフルに過ごすためにも、睡眠の質が高まるようなリラックスできる寝室づくりは欠かせません。
広々とした寝室も解放感がありおしゃれですが、睡眠に集中するには狭いところの方が落ち着くという時もありませんか? 広いベッドなのに寝ているうちに、なぜかいつも隅の方にまるまってしまう、なんて方もおられるかもしれませんね。そんなあなたが睡眠「だけ」に集中できるような空間をスキップフロアでつくるのも一案です。
5-2.スキップフロアで緩やかに区切ったダイニングとプレイルーム
ゆっくり食事をとってリラックスするダイニングスペースと子供たちをのびのびと遊ばせてあげられるスペースは分けたいけれど、子供たちを目の届かない場所で遊ばせるのも心配……。
そんな時に、スキップフロアで緩やかに空間を区切るのがオススメです。壁やドアで視界をさえぎらず高低差も緩やかなスキップフロアを取り入れれば、別の部屋のように空間を区切りながらも、それぞれのスペースにいる家族の様子をいつでも気にかけることができます。
5-3.スキップフロアで和洋のコラボレーション
こだわりがたくさんあると、マイホームを和洋どちらのスタイルにするか迷う方も多いのではないでしょうか。おしゃれな空間づくりの極意は統一感ですから、どちらか一方と決めたらもう一方は諦めざるを得ない……という場面もあるでしょう。部屋やフロアごとにスタイルを分けるのも良いのですが、もっと自然な形で複数の要素を取り入れたい、という時にもスキップフロアが活躍します。
こちらの事例のように全体は明るく優しい色合いのフローリングで北欧テイストでまとめながら、スキップフロアの一角だけに畳を取り入れ自然と和洋のテイストを調和させるのも素敵ではありませんか? 畳で日向ぼっこをしてゆっくり過ごしたり、瞑想や読書など何かに集中してリフレッシュしたりするスペースにしてもいいですね。
5-4.窓からの景色を楽しめるスキップフロア
周辺環境が緑豊かなこちらの住まいでは、室内に居ながらにして、いかに自然の眺めを取り込むことができるかが、ポイントとなったそうです。まずは、外の景色が最大限に見える位置にリビングを配置し、リビングから繋がる大きなウッドデッキを設置しました。
これによって、リビングが外まで続いているようにも感じられますし、室内側にも空間の豊かさをプラスしてくれます。リビングからスキップフロアで繋がる空間にも、くつろげるチェアーを設置し、そこに座っても外の緑を眺めることができます。
5-5.家族の気配を感じられるスキップフロア
こちらの事例は、スキップフロアと吹抜けにより、40畳もの大空間をもつLDKの、限りなく開放的で明るい空間となっています。また、壁や階段をコンクリートで作ることで、太陽熱を蓄熱することが可能になり、これだけの大空間でも、省エネになる仕組みをデザインで実現しています。
スキップフロアの上部には、ご主人のワークスペースが設置されていて、家族の気配を感じつつ仕事に集中できる空間となっています。
5-6.スキップフロアから明るい光の入るリビング
リビングのソファに座ると、吹抜けを通して開放感と、天窓から降り注ぐ明るい太陽の光を感じることが出来ます。スキップフロアになっている大きな踊り場は、壁一面に本棚が設置されているので、好きな本を手に取って、このスペースで読書をすることも可能でしょう。
休日に、階段に腰かけて、明るい自然光の元で読書をするなど、贅沢な午後のひとときを過ごせそうですね。この踊り場にいると、リビングやダイニングキッチンで過ごす家族の様子も伝わるので、安心して過ごせるでしょう。
5-7.スキップフロアで水廻りを中二階に
こちらの事例では、LDKとスキップフロアで繋がるのは、水回りです。水回りはプライベートな場所ですので、生活感をうまく隠すという意味では、このぐらいの程よい距離があるのもよいのではないでしょうか。
リビングに来客があったとしても、他の家族が気兼ねなく水回りを行き来できます。そして、床レベルを変えるだけで、省スペースに領域を切り分けることに成功しています。また、スキップフロアの下の部分は、パントリーとして、食品やキッチン用品を収納できるスペースになっているので、キッチンもスッキリと片づけることができますね。
まとめ
注意点にきちんと気をつければ、スキップフロアは個性的な住まいを実現できるとても面白い方法です。狭小地や傾斜地などで家を建てたい方にはスキップフロアはとても良い選択肢であり、家族との時間やつながりを大切にしたい方にもオススメです。せっかくのマイホームですからこだわりを沢山つめこみ、スキップフロアでユニークな家族のお城をつくりませんか?